NHK受信料に猫の病院代まで…「毒家族」の搾取に耐える男性が絶縁を決意した“決定的な事件”
Finasee / 2024年1月5日 11時0分
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<前編のあらすじ>
中部地方在住の片桐蘭子さんは、24歳で結婚して37歳の頃に離婚した。それから2年後に同い年のIT系企業で働く男性と知り合い、交際から3カ月後にプロポーズされた。しかし、彼の母親と姉の激しい反対にあい、ついには入籍を諦めてしまった。
●前編:【「お袋と姉貴を絶対に説得する」不穏なプロポーズを受けた女性が下した“やむを得ない決断”】
毒母と判明入籍をやめると、片桐さんたちに平和が訪れた。
ある日彼が、「うちの母親は毒親だと思う」と言って『毒になる親』『毒になる姑』という本を買ってきた。
読んでみると、彼の母親にあまりに当てはまったため、2人で笑ってしまった。
「“毒”なんだと認識したら、少し気持ちが楽になりました。彼は、仕事も友人関係も理知的で頼もしいのに、母親や姉からのツッコミどころ満載の提案には従ってしまうことに疑問を感じていましたが、さすが長年支配下に置かれているだけあるなと思いました」
その後、毒親について2人で調べたり勉強したりしているうちに、彼は片桐さんを信頼できる同志と認識していったようだ。
入籍を諦めてから約半年後の2015年の春。彼は突然、「入籍しよう」と言い出した。
「入籍しない方が彼の母親や姉と関わらないで済む。その方が幸せ!」と思っていた片桐さんだが、言われた瞬間、涙が止まらなかった。
プロポーズから3年の月日が流れ、2人は42歳になっていた。
絶縁を決意した決定的事件彼は最低限の義理を通すため、母親に入籍することを伝えた。すると母親は姉に泣きついたようだ。
姉は、片桐さんの両親宛てに11メートルを超える“巻物”を送りつけてきた。その“巻物”は、半紙をつなげて毛筆で書かれた“長い長い手紙”だった。
内容は、弟の優秀さをとうとうと語ったあと、片桐さんに離婚歴があることなど、弟にふさわしくない点を、「何月何日、蘭子さんは母にこう言った。私にこういう態度だった」などと詳細に挙げ連ね、最後に、「2人の結婚に反対してる訳ではないが別れるべきです」と書かれており、読むのに小一時間はかかるものだった。
さらに姉は、片桐さんの実家に電話で、 「入籍させないでください。もし入籍したら一生恨みます」と脅迫。
その一連の行為をすべて知っておきながら、彼の母親は、「お姉ちゃんがよくやってくれた!」と褒めたたえた。
自分の母親と姉の異常さを思い知った片桐さんの彼は、姉とは完全に絶縁し、母親とは距離を置くことを決意した。
「毒家族」たちの正体姉とは完全絶縁し、母親とは距離を置くことを決意した夫だが、当初は特に母親と距離を置くことへの罪悪感が拭いきれず、完全に拒絶しきれないままズルズルとお金を無心されていた。
母親に勝手に手配され、実家のNHKの受信料を払わされているほか、「固定電話代も払ってほしい」と言われたが、こちらは回避。だが、母親が飼っている猫の病院代を払えと言ってきたり、親戚の葬儀の香典代を出せと言ってきたり、何かと理由をつけて数万円を無心してきた。
母親だけではない。姉は、1人で育てている息子の大学受験費用の約30万円を、自治体の低所得者向けの無利子ローンで借り入れする際に、連帯保証人になることを母親経由で依頼。断り続けていたところ、姉が息子と一緒に夫の会社に乗り込んで来て、その場で書類へのサインを強要された。
さらに兄は、実家の塀を近所の人に壊されたことで保険屋ともめて裁判になり、夫にも裁判への協力を要請。夫が断ると、兄は弁護士を雇って保険屋を訴え返し、和解金130万円を獲得。母親と兄は、「修理には足りない。裁判に協力しなかったお前が不足分を出すべきだ」と言ってきた。
「毒家族」から逃れるにはそして今年も、母親からは「実家の固定資産税を支払え」と言われ、15年以上前に亡くなった父親の遺産相続にまつわる登記変更では、兄から「権利を放棄しろ。嫌なら俺たちとの絶縁を取り消せ」などと言われ、結局振り回され続けていた。
「義家族たちは家族イチ収入がある独身の夫を老後のあてにしていたのだと思います。それなのに私と結婚してしまったので、何かと理由をつけて引き出せるだけ引き出そうとし始めたのかもしれません。夫自身、家族が自分を金づるとしか見ていないことを実感して、どんどん絶縁度合いが進んでいるように感じます」
最近夫は、引っ越しを真剣に考え始めた。家族に内緒で引っ越し、住民票の閲覧制限をかけることを計画中だ。
また、夫が独身時代に入った生命保険の受取人が母親になっていたが、受取人を妻である片桐さんに変更すると母親がうるさいと思い、入籍から8年の間、ずっと変更できずにいた。しかし先日のこと。夫自ら受取人変更の書類を取り寄せ、受取人を片桐さんに変更したのだ。
理由は、「年末調整の度に受取欄に母の名前を書かなければならないことに耐えられなくなったから」と言った。
自分の親が毒親だと気付くきっかけは、自分の家族を持つ時であることが少なくない。
片桐さんの夫は、片桐さんと出会ったことで“異常”に気付き、「毒家族」から逃れようとあがき始めている。
旦木 瑞穂/ジャーナリスト・グラフィックデザイナー
愛知県出身。アートディレクターなどを経て2015年に独立。グラフィックデザイン、イラスト制作のほか、終活・介護など、家庭問題に関する記事執筆を行う。主な執筆媒体は、プレジデントオンライン『誰も知らない、シングル介護・ダブルケアの世界』『家庭のタブー』、現代ビジネスオンライン『子どもは親の所有物じゃない』、東洋経済オンライン『子育てと介護 ダブルケアの現実』、毎日新聞出版『サンデー毎日「完璧な終活」』、日経ARIA「今から始める『親』のこと」など。著書に『毒母は連鎖する〜子どもを「所有物扱い」する母親たち〜』(光文社)がある。
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