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企業型確定拠出年金の受け取り、「一括」or「分割」税金面でおトクなのは?

Finasee / 2024年1月11日 11時0分

企業型確定拠出年金の受け取り、「一括」or「分割」税金面でおトクなのは?

Finasee(フィナシー)

企業型確定拠出年金は一括で受け取ると「退職金」と見なされる

企業型確定拠出年金に加入している場合、「定年になったら、それで終わり」となんとなく思っている方も少なくありません。しかし、確定拠出年金はiDeCo(個人型確定拠出年金)の存在感が増すことにより、その活用の幅も広がっています。

例えば、60歳定年でその後5年間同じ会社で継続雇用というケースで考えてみましょう。60歳時点で、会社から退職一時金1700万円を受け取り、企業型確定拠出年金の加入資格を失うと同時に老齢給付金300万円を受け取る権利が生じるとしましょう。なお、試算の関係で数字はキリのよい数字を使いますので、これが平均だとは思わないようにしてください。

退職一時金は、文字通り「一時金」なので、そのタイミングで受け取る以外選択肢はありませんが、企業型確定拠出年金は老齢給付金を受け取る場合でも「一括で受け取る」「分割で受け取る」「併用する」の3択があり、またすぐに受け取らずに「運用のみを継続する」という選択肢もあります。さらに継続雇用で厚生年金加入をするのであれば、iDeCoに加入することも考えられます。

今回は条件を少なくするために、同じ会社に継続勤務するケースで計算を進めますが、ここで念のため定年後別の会社に勤務し、そこで改めて企業型確定拠出年金に入るというケースについても簡単に触れておきます。そのような場合、定年時に企業型確定拠出年金の老齢給付金を受け取ってしまうと、その後、企業型確定拠出年金には加入できなくなりますので、定年時の確定拠出年金については現金化し、次の会社の企業型確定拠出年金に移換し加入をする方が、メリットがあると考えます。

話を戻します。まず退職一時金1700万円と企業型確定拠出年金300万円を定年時に一括で受け取る場合の税金から考えていきます。企業型確定拠出年金の資産も一括で受け取る際は「退職金」と見なされます。従って、退職金は合計2000万円です。

さて、退職金にかかる税金ですが、これは給与などと比較すると優遇されるようになっています。特に勤続年数が長ければ長いほど有利になるようになっており、それを退職所得控除と言います。

この控除は、勤続20年までは1年あたり40万円、それを超えると1年あたり70万円で計算されます。例えば勤続35年の退職所得控除は1850万円(20年×40万円+15年×70万円)になります。つまり退職金2000万円のうち1850万円は税金がかからないのです。

ちなみに企業型確定拠出年金の加入期間についても退職所得控除が認められます。加入期間10年であれば400万円が税金のかからない枠として認められるのですが、同じ年にその他の退職金と一緒に受け取ると重複している期間(この場合企業型確定拠出年金加入の10年)は期間の長い勤続年数に吸収されてしまうため、なくなってしまいます。

また差額150万円はすべてに税金がかかるのではなく2分の1されます。つまり課税対象は75万円です。一般的に、課税対象となる金額はその他の所得と合算される「総合課税」となることが多いのですが、退職金は特別なのでその他の所得と切り離される「分離課税」となります。結果、所得税3万7500円、住民税7万5000円、合計11万2500円が支払うべき税金となります。

企業型確定拠出年金を分割で受け取ると「公的年金等控除」の対象に

では、企業型確定拠出年金の300万円を分割で受け取るとどうなるのかを考えてみます。退職一時金1700万円は退職所得控除1850万円内ですから非課税で受け取れます。企業型確定拠出年金の300万円は60万円ずつ5年に分けて受け取ります。

確定拠出年金の資産は分割で受け取ると「公的年金等控除」の対象となります。65歳未満であれば、年間60万円までは非課税の枠内となるため、この場合分割で受け取ると税金の支払いは不要となります。

このように退職一時金と企業型確定拠出年金を全部一時金として受け取るのか、一部分割で受け取るのかによって税金の支払額が異なるということは知っておいて損はないポイントです。

企業型確定拠出年金を受け取った後でもiDeCo加入は可能!

また企業型確定拠出年金の老齢給付金を受け取っても、iDeCoに新規加入が可能です。ご存じの通りiDeCoの掛け金は所得控除になりますから60歳以降も厚生年金に加入して働いている方の場合、節税をしながらもう5年資産形成をすることが可能です。

例えば年収500万円、所得300万円で働いたとしましょう。この場合もっとも税率の高いところが10%なので、月2万3000円の掛け金であれば年間2万7600円の節税効果が見込まれます。住民税も同率ですから合計5万5200円、5年間の継続で27万6000円もの税金を節約することが可能です。1年間の積立額分の税金が戻ると思えば相当大きなメリットです。

さて運用は3%で継続できたとしましょう。すると5年後の残高は約150万円になっています。この残高を一括で受けとる際、ここでの加入期間5年に対し退職所得控除200万円(40万円×5年)が有効となります。また確定拠出年金は75歳まで運用のみ継続が可能なので、そのまましばらく運用することも可能です。その後受け取る場合も、退職所得控除200万円は利用可能です。

***


企業型確定拠出年金は、個人の資産形成の器と考えると非常に有利な制度なのですがどうしても会社の制度ということであまり重要視しない方が多いようです。しかし老後に向けて少しでもゆとりを持ちたいという方であれば、可能な限り有効な手段を活用したいものです。

今回はほんの数例の解説となりましたが、実際に退職間近になったら退職金を含め今後の資産全体を含めたライフプランを専門家に相談するなどしてご自身なりのベストな方法を探してみてください。

山中 伸枝/ファイナンシャルプランナー

FP相談ねっと代表。1993年米国オハイオ州立大学ビジネス学部卒業後、メーカーに勤務。これからはひとりひとりが自らの知識と信念で自分の人生を切り開いていく時代と痛感し、お金のアドバイザーであるファイナンシャルプランナー(FP)として2002年に独立。年金と資産運用、特に確定拠出年金やNISAの講演、ライフプラン相談を多数手掛ける。『50歳を過ぎたらやってはいけないお金の話』(東洋経済新報社)ほか著書多数、金融庁サイト 有識者コラム連載。心とお財布を幸せにする専門家、ファイナンシャルプランナー(CFP®)、株式会社アセット・アドバンテージ代表取締役、一般社団法人公的保険アドバイザー協会理事。

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