「有効なわけない!」不平等な相続で兄弟の仲に亀裂…納得できない弟の“必死の主張”
Finasee / 2024年1月16日 11時0分
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Finasee(フィナシー)
遺言書は手書きで誰でも簡単に作成できる。そう思ってはいないだろうか。確かにその通りではある。だが、手軽に作成できる反面、無効となったり、相続争いを引き起こす原因となったりすることもある。そこで、今回は、自筆証書遺言によって相続トラブルが起こった沢村さん兄弟(仮名)の例を紹介しよう。
不平等な相続内容に弟が激怒「こんな遺言書に書いてあることが有効なわけないだろう!」
リビングに大声が響く。声の主は弟の隼人さん(仮名)だ。それに対して「感情的になるな、遺言書にあるのは紛れもなくおやじの意思だ」と冷静に返すのは兄である有史さん(仮名)だ。
父親である哲夫さん(仮名)の残した遺言書の内容を意訳すると「1500万円の相続財産は有史に8割、残りの2割を隼人に相続させる。有史に万一のことがあれば全額を隼人に相続させる」といった内容だ。そして、今その内容の遺言書の有効性についてある兄弟が対立している。
1つでも違反があると即無効の「自筆証書遺言」話は変わるが、遺言書の代表と言えば自筆証書遺言だ。手書きで簡単に作成できるもので、多くの方が想像するような一般的な手書きの遺言書はまさにこれに当たる。簡単に作成できる分、その有効性は度々問題となる。今回の沢村さん兄弟を騒がせる遺言書も例にもれずこの自筆証書遺言だ。
法律上、自筆証書遺言が有効なものとして判断されるには一定の要件を満たす必要がある。
具体的に例を挙げていくとキリがないが、少なくとも、遺言内容の全文はもちろん、作成日と遺言者の氏名について必ず遺言者が手書きで自書し、さらには印鑑で押印しなければならない。
自筆証書遺言は上記の要件について1つでも違反があると即無効な遺言書となる。手軽に作成や変更ができる反面、厳格な運用が求められるのだ。なお、遺言書にはほかにも公正証書遺言や秘密証書遺言があるが、後者は手間や費用がかかることから実務上これらが利用されることはほとんどない。
手書きではない部分があっても有効?先に説明した通り、自筆証書遺言はすべて手書きが基本だ。たとえ日付や自分の氏名など遺言の内容とは直接関係ないと思えるような部分であっても、手書きでなければ遺言書全体が無効となってしまう。
だが、哲夫さんの作った遺言書は相続対象の財産の一覧が記載された目録、いわゆる財産目録が文書作成ソフトで作成されており手書きではなかった。
それについて隼人さんが吠える。
「手書きの遺言書なのに財産の一覧がパソコンで作ってあるじゃないか! こんな遺言書は無効だ」
しかし、この点について今回の遺言書はクリアしている。今回手書きでない部分はあくまでも財産の一覧を記録した部分、財産目録だ。
実は遺言書本文と異なり、財産目録に関してはパソコンで作成するなど手書き以外での作成が認められている。自筆証書遺言は手書きが基本となっているが、そうでない部分もあることは知っておきたい。
筆者の説明でこのことを理解した隼人さんは、今度は「おやじは認知症なんだぞ? そんな人間の作った遺言書なんて無効に決まっているだろ!!」と新たな主張を始めた。
●複雑なことに、遺言書を残した父親は「認知症」を発症していた。その場合でも遺言書は有効なのか? 後編【兄弟の相続争いに出てきた新たな火種…認知症の父親が書いた遺言書は「有効or無効」?】で詳説します。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。
柘植 輝/行政書士・FP
行政書士とFPをメインに企業の経営改善など幅広く活動を行う。得意分野は相続や契約といった民亊法務関連。20歳で行政書士に合格し、若干30代の若さながら10年以上のキャリアがあり、若い感性と十分な経験からくるアドバイスは多方面から支持を集めている。
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