「退職金が少しでも多くほしい!」“万年平社員”でも自力で金額を増やせる3つの方法
Finasee / 2024年1月24日 11時0分
Finasee(フィナシー)
サラリーマンの退職金は減少傾向と言われています。もちろん、退職金の額は人によって異なりますが、「減っている」と言われると、働くモチベーションが下がってしまう人もいるのではないでしょうか?
退職時にもらえる退職金は、「賃金の後払い」と言われます。この賃金の後払いを少しでも多くもらう方法はあるのでしょうか? 今回は、ただ漫然と定年を待つのではなく、定年までに自分でできる「退職金の増やし方」について考えてみたいと思います。
順調に昇進・昇給すれば退職金も増えるが……会社員の退職金は、勤続年数が長く、昇進や昇給があればあるほど増えていくのが一般的です。
退職金の計算方法には、複数の種類があり、会社によって採用されている制度が異なります。日本では、勤続年数の増加と給料の上昇に連動して退職金が増える「賃金連動制」や「勤続年数比例制」という計算方法が昔から一般的でした。
近年は、勤続年数や職能等級、役職などをポイント化して一定期間ごとに付与し、能力や実績を退職金に反映しやすくする「ポイント制」を採用している会社が増えているそうです。
「ポイント制」は、伝統的な退職金の計算方法より能力主義、成果主義を重視したものとなっています。つまり、今の世の中では、在職中に活躍し、実績を残すことが退職金増額の王道と言えます。
とはいえ、順調に実績を残し、昇進していく人ばかりではないのが現実です。会社の中でなかなかうまく爪痕を残せていない人が、少しでも退職金を多く手にする方法はないものでしょうか?
方法①:退職金の「手取り額」を増やす私は、定年や退職金を扱ったムック本の制作でたびたび社会保険労務士や税理士、FPのみなさんにお会いし、いろいろなお知恵を拝借しています。そして、受け取る退職金を最大化する方法として多くの専門家が提案するのが、退職金をもらうときの「控除」を増やして「手取り額」を増やすというものです。
これはもう、定年までの間に自分の努力では退職金増額は「いかんともしがたい」という人も、やればできる方法と言えるかもしれません。
まず、退職金は一括で受け取ると「退職所得控除」という、大きな税優遇が受けられます。ご存じの方も多いかと思いますが、退職所得控除の金額は、勤続年数により異なります。勤続年数が20年以下の部分は1年につき40万円、20年を超えた部分は1年につき70万円が控除されます。控除が多くなれば、退職金から納める所得税が減り、手取り額が増えるというわけです。
勤続20年と勤続21年では控除に70万円も差が出るわけですが、ここで注目すべきは、勤続年数の数え方です。勤続年数は切り上げ計算であるため、会社に20年勤めた人は勤続20年ですが、20年と1日勤めた人は勤続21年になるのです。
その結果、後者の人は、たった1日多く勤めただけなのに退職所得控除が70万円も増えます。つまり、退職日を1日ずらすことができれば、控除が増えて手取り額を増やせる可能性があるというわけです。
方法②:「企業型DC」で退職金を増やす控除額を増やす方法によって、確かに退職金の手取り額は増えそうですが、それは受け取り時の最終手段でしょう。純粋に「退職金を増やす方法」とは言えないかもしれません。では、一般社員(役職のない、いわゆる平社員)が退職金を増やす方法は存在しないのか、というと、そうでもありません。
会社の退職金制度が、確定拠出年金タイプ(企業型DC)の場合は、一般社員でも退職金が増やせる可能性があります。企業型DCは、会社が掛金を拠出し、従業員自らが金融商品を運用するため、会社での能力や仕事の実績と関係なく、運用次第で受取額が増やせる人もいるのです。
企業年金連合会が2023年3月に公表した「確定拠出年金実態調査結果(概要版)」によれば、企業型DCの平均運用利回りは、2021年度(2021年4月~2022年3月まで)の期間は3.5%、制度導入からの平均運用利回り(年率)は3.8%となっています。
また、運用利回りの分布を見てみると、2021年度の運用利回りが15%超となっている人が1.2%おり、制度導入からの運用利回り(年率)が16%超となっている人が0.6%いて、運用によって退職金を増やせている人もいると分かります。
企業型DCは、平均の想定利回りを1.91%としています。これは、企業型DCの給付額と、制度導入前の会社が給付する退職金と同額になるために達成しなければならない運用利回りです。この利回りを上回れば「自分で運用してよかった! 退職金が増えた!」ということになります。
現在のところ、平均運用利回りで見れば、多くの人が、自分で運用した結果、本来もらえる退職金より金額が増えていると言えるでしょう。しかし、運用利回りが1.91%を下回ってしまうと、自分で退職金を減らしてしまったことになります。
方法③:「マッチング拠出」でお得に退職金を増やす企業型DCは運用次第で、自分の退職金を増やせる可能性がある制度ですが、会社が拠出する掛金は、従業員全員が一律の場合もあれば、貢献度や役職に応じて掛金を引き上げる仕組みを採用している会社もあります。
掛金には上限があり、企業型DCのみを導入している会社は、最高で月額5万5000円(年額66万円)です。とはいえ、毎月5万5000円をフルで拠出してくれる会社はほとんどないでしょう。多くの場合、毎月の掛金は上限に達しておらず、もったいないことに枠が空いている状態です。
そこで、このもったいない枠を従業員が有効活用できるよう、「マッチング拠出」という制度を導入している会社も増えています。
マッチング拠出は、会社が拠出する掛金に、従業員自らが掛金を上乗せ拠出できる制度です。この制度を活用すれば、運用する元金が増やせるため、将来もらえる給付額が多くなることが期待できます。また、自分が拠出する掛金は全額所得控除になるため、所得税と住民税が減り、手取りが増えるという効果もあります。
マッチング拠出では、事業主と従業員の掛金の合計が月額5万5000円まで(確定給付企業年金を併用している場合は月額2万7500円まで)拠出できます。ただし、従業員は、事業主の拠出額を超えて掛金を拠出することはできません。たとえば、拠出上限額が月額5万5000円で、事業主掛金が月額2万円という場合は、3万5000円分の枠が空いていますが、従業員が拠出できる掛金は月額2万円以下ということになります。
従業員がマッチング拠出している金額は?企業年金連合会のホームページに掲載されている「確定拠出年金統計資料(2023年3月末)」によると、企業型DCの掛金は、従業員ひとりあたり平均17万円(年額)となっています。この金額には事業主掛金だけでなくマッチング拠出の掛金も含まれています。
では、従業員自らがマッチング拠出している金額はいくらぐらいなのでしょうか。
前出の「確定拠出年金実態調査結果(概要版)」によると、拠出限度額が5万5000円の会社で月額平均8692円、2万7500円の会社は月額平均6040円という結果でした。
どうでしょうか? 私は「意外と少ないな」と感じました。
マッチング拠出は、企業型DCを実施している企業の55.2%が導入していますが、従業員のマッチング拠出利用率は平均34.3%とのことです。今のところ制度があっても積極的に利用している人は少ない印象です。
企業型DCとの併用に迷ったら……同じ確定拠出年金で個人型は「iDeCo」と呼ばれていますが、マッチング拠出がある会社にお勤めの方は、マッチング拠出とiDeCoの併用はできません。そのため、マッチング拠出ではなくiDeCoを選択しているという人もいるでしょう。
企業型DCで運用できる金融商品は会社が選んだものに限られるため、自由に商品を選んで運用したいという人はiDeCoを選ぶのもいいかもしれません。また、会社の退職金制度が企業型DCのみの人は、iDeCoを月額2万円まで積み立てられます。企業型DCの事業主掛金を超えられないという制約があるマッチング拠出よりiDeCoの方が多く積み立てられる場合もあります。
ただし、iDeCoの場合は、口座管理料が自己負担で企業型DCと別々に運用を管理しなければならず、所得控除を受けるには年末調整も必要です。その点、マッチング拠出は手数料負担がなく、運用の管理や手続きも楽というのがメリットです。会社にマッチング拠出が導入されているならば、まずは、上乗せ拠出で退職金を増やすという方法を検討してみてはいかがでしょうか。
参考
・企業年金連合会「ポイント制」
・国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」
・企業年金連合会「確定拠出年金実態調査」
・一般社団法人投資信託協会「企業型DC(企業型確定拠出年金)ってなあに?-制度の概要-」
・企業年金連合会「企業年金に関する基本統計」
・企業年金連合会「確定拠出年金統計資料(2023年3月末)」
・iDeCo公式サイト「iDeCo(イデコ)の加入資格・掛金・受取方法等」
加茂 直美/フリーライター・行政書士
主に年金、老後資金、行政手続きなどの細かい情報をリサーチし生活に活かすための記事を執筆。行政書士。2級DCプランナー。行政書士事務所オフィスリーガルブレーンを主宰。『役所や会社は教えてくれない! 定年と年金 3つ年金と退職金を最大限に受け取る方法』(大江加代 監修/ART NEXT)『アメリカ人が当たり前に知っているお金のこと全部』(西村隆男 監修/宝島社)『60歳からの得する年金!働きながら「届け出」だけでお金がもらえる本 2023-2024最新版』(小泉正典 監修/講談社MOOK)などの取材、企画、構成、執筆等を担当。
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