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投資「しがらみのないアドバイスをくれるのは誰?」の問いに証券会社勤務セミナー講師が答えたことは…

Finasee / 2024年1月15日 11時0分

投資「しがらみのないアドバイスをくれるのは誰?」の問いに証券会社勤務セミナー講師が答えたことは…

Finasee(フィナシー)

セミナーで講師を務めると、いろいろなご質問を参加者の皆さまからお受けするわけですが、最近、1番印象に残っているのはこれですかね。20代、30代向けのライフプランセミナーでのご質問です。

「NISAやiDeCoを始める際、どこで口座を開設するのがいいのかなど、疑問に対して会社などのしがらみなくフラットな目線で相談に乗ってくれる機関がないでしょうか? 証券会社や銀行に相談したとしても、自社で開設をとなることが考えられるし、FPなどの知識を持った方でも、紹介などの利害関係によってフラットな目線ではないのではないかと考えてしまいます」

「えっ、こんなこと、証券会社に勤めている私に聞くの!?」そんなふうに思いました(笑)。でも、このセミナーがオンラインでの開催だったこと、そして、ウェブ形式でのアンケートの中に、このご質問が書かれていたことを考えれば、講師の私に対してではなく、セミナー事務局のご担当者様への相談だったのでしょう。

とはいえ、事務局のご担当者様もお困りのようでしたので、講師を務めた私なりの回答をお伝えさせていただきました。そこで今回は、私がこのご質問にどのようにお答えしたのかをご紹介したいと思います。ご一読ください。

NISAのことだけじゃない、7本柱の「資産所得倍増プラン」

さて、先ほどのご質問を受けて、まず頭に浮かんだのは、2022年11月、岸田政権が策定した「資産所得倍増プラン」。2024年からスタートした新NISAも、このプランをきっかけに、簡素でわかりやすく、使い勝手のよい制度になりましたね。でも、「資産所得倍増プラン」はNISAのことだけではありません。以下の7本柱を一体として推進する、と打ち出されたのです※1

1.家計金融資産を貯蓄から投資にシフトさせる NISA の抜本的拡充や恒久化

2.加入可能年齢の引上げなど iDeCo 制度の改革

3.消費者に対して中立的で信頼できるアドバイスの提供を促すための仕組みの創設

4.雇用者に対する資産形成の強化

5.安定的な資産形成の重要性を浸透させていくための金融経済教育の充実

6.世界に開かれた国際金融センターの実現

7.顧客本位の業務運営の確保

※1 出所:内閣官房ホームページ(HP)「資産所得倍増プラン」

この7本柱のうちの1つ、3本目の柱に「消費者に対して中立的で信頼できるアドバイスの提供を促すための仕組みの創設」とあります。これがまさにご質問にある「会社などのしがらみなくフラットな目線で相談に乗ってくれる機関」になるのではないでしょうか。

そして、「資産所得倍増プラン」には、「令和6年中に新たに金融経済教育推進機構(仮称)を設置し、アドバイスの円滑な提供に向けた環境整備やアドバイザー養成のための事業として、中立的なアドバイザーの認定や、これらのアドバイザーが継続的に質の高いサービスを提供できるようにするための支援を行う」とあります。ご質問された方にとっては、この金融経済教育推進機構の一日も早い創設が待たれるところですね。

金融経済教育推進機構って、どんなところなの?

ところで、「資産所得倍増プラン」が打ち出されたのは2022年11月。その後、金融経済教育推進機構の創設等を盛り込んだ法案が国会に提出され、2023年11月20日に成立、11月29日に公布されました。そこで、金融庁の説明資料※2を参考にして、金融経済教育推進機構とは、どんな組織で、どんなことをやろうと考えているのか、少し整理してみました。

※2 出所:金融庁提出資料(第36回消費者教育推進会議〈令和5年11月29日〉)

まず、組織の母体になるのは金融広報中央委員会。有名なのは、最低限身に付けるべき金融リテラシーを体系的に整理した「金融リテラシー・マップ」、このとりまとめを行った事務局が金融広報中央委員会ですね。金融経済教育推進機構には、金融広報中央委員会による、これまでの金融経済教育の推進機能が移管・承継される、とのこと。

さらには、民間団体の関連事業も移管されるようですね。この民間団体とは、例えば、全国銀行協会や日本証券業協会、投資信託協会等の業界団体のこと。それぞれの団体で、個々に行っている金融リテラシー向上に向けた取り組みを金融経済教育推進機構に集約、官民一体となってより効率的に金融経済教育を進めていく、そんな気概が感じられる組織体制だと思います。

つぎは、金融経済教育推進機構がやろうとしていること、以下の6つが取り組みとして掲げられています。

1.顧客の立場に立ったアドバイザーの普及・支援

2.金融経済教育活動の重複排除・抜本的拡大

3.金融経済教育の質の向上

4.教材・コンテンツの充実

5.個人の悩みに寄り添ったアドバイスの提供

6.調査・統計を踏まえた戦略的な教育の展開

これらはいわばお題目ですから、ご質問の趣旨である「中立的なアドバイス」という観点から申し上げると、まずは①の顧客の立場に立ったアドバイザーの普及・支援では、金融経済教育支援機構が顧客の立場に立ったアドバイザーの認定を行う、とのこと。さらには、ある雑誌に掲載された設立準備室長の解説※3によれば、認定アドバイザーをリスト化・公表することも視野に入れているようですね。

※3 出所:「来春の設立向け動き出した『金融経済教育推進機構』の全容」(週刊金融経済事情、2023/12/5)

また、②の金融経済教育活動の重複排除・抜本的拡大では、企業の雇用者向けセミナーや学校の授業への講師派遣事業を全国において拡大するとともに、⑤の個人の悩みに寄り添ったアドバイスの提供では、認定アドバイザーによる個別相談も実施する、とのこと。まさに、ご質問者にとっては100点満点の回答が詰まっているのが、金融経済教育推進機構の取り組みじゃないかと、そんなふうに思う次第です。

金融経済教育推進機構の創設を前にして「今、できること」

なお、この金融経済教育推進機構は、新たな認可法人として2024年春に設立され、同年夏の本格稼働が予定されていますので、具体的な相談ができるようになるのは、もう少し先になりそうですね。

では、今はまだ中立的なアドバイスを得ることはできないのでしょうか? 私はそんなことはないと思います。なぜなら、金融経済教育推進機構はあくまでもアドバイスの提供元を整備する話、逆にアドバイスを受ける側でできることもあるからです。

そして、この金融経済教育推進機構の組織母体となる金融広報中央委員会が事務局としてまとめた「金融リテラシー・マップ」が、最低限身に付けるべき金融リテラシーの内容としているのが、「家計管理」「生活設計」「金融知識及び金融経済事情の理解と適切な金融商品の利用選択」および「外部の知見の適切な活用」の4つの分野ですね。特に注目すべきは、4つ目の「外部の知見の適切な活用」、つまり、金融リテラシーには、金融機関のサービスをうまく活用することも含まれているのです。

いや、むしろ、これこそが、金融リテラシーを一言でいえば、「お金の知識と判断力」だと言われる所以(ゆえん)ではないかと思いますし、たとえ、金融経済教育推進機構が創設されたとしても、個々人にとっては乗り越えなければならない、そんな課題になると思うのです。

であれば、中立的なアドバイスを得るために「今、できること」とは、金融経済教育推進機構の創設を待つのではなく、今からご自身の金融リテラシーを高めること、その上でいくつかの金融機関で話を聞き、どの金融機関を利用するのかをご自身で判断すること、そういうことではないでしょうか。

*** 

繰り返しになりますが、私は証券会社に勤めています。ですから、このご質問への回答が中立的なものであるかどうかは読者の判断にお任せしますが、一つでも二つでも、何か参考にしていただける内容があればうれしいですね。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

小出 昌平/大和証券 ライフプランビジネス部 担当部長

1993年4月大和証券入社。投資信託の開発や富裕層ビジネスの企画・運営業務などを経て、2015年より確定拠出年金業務に従事。現在は、iDeCoと呼ばれる個人型確定拠出年金の周知・普及活動に携わりながら、自治体や事業会社の職場における金融・投資教育、ライフプラン教育の支援活動に取り組み中。

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