2024年はどんな年になる? 投資を始めるなら知っておきたい“今年の見通し”―金利、物価、日本の株価 etc.
Finasee / 2024年1月10日 17時0分
Finasee(フィナシー)
このコラムのネタ元は、さまざまな金融機関やリサーチ会社が発行しているレポートです。そして、昨年末から新年明けにかけて出されるレポートのタイトルを並べてみると、やはりというか、当然というか、「2024年はどうなる?」的なものがたくさんあります。株価や為替相場などマーケットの見通しに関するものはもちろんのこと、個人の資産運用に影響するものも含まれています。
そこで今回は、2024年の特に個人のお金に関係しそうなレポートをいくつか抜粋して紹介していきたいと思います。年末年始分ということで、昨年12月28日から1月5日までにリリースされている分から見てみましょう。
金利はどうなるのか?まず、「金利上昇」に関するレポートが結構目立ちます。
一時期、1%近くまで上昇した日本の長期金利は、やや落ち着きを見せており、1月5日時点で0.6%前後の水準ですが、果たして今年はどうなるでしょうか。
HSBCアセットマネジメントが個人投資家向けに出している「金利上昇が2024年の投資戦略に与える影響について」によると、2024年のマーケット環境は先行きが不透明という見方を示しています。ちなみに同レポートは、日本のマーケットを中心にしたものではなく、米国を中心にしたグローバル投資戦略に関するものであることを付け加えておきます。
同レポートによると、「FRBによる利下げは2024年後半に実施される可能性が高く、その度合いは市場の予想よりも大きくなると思われ、新興国市場(株式または現地通貨建債券)は投資対象として重要な位置を占めるはずである」ということです。
FRBが政策金利であるFFレートの誘導目標を引き上げ始めたのが2022年3月のこと。以来、11回にわたって利上げが実施され、米国の株価は低迷し、同時に、米ドル高が進みました。
米国が利上げを行い、米国国債などの利回りが上昇すれば、わざわざリスクを冒して株式や新興国市場に投資しなくても、世界で最も安全と言われる米国国債に投資するだけで、5%近い利回りが得られます。こうして米国国債への資金シフトが進めば、株価は低迷し、同時に米ドルが買われることになります。2年近く続いた米国株価の低迷と米ドル高は、米国の金利上昇による必然だったのです。
その米国が2024年後半から利下げに転じたら、過去2年近く続いた動きが逆回転します。どの程度まで金融緩和が進むのかにもよりますが、米国が金融緩和に転じれば、新興国市場に資金がシフトする可能性が高まってきます。この動きは米ドル売りにつながります。
「日米金利差が縮小に向かう」という見通しもみずほリサーチ&テクノロジーズが出している調査レポート「Mizuho RT EXPRESS」によると、2024年の米ドル/円の見通しは、1米ドル=120円台の円高を予想しています。
ファンダメンタルズ的には、日米金利差が縮小に向かうという見立てです。FRBが緩やかな利下げを行う一方、日銀が金融緩和政策を修正するというのが、その根拠です。
では、日銀は本当に金融緩和政策を修正できるのでしょうか。
この点について同レポートでは、「2024年の春闘における賃金上昇率が、2023年の実績を上回り、日銀はインフレ目標実現のモメンタムがあると判断するだろう。4~6月期にマイナス金利・イールドカーブ・コントロール・マネタリーベース拡大方針のトリプル解除を実施すると予想する。しかし、その後は輸入物価の減速等を背景に賃金・物価の上昇モメンタムが鈍化することで、日銀は追加利上げを実施せず、ゼロ金利政策を継続するとみている。円金利上昇余地は限られよう」と指摘しています。
2024年の春闘で賃金上昇が確実なものになれば、これからも賃金上昇が続き、緩やかな物価上昇につながる可能性があります。そうすれば、これまでゼロ金利状態を作り上げてきた「マイナス金利政策」、「イールドカーブ・コントロール(YCC)」、「マネタリーベース拡大方針」という3つの金融緩和政策が見直され、金利上昇につながる、ということです。
とはいえ、こうした金融政策の正常化によって米ドル高が是正されれば、輸入物価の上昇が一服し、国内の物価上昇ペースが落ち着きます。
加えて、国内の物価上昇ペースが落ち着けば、「物価上昇によって生活が苦しいから賃金を上げてくれ」という理屈が通りにくくなります。結果、物価水準がこの先、どんどん上がっていく可能性が薄れるため、マイナス金利は解除されたとしても、ゼロ金利政策が持続し、円金利の上昇余地が限られると指摘しています。
短期金利が上昇する可能性は低いその他、同レポートでは、「投機筋の円売りポジションが高水準のため、それが解消されれば円高になる」という見通しや、「米大統領選挙のアノマリーで、選挙前は円高が進みやすい」といった点も指摘しています。
ちなみに、農林中金総合研究所の「2024年の国内経済金融の展望」によると、「既に形骸化しているYCCについてはいずれ撤廃される可能性があるが、持続的・安定的に物価2%を達成できるとの判断には至らないと思われ、マイナス金利政策の解除は25年以降に持ち越されるだろう」とのこと。
マイナス金利か、ゼロ金利かの違いはあるものの、当面、短期金利が上昇する可能性は低いと見て良さそうです。
日本の株価は「堅調な推移」が期待される米国の利下げ、米ドル安・円高、そして日本の金融緩和政策の見直しが揃うとしたら、気になる日本の株価はどうなるでしょうか。
日興アセットマネジメントの「フォローアップ・メモ」によると、「2024年ベースの予想PERが14倍強の日本株式は魅力的と考えられます。自社株買いが活発なことや、配当利回りが2.3%程度と、債券利回りと比べてかなり高いことも好材料です。弊社では、日本株式が魅力的なパフォーマンスを示すと予想しています」とポジティブな見通しを公表しています。
また第一生命経済研究所の「経済の舞台裏」によると、日本株については「株式市場との関係が深い電子部品・デバイスの出荷在庫バランスは好転」とし、堅調に推移する可能性が高いことを示唆。米国株式についても、「12月ISM製造業景況指数は47.4へと上昇。14カ月連続で節目の50を下回ったものの、底打ち感が見られている。(中略)ISM製造業が改善すると株価が上昇するというシンプルな関係を踏まえると、向こう数カ月の米国株は生産活動の改善に支えられ、底堅い推移が期待される」と、日米ともに株価が堅調に推移するという見通しを示しました。
見通しはあくまでも見通しですが、ようやく新NISAがスタートした資産形成元年であることを考えると、2024年の株式市場が堅調に推移することを願いたいところです。
参考
・HSBCアセットマネジメント「金利上昇が2024年の投資戦略に与える影響について」
・みずほリサーチ&テクノロジーズ「Mizuho RT EXPRESS 2024年のドル円、120円台への円高を予想」
・農林中金総合研究所「2024年の国内経済金融の展望」
・第一生命経済研究所「経済の舞台裏 日米共に生産活動は株価上昇を示唆 マイナス金利解除は4月に」
・日興アセットマネジメント「フォローアップ・メモ 2023年の株式市場の回顧と2024年の展望」
鈴木 雅光/金融ジャーナリスト
有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。
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