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退職金が高額な業種って? 統計を元にたくさんもらえるコツを解説

Finasee / 2024年1月15日 18時0分

退職金が高額な業種って? 統計を元にたくさんもらえるコツを解説

Finasee(フィナシー)

退職金は一度に大金を手にできるチャンスだ。長い労働の対価であることを鑑み税負担も抑えられている。退職金が生涯で最大の収入となるサラリーマンも少なくない。

定年が迫れば支給額が気になるところだろう。他人と比べたい人もいるかもしれない。

退職金の相場はどれくらいなのだろうか。公的な統計から探ってみたい。

中小企業の退職金の相場

企業のほとんどは中小企業だ。全国に178万社ある会社企業(※)の99%は従業員299人以下の企業が占める。全国の従業員者数は4324万人で、その53%は同じく従業員299人以下の中小企業に雇用されている(2021年6月。出所:総務省統計局 令和3年経済センサス‐活動調査

※会社企業:経営組織が株式会社、有限会社、相互会社、合名会社、合資会社及び合同会社で、本所と支所を含めた全体

中小企業における退職金の相場は「中小企業の賃金・退職金事情」が参考になるだろう。東京都が公表する統計で、都内にある従業員10人~299人の中小企業の退職金を隔年で調査している。

1012社を集計した令和4年版では、定年退職金の相場は大学卒で1092万円となった。従業員規模に比例して高額になる傾向が読み取れる。

【従業員数別、中小企業のモデル退職金(東京都、定年、大学卒)】
・10~49人:979万円
・50~99人:1142万円
・100~299人:1323万円
・(参考)全体:1092万円
※調査時点:2022年7月末(集計企業数:1012社)
※モデル退職金:学校を卒業してすぐ入社し普通の能力と成績で勤務した場合の退職金水準

出所:東京都産業労働局 中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)

業種別では金融業、保険業が最大となった。定年退職金の相場は大学卒で1442万円と全体(1092万円)を350万円上回る。

【業種別、中小企業のモデル退職金(東京都、定年、大学卒)】

出所:東京都産業労働局 中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)より著者作成大企業の退職金の相場

大企業ではどうだろうか。中央労働委員会が集計する「賃金事情等総合調査」を参考にしてみたい。同調査は資本金5億円以上かつ労働者1000人以上の企業を対象に賃金などを集計している(介護事業所は運営主体が社会福祉法人である施設かつ労働者100人以上)。

234社から回答を得た令和3年版では、退職金の相場は大学卒で2564万円となった。調査年度が異なるが、先述の中小企業(同1092万円)を大きく上回っている。やはり企業規模に比例して退職金は高額になるようだ(出所:中央労働委員会 令和3年賃金事情等総合調査

大企業でも金融業の退職金が高い。業種別で銀行・保険が4530万円と最も高額となった(大学卒)。

【業種別、大企業のモデル退職金(定年、大学卒)】

出所:中央労働委員会 賃金事情等総合調査(令和3年)より著者作成

ただし製造業の内訳まで含めると繊維が最も高い。大学卒の退職金の相場は5659万円と金融業(4530万円)をさらに上回る。

【大企業のモデル退職金 製造業の内訳(定年、大学卒)】

出所:中央労働委員会 賃金事情等総合調査(令和3年)より著者作成退職給付制度と勤続年数も相場に影響

企業規模や業種以外に退職金へ影響を与える要素はないだろうか。より広範に調査する「就労条件総合調査」を見ると、退職給付制度と勤続年数が候補に浮かぶ。同調査は常用労働者30人以上を雇用する民営企業6400社を対象に集計している。

退職給付制度別では退職年金を採用する企業で退職金が高くなる傾向が読み取れる。2018年調査と2023年調査の双方で、退職一時金のみの企業より退職年金を導入する企業の方が高額となった。

【退職給付制度別、退職者1人あたり平均退職給付額(定年、大学・大学院卒)】

   2018年調査   2023年調査   退職一時金のみ 1678万円 1623万円  退職年金のみ 1828万円 1801万円  退職一時金+退職年金 2357万円 2261万円 (参考)退職給付制度計  1983万円 1896万円

※勤続20年以上かつ45歳以上の退職者

出所:厚生労働省 就労条件総合調査(令和5年)

ただし退職年金制度は大企業で先行している。退職給付制度ではなく、やはり大きな企業規模が退職金を高めている可能性には注意したい。

より退職金に影響を与えると考えられるのが勤続年数だ。2018年調査と2023年調査のいずれも勤続年数に比例して高額となっている。また勤続が35年に満たない場合、いずれも全体(勤続20年以上かつ45歳以上)の平均を下回った。単純な比例ではなく、一定以上の勤続を優遇して増額している様子がうかがえる。

【勤続年数別、退職者1人あたり平均退職給付額(定年、大学・大学院卒)】

   2018年調査   2023年調査   勤続20年~24年 1267万円 1021万円  勤続25年~29年 1395万円 1559万円  勤続30年~34年 1794万円 1891万円  勤続35年以上 2173万円 2037万円 (参考)退職給付制度計  1983万円 1896万円

※勤続20年以上かつ45歳以上の退職者

出所:厚生労働省 就労条件総合調査(令和5年)

3つの統計から退職金の相場を探った。企業規模が大きいほど、また勤続年数が長いほど高額になるようだ。また業種や退職給付制度の違いも影響を与えると考えられる。比較の参考にしてほしい。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)

若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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