コード決済で覇権 “非” 通信事業で成長する「ソフトバンク」の強さのワケ
Finasee / 2024年1月23日 17時0分
![コード決済で覇権 “非” 通信事業で成長する「ソフトバンク」の強さのワケ](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/finasee/finasee_13081_0-small.jpg)
Finasee(フィナシー)
ソフトバンク株式に資金が集まっています。2020年はソフトバンクグループの売り出しや政府による通信料金引き下げ圧力で苦戦しました。その後は反転し、株価は大きく値上がりしています。業績が良好なこと、株式市場が好調なことなどが背景にあるとみられています。
【ソフトバンクの業績】
売上高 純利益 2022年3月期 5兆6906億円 5171億円 2023年3月期 5兆9120億円 5314億円 2024年3月期(予想) 6兆0000億円 4200億円※2024年3月期(予想)は同第2四半期時点における同社の予想
出所:ソフトバンク 決算短信
【ソフトバンクの株価(月足、2018年12月~2023年12月)】
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ソフトバンクは資本収益性と市場評価性の基準を満たし「JPXプライム150指数」に選ばれています。
ソフトバンクはどのような企業なのでしょうか。主な収益源と急拡大するPayPay(ペイペイ)について押さえましょう。また同社が発行した国内初の新商品、「社債型株式」についても紹介します。
ソフトバンクGの中核企業 安定事業が強みソフトバンクはソフトバンクグループの中核をなす通信会社です。個人向けでは『ソフトバンク』や『ワイモバイル』、『ラインモ』のブランドで携帯通信サービスを提供しています。
携帯電話のシェアは大手2社に劣ります。ただし通信業界は寡占状態にあり競争環境は緩やかです。収益は安定しているでしょう。
【携帯電話契約数(2023年9月)】
・NTTドコモ:8851万件
・KDDI(au):6595万件
・ソフトバンク:5300万件
※KDDIは沖縄セルラーを含む
出所:電気通信事業者協会 事業者別契約数
通信だけでなく、グループ会社を通じ多様なサービスを展開しています。グループにはLINEヤフーやZOZO、PayPayといった有名企業が名を連ねます。主にLINEヤフーを通じたメディア・EC事業は、通信に次ぐ第二の収益源となっています。
【ソフトバンクの主なグループ会社】
・LINEヤフー
・ZOZO
・PayPay
・一休
・アスクル
・出前館
出所:ソフトバンク 有価証券報告書
【セグメント情報(2023年3月期)】
主なサービス セグメント利益 コンシューマ 個人向け通信 4624億円 法人(エンタープライズ) 法人向け通信 1351億円 流通(ディストリビューション) 通信機器およびソフトウェア 243億円 ヤフー・LINE(メディア・EC) メディア・広告、EC 1597億円 金融(ファイナンス) 決済、スマホ証券 -124億円※()は2024年3月期第1四半期以降のセグメント名称
出所:ソフトバンク 有価証券報告書
通信事業という盤石の経営基盤と多様な収益源を持つソフトバンクは、これまで順調に利益を稼いできました。安定した経営はソフトバンクの魅力といえるでしょう。
【純利益の推移(2016年3月期~2023年3月期)】
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ソフトバンクのサービスで急成長しているのがPayPayです。安い導入コストで加盟店を拡大し、積極的なキャンペーンで多くのユーザーを獲得しました。コード決済に占めるシェアは6割を超えています。
【取扱高の比較(2023年4月~6月)】
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PayPayは収益化が進んでいます。投資が先行した拡大期は大きな赤字を計上していました。現在は四半期ベースで黒字化しています。売り上げが拡大したこと、また2021年12月に募集を開始したPayPayカードとのシナジーが発現したことなどが背景にあると考えられます。
【PayPay連結EBITDAの推移(2021年度~2023年度第2四半期)】
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ソフトバンクのファイナンス事業はPayPayの子会社化で誕生したセグメントです(当時は金融事業)。当初は2025年度までの黒字化を目指していました。PayPayの好調が続くなら前倒しで達成できるかもしれません。
【ファイナンス事業のセグメント利益(2022年度~2023年度第2四半期)】
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2023年11月2日、これまでにない新しい金融商品が誕生しました。ソフトバンクが上場させた社債型株式です。社債と株式の両方の特徴を持つことで注目を集めました。価格変動は小さく、おおむね発行価格(4000円)前後で取引されています。
【ソフトバンク社債型株式の株価(日足終値、2023年11月2日~2024年1月12日)】
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社債型株式は普通株式のように資本性を有します。ソフトバンクにとっては財務の悪化を抑えつつ資金を調達できるメリットがあります。
もっとも、資本性は一般に普通株式の方が優れています。しかし社債型株式は議決権がなく普通株式への転換権もありません。議決権が希薄化しないため、普通株式の発行と比べ既存株主への影響を小さくできます。
投資家にとってのメリットは安定的な配当です。社債型株式は普通株式より優先的に配当を受けられます。また普通株式の配当金は変動しますが、社債型株式は原則として当初5年間(2029年3月末までの事業年度)は固定配当です。
【普通株式と社債型株式の違い】
普通株式 社債型株式 調達金の資本・負債の別 資本 資本(※1) 議決権 あり なし 普通株式への転換権 ― なし 配当(利子)の変動・固定の別 変動 当初5年:原則固定当初5年以降:変動
(※2)(※3)
※1.調達額の50%の資本性を取得
※2.2029年3月末までは100円(発行価格4000円×2.5%)、2024年3月末を基準日とする第1回配当金は41.53円(1年を366日とする日割計算)
※3.2029年4月以降は発行価格4000円×(1年物国債金利+3.182%)
出所:ソフトバンク 第1回社債型種類株式優先配当金の配当年率の決定に関するお知らせ、野村證券 国内初の上場社債型種類株式の商品開発および引受けについて
ただし配当利回りは普通株式の方が高くなることが予想されます。好調な業績が続く場合、投資収益は普通株式の方が大きくなりやすいでしょう。
【普通株式と社債型株式の配当利回り(2024年1月12日終値)】
普通株式 社債型株式 株価 1882.5円 4007円 予想年間配当金 86円(※1) 100円(※2) 予想配当利回り 4.57% 2.50%※1.2024年3月末を基準日とする予想配当金
※2.2024年3月末を基準日とする第1回配当金は41.53円(1年を366日とする日割計算)
ソフトバンクへの好調を期待するなら普通株式を、安定的なリターンを重視するなら社債型株式を選んでみてはいかがでしょうか。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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