新NISAは60代からでも遅くない!「資産を守る」ため実践したい投資方法を紹介
Finasee / 2024年1月22日 11時0分
Finasee(フィナシー)
60代からでも遅くない! しかし注意点も
これまでサラリーマン一筋で働き、投資経験が少ない方。定年後の退職金について「急に大きなお金が入ってきたけど、どうすればいいかわからない……」と悩むケースも多いかもしれません。しかし、これまで投資をしてこなかった方こそ、ぜひ新NISAを活用してほしいのです。
とはいえ、60代であればハイリスク・ハイリターン投資はおすすめしません。例えば一般的な30代の方であれば、あと30年ほどキャッシュフロー(お金の出入り)がプラスになります。そのため資産価値が下落しても、収入から補てんすることが可能です。
一方で60代の場合、収入は年金のみという方も多くなります。そんな中で、大暴落が起こると……大幅に下落した資産を回復させることは、非常に難しい。だからこそ、年齢が上がるにつれてローリスク・ローリターンの投資に切り替えていくのがおすすめなのです。
では60代以上でリタイアしており、今後は年金以外の収入が見込みにくい方は、どのような投資をすれば良いか。その答えは、バランス型の投資信託です。株式だけでなく、債券や不動産にも分散した商品。さらに、日本だけでなく海外にも分散が効いていればなお理想的です。
このような商品を買っても、大きく収益を得ることはできません。一方で、バランス型の商品は“どんな局面でも価値が下がりにくい”という特徴があります。そもそもバランス型の投資信託は、資産を増やすためではなく、資産を守るためのものなのです。
60代であれば、なるべく安全な資産に投資する。低リスクの資産から得られる“収益率”はわずかですが……退職金など元手が大きい場合、“収益額”は無視できません。
投資でお金を守りつつ、得られた収益は新NISA制度で収益は非課税に。「1人あたり1800万円の非課税枠」は年齢にかかわらず平等なので、ぜひ有効に使っていきましょう。
取り組むべきは「資産を守る投資」ところで、「配当金を生活費の足しにしたい」と考える方もいらっしゃるかもしれません。配当金は不労所得というイメージが強く、私も配当生活に憧れを持っています。
しかし、高い配当金や分配金が得られる投資先は……個別株やアクティブファンドなど、比較的ハイリスクなものが多い傾向にあります。また、資産を増やす・守るというどちらの目的でも、手数料を安く抑えることは超鉄則。したがって、単純に配当金・分配金の高さだけで投資先を決めることは最善と言えません。
ちなみに私は、「若いうちは投資で失敗してもいい」と考えています。長い人生を考えると、若いころに築ける資産なんてたかがしれています。さらに、若いうちに資産を失っても、今後の収入で取り返すことが可能です。むしろ若いころは投資で失敗し、リスクを肌感覚で身につける方が大事だ、とすら思うのです。
もし投資の失敗経験がないまま、多額の退職金を手にしてしまうと、投資の甘い話を信じて博打のような投資に手を出し、大失敗してしまうかもしれません。リタイア後に大失敗すると、そこからのリカバリーはかなり困難です。失敗を次に活かそうにも、元手となる資金を働いて得ることが難しいためです。
加えて、すでにリタイアされている方は「車や家を買うために、お金がかかる」「子どもの教育資金、どうしよう」といった心配、つまり“人生の一大イベントに向けてお金を増やす”必要がありません。
つまり、リタイアした方はそもそも高いリスクを取る必要がないのです。これは現役世代(将来の不確定要素が大きく、今後必要な費用が予測しづらい)にはない、大きな強みと言えます。リタイア後はリスクを取れないし、取る必要もない。だからこそ、「資産を守る投資」が重要になってくるのです。
「資産を守る投資」を実践する具体的な方法では、資産を守るためにはどのような投資をすれば良いか。その答えの1つが、「バランス型の投資」です。
ここで、話は変わりますが……世界規模で見たとき、これからも経済成長が進むことが期待されます。そのため、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」などへの投資が人気で、商品としてもかなり魅力的です。しかしこのような株式型の商品は、どうしてもリスクが高くなってしまいます。
一方で「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」等のバランス型商品であれば、リスクを下げることができます。この商品を買うことで、国内外の株や債券・不動産といった8つの資産に分散投資されます。多種多様な資産に分散している割に、信託報酬が年0.143%と安い点もおすすめできるポイントです。
こちらの商品ですが、2023年12月29日時点の成績をもう少し分析してみます。
・リターン(過去5年間):8.60%/年
・リスク(過去5年間):13.50%/年
ここから言えることは、以下の2点。
・この商品を100万円買うと、毎年8万円ぐらいの収益が得られる
・この商品を100万円買うと、1年後の価値は113万円ぐらいになるかもしれない(+13万円)。逆に、87万円ぐらいになるかもしれない(-13万円)
特に、リスクの考え方が重要。リスクとは、すごく簡単に言うと“振れ幅”のことです。リスクが高い商品は、危ない……という認識も間違いではありませんが、本質はそうではありません。もう少し本質に目を向けると、「リスクが高い商品は、上振れも下振れも大きい」ということなのです。
ですが、「なにがなんでも、ハイリスク商品はダメ!」という認識だと、投資の幅は狭くなってしまいます。リスクの本質を理解したうえで、「極度にハイリスクな商品は不確実性が高く、元本の振れ幅が大きいから“危ない”」という認識まで持つことができれば100点です。
状況にあわせて現金比率も考えるバランス型の投資と言っても、リスクが完全に排除されるわけではありません。そのため、例えば「バランス型投資信託:現金=70%:30%」と、資産をある程度現金で持つとより安全です。この比率の適正範囲は、許容できるリスクにより異なります。年金などの収入が多いほど、現金比率は低くてOK(リスクを取ることができる)。逆に収入が少ない場合は、資産を守るために現金を多く持つ必要があります。
NISA制度には非課税投資枠があり、手元にお金がある人ほど「枠を埋めきらないと損!」と考えるかもしれませんが、重要なのは枠の消化ではなく、自分の許容リスク(損失が出ても耐えられる範囲)内で投資するという考え方です。
さらに、新NISAのつみたて投資枠・成長投資枠のどちらを使うかよりも“どの割合で、どの商品に投資するか”に目を向ける。そして実際に投資する際に、使える枠を使う……という意識でOKです。
他人の話をうのみにせず自分でも知識をつけるそして、商品を選ぶうえで気をつけたいことがもう1点。これまで仕事一筋で、退職金がたくさんあるけど投資は右も左もわからない……そんな状態で証券会社に相談に行くと、営業マンに勧められるがままに手数料の高い商品を買ってしまうかもしれません。
このように、退職金を使った投資で気をつけてほしいのは「知識をつけず証券会社に行き、そこでおすすめされた商品を勧められるがままに買わない」ことなのです。
投資経験がなく、退職金でたっぷりお金を持っている人に対して証券会社は優しく、親身に相談に乗ってくれるはずです。しかし投資の知識がゼロの状態だと、勧められた商品の良しあしを判断することもできません。
そのため、おすすめをうのみにしてそのまま買うのではなく、自分でも最低限の勉強をして良しあしを判断できる状態になることが重要です。土台となる知識をしっかりつけたうえで投資先を探すことがベストです。
参考
・eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)
浅見 陽輔/銀行員・証券アナリスト
大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科を卒業後、2013年に銀行に就職。10年のキャリアで、投資運用、リスク管理、法人・個人向け融資、システム部門を経験。証券アナリスト、FP2級、簿記2級、税務上級など20種類の金融系資格を保有。趣味は優待株投資と筋トレ。本業の傍ら、Kindle(電子書籍)作家としても活動中。代表作に『図解 新NISA』『トクする株主優待の選び方』『最後のジュニアNISA』『絶対に続く筋トレ』などがある。Twitterアカウントは【@you_def】。
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