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苦戦が続くリクシル きっかけとなった海外M&Aを振り返る

Finasee / 2024年1月24日 18時0分

苦戦が続くリクシル きっかけとなった海外M&Aを振り返る

Finasee(フィナシー)

リクシルグループはシステムキッチンやサッシといった住宅設備の大手です。2000年代後半から積極的な海外M&Aを仕掛け規模を拡大しました。

しかし近年は芳しくありません。取得した海外子会社で苦戦が相次ぎ、売り上げは2015年度で頭打ちとなっています。

【リクシルグループの売上高(2008年度~2022年度)】

出所:リクシルグループ 統合報告書より著者作成

海外事業に陰りが見え始めたきっかけがドイツのグローエ買収です。同時に取得した子会社が連結の翌月に破綻し、リクシルは最終赤字に転落しました。

リクシルがグローエを買収した経緯を振り返りましょう。

政府銀とグローエを共同買収 念願のグローバルリーダーに

リクシルがグローエを買収したのは2014年のことです。日本政策投資銀行と共同で株式の87.5%を4109億円で取得しました。残る12.5%も309億円で追加取得します(2016年9月に日本政策投資銀行の保有分を取得し完全子会社化)。

グローエは欧州を中心に水栓金具で大きなシェアを持つ企業です。当時のリクシルは「住生活産業におけるグローバルリーダーとなる」という目標をかかげ、海外企業を相次いで買収していました。中でもグローエはリクシルにとって過去最大規模の買収で、大きな注目を集めます。

【リクシルグループの主な海外M&A】
・2009年:米アメリカン・スタンダード(アジア・太平洋部門)
・2011年:伊ペルマスティリーザ
・2013年:米アメリカン・スタンダード
・2014年:独グローエ

出所:リクシルグループ 統合報告書

積極的なM&Aでリクシルの海外売上高は大きく増加しました。足元では5268億円を海外で売り上げています。263億円だった2009年度からおよそ20倍に拡大した計算です(出所:リクシルグループ 個人投資家説明会資料(2015年12月)。狙い通り、リクシルは業界でトップクラスのシェアを持つ企業となりました。

【リクシルグループの地域別売り上げ(2023年3月期)】

  売上高 構成比  日本  9692億円  64.8%  アジア 1760億円 11.8%  欧州 1524億円 10.2%  北米 1829億円 12.2%  その他  155億円 1.0%

出所:リクシルグループ セグメント別・地域別売上

取得した海外子会社が火種に 連結の翌月に破産

グローエはジョウユウという子会社を持っていました。主に中国で水栓金具を販売していた企業で、当時はドイツの証券取引所に上場していました。リクシルはグローエ買収に合わせジョウユウも取得します。このジョウユウがリクシルの目算を大きく狂わせることになりました。

ジョウユウは2015年4月にリクシルの子会社となります。しかしそのわずか1か月後、ジョウユウはドイツの裁判所に破産を申し立てました。不正会計が明らかになり、債務超過であることが発覚したためです。

親会社のグローエはジョウユウの実態を把握しておらず、リクシルも買収時に気付けませんでした。リクシルが調査したところ、ジョウユウの不正会計は2008年にさかのぼることが判明します(出所:リクシルグループ Joyou問題に関する調査結果について

ジョウユウは破産前に多額の融資を受けていました。これらの債務保証もあり、リクシルは大きな損失を負うことになります。リクシルは2013年度と2014年度の決算を下方修正し、2015年度には300億円を超える特別損失を計上しました。2015年度は最終赤字に転落しています。

【リクシルグループの純利益(2010年度~2015年度)】

出所:リクシルグループ 統合報告書より著者作成鬼門だった海外 イタリア子会社の不振で再び最終赤字

リクシルの受難は続きます。2011年に取得したイタリアのペルマスティリーザ社が振るわず、2017年に中国企業への売却を決定しました。しかし外国資本によるアメリカへの投資を規制する対米外国投資委員会(CIFIUS)が承認せず、売却は頓挫します。ペルマスティリーザは売り上げの多くをアメリカが占めていました。

リクシルはペルマスティリーザを非継続事業として連結に反映していませんでした。しかし売却が困難となったことから再び損益の認識を迫られます。2018年度に521億円の純損失となり、3期ぶりの最終赤字に陥りました。

ペルマスティリーザは2020年にアメリカの投資会社へ売却されます。不振事業の整理で利益は回復に向かいました。しかし2022年度は重点地域のアメリカで金利上昇に伴う需要の減退が見られたほか、同じく注力する中国市場では市況が低迷し、再び大幅な減益となります。

【リクシルグループの純利益(2015年度~2022年度)】

出所:リクシルグループ 統合報告書より著者作成

海外の苦戦は株価にも反映されているようです。リクシル株式はペルマスティリーザ売却の見通しが立った2020年から2021年にかけて上昇トレンドに入りました。しかし米金利が上昇を開始した2022年以降は顕著に下落しています。

【リクシルグループの株価(月足、2018年12月~2023年12月)】

出所:Investing.comより著者作成

住生活産業のグローバルリーダーを目指して強化した海外事業は、利益面ではまだ課題が残ります。とはいえ国内の住宅市場は縮小傾向にあり、少子高齢化から拡大にも期待しづらい状況です。苦戦が続きますが、成長のためには海外に注力せざるを得ないのかもしれません。

【国内の新設住宅着工件数(2016年度~2022年度)】

出所:国土交通省 建築着工統計調査報告より著者作成

リクシルの海外事業は実を結ぶのでしょうか。投資家の注目が集まります。

文/若山卓也(わかやまFPサービス) 

若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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