25年の絆が“100万円”で崩壊…弟にお金を返さない兄が発した「信じられない言葉」
Finasee / 2024年2月2日 11時0分
Finasee(フィナシー)
<前編のあらすじ>
当時20代の荒木兄弟。兄の優さんは会社の業績不振により収入が減ってしまい、やむを得ず弟の健斗さんへ相談する。健斗さんは落ち込む兄の姿を見て、「契約書なんていらない」と100万円を貸すことにした。しかし、この健斗さんの善意でした選択が後に大きなトラブルの原因となってしまう。
●前編:【「無理しないでいいから」収入減の兄を案じて100万円を貸した弟が犯した「最大の過ち」】
一向にお金が返ってこず、しびれを切らす弟その後、お金を貸してから3年程が経過した。だが、お金は一向に返ってこない。健斗さんはその間もモヤモヤしていたようで、とうとうしびれを切らして優さんに返済を催促した。
「あの時貸した100万円いつ返してくれる?」
その健斗さんの発言に対してムッとしたのか優さんはこう返す。
「余裕がある時でいいって言ったよな?」
たしかに、健斗さんからは余裕がある時でいいといった旨の発言もあった。ただ、健斗さんとしては「毎月3万の返済を前提に、無理な月があれば相談のうえで減額や返済について休止を挟むことも考えていきたい」といった優さんを気遣っての発言だった。
健斗さんもカッとなり怒りをあらわにする。
「何その言い方。今すぐ全額返してくれよ!」
健斗さんの怒りはまだ収まらない。
「もう3年もたってるんだぞ! いい加減にしてくれ!」
優さんもそれに対して一歩も引いたりしない。「今すぐなんて無理だ! まだ生活は落ち着いていない!」と反論した。そこからはもう泥沼で兄弟の醜い言い合いが続いたと聞いている。
そして、兄弟のすれ違いはここで決定的なものとなった。「余裕がある時でいい」という言葉を都合の良いように解釈し、子どもが自立をするまでは返済をする気のなかった兄。生活が厳しいことを承知で少しずつでも定期的な返済を望んでいた弟。25年以上続いた兄弟の絆は“たった100万円”のお金で崩壊した。
荒木兄弟の近況は……荒木兄弟はすれ違いのあった当初こそ熱くなったものの、すぐにお互い冷静になったようで、現在では優さんが借りた100万円は全額の返済がなされている。
ただ、兄弟の絆は元通りにとはいっていない。今もぎくしゃくした関係が続いている。以前は時折あった私も含めた3人で会うということもなくなった。兄弟の交流も全くないようで、連絡を取り合ったり遊びに行ったりすることもないと聞いている。実家に帰省するタイミングもお互いにずらすほどだ。
私が個別に連絡を取り、双方から話を聞いて和解をさせようと試みるも「もう今更だ。やめてくれないか」と両者に拒否されてしまう。お互いに関係を以前のような近しいものとする気がないようだ。
似た者同士で本当に仲の良かった兄弟が傷つけあってしまったからこそ、その傷が癒えることのない、修復不可能なものにまで発展してしまったのだろう。
兄弟間でもお金の貸し借りに契約書は必須荒木兄弟の例から学ぶこととしては、やはり兄弟間でも契約書の作成は必須であろうということだ。どれだけ長年時間を共にして育ち、尊敬しあっていた兄弟でも常に言葉の解釈が一致するとは限らない。完璧に意思疎通ができるわけではないと肝に銘じるべきである。
優さんが健斗さんの言葉を誤って解釈せず、基本的に必ず毎月返済していくものという意識でいられたらこんなことにはならなかった。健斗さんも、返済は毎月必ずしてほしいがどうしてもという時はきちんと相談してほしいと明確に伝えていれば良かったのだ。
だが、口頭であったがゆえに兄弟は言葉足らずの口約束でお金の貸し借りをすることになってしまった。もし、この100万円の貸し借りについて契約書を作成していればこんなすれ違いはなかったはずだ。
なぜなら契約書には毎月の返済額や期日をはじめとした返済条件を記載するのが一般的だからだ。そこに「都度協議によりお互いの合意の下で返済の期日や額等の条件全般について変更することができる」と言ったような一文でもあれば、今回のような争いは起こらず、兄弟で話し合いをして臨機応変な対応ができていたはずだ。
もし、荒木兄弟が契約書をきちんと作っていれば、今も変わらずずっと仲のいい兄弟でいられていただろう。1万円や2万円といったように、一杯おごるような感覚で渡せる額ならば別かもしれない。だが、10万円、50万円、100万円と額が大きくなればなるほど仲のいい兄弟同士であっても問題が起こりやすくなる。
たとえ兄弟間であっても、お金の貸し借りをする場合はきちんと契約書を作成するべきである。むしろ「伝わるだろう、自分と同じ感覚だろう。分かってくれるだろう」と思うくらい、仲のいい家族だからこそ、しっかりと契約書を作成すべきなのだ。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。
柘植 輝/行政書士・FP
行政書士とFPをメインに企業の経営改善など幅広く活動を行う。得意分野は相続や契約といった民亊法務関連。20歳で行政書士に合格し、若干30代の若さながら10年以上のキャリアがあり、若い感性と十分な経験からくるアドバイスは多方面から支持を集めている。
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