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「いい加減にして!」息子のノートを破り捨てるモラ夫に我慢の限界 妻が突きつけた“面白くない”現実

Finasee / 2024年1月31日 18時0分

「いい加減にして!」息子のノートを破り捨てるモラ夫に我慢の限界 妻が突きつけた“面白くない”現実

Finasee(フィナシー)

<前編のあらすじ>

麻紀(42歳)は中学受験に失敗した息子の昭人(13歳)を責めるモラハラ気質の夫の憲史(45歳)に違和感を感じながらも昭人をかばいきれずにいた。ある夜、テスト勉強をしている昭人の部屋で精巧に漫画が描かれているノートを見つけた。「昭人、絶対に才能あるから。だからこれは続けなさい。お父さんにも絶対に言わないから」と、夫に内緒で昭人の夢を応援する麻紀だったが……。

●前編:中学受験失敗を怒る学歴コンプのモラ夫から息子を守る方法 妻が見つけた息子の「秘密」とは?

恐れていたこと

それから1カ月の時がたつ。

その日、麻紀は実家に帰省をしていた。

親戚の集まりに参加をしていたのだ。泊まることも考えたが、そうなると家には昭人と憲史だけになってしまうため、その日のうちに帰ることにした。

家の玄関を開けると、異様な雰囲気に麻紀は気付いた。いつもはきれいに並べていたスリッパが散乱していて、置物が倒れていたのだ。

麻紀が恐る恐るリビングに向かうと、ソファに座る憲史の姿があった。そしてテーブルの上に無残な姿で置かれているものに麻紀は驚愕(きょうがく)した。

「え……! 」

「お前、知ってたのか? 」

憲史の声は低く、とても怒っていることが伝わってくる。

しかしそれよりも麻紀は目の前の光景が信じられなかった。

テーブルの上にあったのはビリビリに破かれたノート。それは昭人が一生懸命書いていた漫画ノートだ。

そしてタブレット端末は画面が割られて、折れ曲がっていた。

「お前はアイツが漫画なんて書いてるのを知ってたのか!?」

麻紀は自分がいない間に何が行われたのか瞬時に理解した。

「おい、答えろよ! 」

詰め寄ってくる憲史を麻紀はにらみ付ける。悪魔のような憲史の所業が許せなかった。

だけどそれ以上に、大切なノートを破られた昭人の気持ちを思うと麻紀は身が引き裂かれるようだった。こうして力を込めてにらんでいなければ、きっと泣き崩れてしまう。

昭人のために、ここで自分が折れるわけにはいかない。麻紀は息を深く吸った。

「知ってたわよ! だから何!? 」

麻紀が声を荒げたことが予想外だったのか、目を丸くした憲史がほんの一瞬、言葉を言いよどむ。麻紀はこみ上げる感情の激流にあらがうことなく、鋭くとがらせた言葉を継いだ。

「あなたこそ、何をしたの!? あの子が一生懸命書いたものを破ったの!? よくそんなことできるわね!」

「いや、俺は、アイツに、勉強をさせるために…! 」

「それで何!? あの子は必死に勉強をして中間テストだって良い成績を残したし、ちゃんとやってるわよ! 漫画だってその合間の時間でやっているだけ! それなのにまだあの子から楽しみを奪うって言うの!? それが親のやることなの!? 」

麻紀は一気に憲史に向かってまくし立てる。その形相に憲史は驚いて言葉が出ないようだった。

「いい加減にしてよ! これ以上あなたの学歴コンプを昭人に押しつけないで! あの子がそんなことを望んでいると思ってるの!? 」

麻紀はそう言い残して、ノートとタブレットを持ち、昭人の部屋に向かった。

顔を上げた昭人の目は泣きはらしていた。その顔を見て、麻紀は自分がもっと早く憲史と話し合っておけば良かったと後悔した。

そして麻紀はタブレットとノートを机に置き、昭人を抱きしめた。

「これからはもう好きなだけ漫画を書いていいからね。新しいタブレットも私が買ってあげるから」

麻紀がそう言うと、昭人は小さくうなずいた。

飛び立った才能

それから昭人は漫画に今までよりも時間を割くようになった。

しかし勉強の時間もしっかりと確保し、成績自体が下がるようなこともない。これはきっと憲史のプライドを守るためにやっていることなのだろうなと麻紀は思っていた。

とはいえ、憲史は現状を面白く思ってないようだ。実際に何度か勉強をさせるように言われたことがあったのだ。

そんなあるとき、麻紀はリビングで一枚の紙を見せた。

それは漫画誌の切り抜き。

「……何だよ? 」

「この佳作の漫画、昭人が描いたんだよ」

麻紀がそう言うと、憲史は言葉を失っていた。

「あの子は才能があるの。中学生でこんな賞をとるなんてなかなかないことなんだって」

憲史はその切り抜きを食い入るように見つめていた。

「今度ね、東京にあるその出版社で受賞パーティーがあるから、そこに昭人と一緒に行ってきます。あなたはどうする?」

麻紀の質問に憲史は黙って首を横に振る。

「そう。あの子ねこれから編集者の人がついて、サポートをしてくれるって言ってるわ。私も昭人を応援するつもりだから」

麻紀ははっきりと自分の気持ちを憲史に伝える。

憲史は肩を振るわせながら、切り抜きを握りつぶしていた。単なる怒りではなく、そこには悔しさや後悔のようなものが見えた。

そんな憲史を残して麻紀はリビングを出る。

そしてこれ以降、憲史が昭人に対して勉強のことを言うことはなくなった。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

梅田 衛基/ライター/編集者

株式会社STSデジタル所属の編集者・ライター。マネー、グルメ、ファッション、ライフスタイルなど、ジャンルを問わない取材記事の執筆、小説編集などに従事している。

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