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2023年はラーメン店の倒産・休廃業が過去最多…原価上昇だけではない「苦しい事情」

Finasee / 2024年2月5日 17時0分

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Finasee(フィナシー)

東京商工リサーチの「TSRデータインサイト」によると、2023年を通じて「ラーメン店」の倒産、ならびに休廃業が過去最多になったとのことです。

2023年1~12月を通じて、負債総額1000万円以上を抱えて倒産したラーメン店の件数は45件となり、2022年比で2.1倍。2009年以降では2013年の42件を超えて過去最多になりました。また休廃業に追い込まれたラーメン店の件数は29件で、これも2009年以降で過去最多です。

ラーメン店の倒産件数を規模別に見ると

レポートを読むと、今のラーメン店の置かれた状況は、日本の中小・零細企業の縮図と考えて良さそうです。

まず、ここに来て倒産件数が増えている理由を、同レポートでは「コロナ禍でゼロゼロ融資に加え、時短営業や休業に対する補償など、手厚い支援を受けてきた。だが、コロナ禍が落ち着き、経済活動が活発になってもコロナ禍前の客足が戻らず、さらに、食材や水道・光熱費の高騰、人手不足、人件費上昇などのコストアップが資金繰りを圧迫している。ラーメン価格の設定の基準が不透明で、値上げが客離れを促す恐れもあり、小・零細規模のラーメン店は苦戦が続いている」としています。

倒産したラーメン店を資本金などの規模別に見ると、前年比で最も倒産件数が増えたのは個人企業の18件で、前年の4件を大きく上回りました。個人企業とは、言うなれば個人で経営しているラーメン店のことで、チェーンやグループには一切入っていない、老夫婦で経営している町中華をイメージしていただければ良いかと思います。

次に多かったのが資本金100万円以上500万円未満の小規模経営のラーメン店で、その倒産件数が個人企業と同じ18件で、前年の7件を大きく上回りました。

逆に、資本金5000万円以上1億円未満、ならびに1億円以上のラーメン店で、2023年中に倒産したのは0件でした。ラーメン店で資本金1億円以上になると、複数店舗を運営しているようなところだと思われますが、個人企業との違いは、やはりスケールメリットと知名度でしょう。

スケールメリットがあれば仕入れコストを下げられますし、知名度があれば採用面、宣伝効果などで有利に働きます。逆に、スケールメリットを享受できない小・零細規模のラーメン店にとっては、今の経済環境がすべて逆風となって襲い掛かったのです。

“参入障壁が低い”と言われるラーメン店が抱える問題

今の経済環境が、どのような形で小・零細規模のラーメン店にとって逆風になったのかについて説明してみましょう。

そもそもラーメン店は、参入障壁が極めて低い産業の1つです。これはラーメン店に限らず、外食産業全般に当てはまることですが、一度、大ヒット業態が出現すると、相次いでその競合が参入してきます。ちょっと前だと、立ち食いステーキ店が乱立した結果、その元祖とも言うべき「いきなり!ステーキ」は、大幅な店舗数削減に追い込まれました。

参入障壁は「差別化」と言い換えても良いかと思いますが、製品やサービス面で差別化できない業態は、最終的には価格でしか差別化ができなくなり、価格競争の挙げ句、共倒れになる恐れがあります。

これは、どのビジネスでも同じです。同レポートでも「値上げが客離れを促す恐れもあり」と指摘しているように、同じ味、内容、クオリティーのラーメンを1杯600円で出していたのが、700円に値上げされたら、お客は値段の安いところに流れます。参入障壁が低いということは、価格支配力を握れないことと同義なのです。

インフレによるコストアップが経営を圧迫

さらに、そもそも参入障壁が低く、かつ価格競争に陥りがちな業態であるところに、ここ2年くらいはコストアップ要因がラーメン店の経営を圧迫してきました。

最大の理由はインフレです。消費者物価指数の総合は、2022年4月前後から上昇するようになり、同年12月には前年同月比で4.0%にもなりました。直近、2023年12月は前年同月比2.6%まで落ち着いていますが、大半のラーメン店が顧客に供しているラーメンの価格は、この物価上昇率に追いついていないはずです。追いついていない分は、すべてラーメン店が自らの利益を削っていることになります。

政府・日銀のインフレ目標値である年率2%が今後も続くと仮定してみましょう。年2%ずつラーメン価格が値上がりしたとすると、現在600円の価格は5年後、あるいは10年後にはいくらになるでしょうか。1年複利で計算していくと、5年後には662円、10年後には731円です。

しかも、ラーメンを作り、店舗を運営していくために必要なコストである原材料費や水道・光熱費は、常に安定的に年2%ずつ上昇するものではありません。2022年2月に起こったウクライナ紛争のような地政学リスクが高まれば、資源・エネルギーや食糧の多くを輸入に依存している日本では、あらゆる面でコストアップにつながります。

そのうえ円安が進めば、円建ての輸入品価格上昇には、さらに拍車がかかります。前述したように、消費者物価指数の総合は、前年同月比で4.0%も上昇したことさえあったのです。

コストアップ以外にもあるラーメン店への逆風

また、参入障壁の低さとインフレによるコストアップに加えて、今後は人件費の高騰も経営の圧迫要因になります。人の手を介さないと商品やサービスを提供できない外食産業にとって、働き手が不足するのは死活問題です。

最近は、一部のファミリーレストランがロボットによる配膳システムを導入していますが、個人経営のラーメン店が同じものを導入するのは不可能ですし、人を雇おうとしても収益面で厳しい以上、高給を提示することもできません。

個人経営のラーメン店が倒産、および休廃業に追い込まれるのも当然と言えるでしょう。そのくらい今の経済情勢は、小・零細規模のラーメン店にとっては逆風なのです。

これからやってくる“大盤振る舞い”のツケ

それでも2021年、2022年のラーメン店の倒産、ならびに休廃業の件数が減少したのは、この時期、ラーメン店を取り巻く経済環境が良好だったからではありません。新型コロナウイルスの感染拡大で売り上げが落ち込んだ事業者に対して、実質無利子・無担保で実行された「ゼロゼロ融資」や、各種補償によって一息つけたからです。

しかし、これは恐らく今後に禍根を残すことになるでしょう。中小企業がゾンビ化したと言われているように、本来なら淘汰(とうた)されてしかるべき中小企業までもが、この手の資金によって生き延びられてしまったからです。

そもそも淘汰されるべき企業の売り上げは、たとえコロナ禍が一段落したからといっても、コロナ前の水準には戻らないでしょう。そして、ゼロゼロ融資を受けた企業の中には、返済できないところも出てきます。会計検査院の調べによると、ゼロゼロ融資全体の6%に相当する約8700億円が不良債権化し、回収不能額が697億円にも達したと報じられています。

この不良債権を最終的に負担するのは、私たち納税者です。ラーメン店に限った話ではありませんが、コロナ禍で実行されたさまざまな大盤振る舞いのツケが、これから本格的に回ってくるのです。

参考
・東京商工リサーチ「2023年『ラーメン店』の倒産、休廃業が過去最多 倒産が45件、休廃業は29件、コストアップが重荷」
・総務省「2020年基準 消費者物価指数」
・会計検査院「日本政策金融公庫等が実施した新型コロナ特別貸付等の状況」

鈴木 雅光/金融ジャーナリスト

有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。

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