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企業型確定拠出年金で“お金を増やせない人”がやってしまう「致命的なミス」

Finasee / 2024年2月21日 11時0分

企業型確定拠出年金で“お金を増やせない人”がやってしまう「致命的なミス」

Finasee(フィナシー)

企業型確定拠出年金でお金を増やせる人・増やせない人

退職金・企業年金制度の1つである企業型確定拠出年金(企業型DC)は、会社が毎月掛金を拠出し、従業員が自ら金融商品を選び運用する仕組みになっています。つまり、同じ掛金額でもどんな金融商品を選び、どう運用するかで、将来受け取る退職金または企業年金の金額が変わってきます。

前回、企業年金連合会の統計結果から、2021年度の企業型確定拠出年金の運用利回りの平均が3.5%であったことを紹介しました。
●参考:【「退職金が少しでも多くほしい!」“万年平社員”でも自力で金額を増やせる3つの方法】

しかし、中には15%超の利回りをたたき出した人も1.2%いたのです。果たして、企業型確定拠出年金の加入者は、どんな金融商品を選び運用しているのでしょうか。また、運用がうまくいっている人と、お金が全然増やせていない人の決定的な差を考えてみたいと思います。

選択できる商品のラインナップ

企業型確定拠出年金で選択できる金融商品は、iDeCo(個人型確定拠出年金)と同じく大きく分けて元本確保型商品と価格変動型商品があります。

元本確保型商品とは、定期預金や保険商品のことで、価格変動型商品は主に投資信託です。具体的な商品のラインナップは、会社によって異なります。

企業年金連合会の「確定拠出年金実態調査結果(概要版)」によると、会社が用意している運用商品の本数は、平均21.5本だそうです。そのうち、元本確保型の商品は、平均して4.6本(うち、定期預金が2.4本、保険商品が2.2本)となっています。それ以外は、価格変動型に分類される投資信託商品ということになります。

投資信託のラインナップも、会社によって異なりますが、同調査結果の平均で見てみると

・国内株式型が3.7本(うちパッシブ型1.4本、アクティブ型2.3本)
・国内債券型1.5本(うちパッシブ型1.0本、アクティブ型0.4本)
・外国株式型2.7本(うちパッシブ型1.6本、アクティブ型1.2本)
・外国債券型2.0本(うちパッシブ型1.4本、アクティブ型0.6本)
・国内不動産型0.5本(うち、パッシブ型0.3本、アクティブ型0.2本)
・外国不動産型0.3本(うち、パッシブ型0.3本)
・バランス型(資産配分固定型)3.5本(うちパッシブ型2.3本、アクティブ型1.1本)
・バランス型(リスクコントロール型)0.9本(うち、パッシブ型0.4本、アクティブ型0.5本)

となっています。

最も選ばれているのは「預貯金」

これらのラインナップのうち、企業型確定拠出年金加入者はどのような運用商品を選択しているのでしょうか?

運営管理機関連絡協議会の「確定拠出年金統計資料(2023年3月末)」によると、2023年3月末時点の運用商品選択状況は、元本確保型の選択割合が39.7%(うち、預貯金28.3%、保険11.4%)で、価格変動型(投資信託商品)の選択割合が59.8%となっていました。

投資信託の中でも、最も多く選択されていたのはバランス型で20.1%、2番目は外国株式型で17.1%、3番目が国内株式型の12.8%です。こうしてみると、運用商品として最も従業員に選ばれているのは、選択割合28.3%の預貯金ということになります。

投資信託の中でも、バランス型を選択する人が多いことから考えても、やはり将来もらう退職金や企業年金が減ってしまっては困るという心理が働き、手堅い運用になっているのかもしれません。

「元本確保型商品のみで運用」が8割以上いる会社も…

運用で増えるかもしれないと分かっていても、将来の退職金や企業年金になる資産だと思うと、冒険はできないという気持ちは理解できます。そこで、掛金の全部を投資信託で運用するのではなく一部を定期預金や保険商品で運用し、リスクを減らす選択している人もいるだろうということは察しがつきます。

しかしさすがに、元本確保型のみで企業型確定拠出年金を運用している人は、ほとんどいないだろうと思っていましたが、「確定拠出年金統計資料(2023年3月末)」によると、元本確保型のみで運用している人の割合が2023年3月末時点で26.9%もいるということが分かりました。

また、「確定拠出年金実態調査結果(概要版)」では、元本確保型商品のみで運用する加入者が8割以上いる企業が5.0%あることも報告しています。

ということは、企業型確定拠出年金加入者の中には、自分で運用することによって、運用利回り15%超を達成している人もいれば、ほとんど利息がつかない積立貯金と変わらない状況の人もいるということです。

20代でも34.9%の人が「元本確保型」を選んでいる

もっとも、企業型確定拠出年金の加入時からずっと元本確保型商品のみで運用し続けていたのか、50代60代になり退職が近づいたため、投資信託を元本確保型商品にスイッチングした結果、元本確保型商品のみの運用になっているのかといった細かいことは不明です。

しかし、「確定拠出年金統計資料(2023年3月末)の年代別商品選択割合を見たところ、企業型確定拠出年金の元本確保型商品の選択割合(預貯金と保険の合計)は、10代36.3%、20代34.9%、30代32.6%、40代34.5%、50代42.2%、60代51.3%で、10代~40代でも3割以上の人が、元本確保型商品を選択していることが分かりました。

これを、iDeCoの年代別商品選択割合と比較してみると、iDeCoで元本確保型商品(預貯金と保険の合計)を選択している人は、10代14.1%、20代14.1%、30代16.8%、40代25.7%、50代38.7%、60代48.6%で、年齢が上がるにつれ元本確保型商品を選ぶ人の割合が増える傾向になっていました。

同じ確定拠出年金なのに、企業型確定拠出年金は若くても元本確保型を選ぶ割合が高いのは、なんとなく解せないところです。せっかく、会社が積み立ててくれるお金で退職金や企業年金を増やすことができるかもしれないのに、その機会を逃してしまうのは、もったいないような気がします。

企業型確定拠出年金をどんな商品で運用するかは、加入者である従業員の自由です。どうしても元本割れリスクに耐えらない人が、確固たる信念をもって元本確保型商品をコツコツ積み立てているというならば、それはそれでよしだと思います。

しかし、実は、自分の意思で元本確保型商品を選んだわけではないのに、企業型確定拠出年金が預貯金で運用されている人もいるのです。

企業型確定拠出年金は、会社が提示した運用商品の中から、1または2以上の運用方法を選択して、加入者が運用の指図を行うのが原則とされていますが、「どういう金融商品を選んでいいか分からない」「どう運用すればいいか分からない」という人も中にはいるようです。

企業型確定拠出年金の放置が招く「致命的なミス」

企業型確定拠出年金を実施する会社は、加入する従業員に投資教育を行いますが、教育を受けてもなお、商品を選ぶのが困難な人もいます。

会社が掛金を毎月拠出しても、加入者が商品を選ぶ指図をせずに一定期間が経過すると、自動的に会社があらかじめ指定した運用商品で資金を運用する指定運用方法が適用される場合があります。

「確定拠出年金実態調査結果(概要版)」によると、指定運用方法を導入している会社は全体の38.2%で、そのうち69.7%が元本確保型商品を指定運用方法としています。つまり、自分で運用商品を選ばなかった人は、自動的に預貯金や保険などが積み立てられている可能性が高いといえます。

もっとまずいのは、会社が指定運用方法を導入していないケースです。加入者が運用指図をせず、会社にも指定運用方法がない場合、拠出された積立金は、運用商品が指定されない未指図資産となります。未指図資産は預貯金でもないので、資産が増えないばかりか、利息も一切つきません。

せっかく、会社に企業型確定拠出年金制度があるのに、ほったらかしにした結果、退職金や企業年金が少なくなってしまうというのはかなり致命的なミスです。

「そういえば、うちの会社にもDCがあったな」「運用商品の説明があったけど、記憶に残っていない」「転職前の会社に企業型確定拠出年金があったけど、どうしたっけ?」などなど。会社がやっている制度だからといって、真剣に向き合わず、ほったらかしにしすぎると、将来大損してしまうかもしれません。

心あたりのある方は、いますぐ、企業型確定拠出年金の加入者専用webサイトなどで運用状況を確認してみてください。

参考
・企業年金連合会「確定拠出年金実態調査結果(概要版)」
・運営管理機関連絡協議会「確定拠出年金統計資料(2023年3月末)」

加茂 直美/フリーライター・行政書士

主に年金、老後資金、行政手続きなどの細かい情報をリサーチし生活に活かすための記事を執筆。行政書士。2級DCプランナー。行政書士事務所オフィスリーガルブレーンを主宰。『役所や会社は教えてくれない! 定年と年金 3つ年金と退職金を最大限に受け取る方法』(大江加代 監修/ART NEXT)『アメリカ人が当たり前に知っているお金のこと全部』(西村隆男 監修/宝島社)『60歳からの得する年金!働きながら「届け出」だけでお金がもらえる本 2023-2024最新版』(小泉正典 監修/講談社MOOK)などの取材、企画、構成、執筆等を担当。

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