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新NISAでFIREは難しい?「4%ルール」で考える現実的な戦略とは

Finasee / 2024年2月20日 11時0分

新NISAでFIREは難しい?「4%ルール」で考える現実的な戦略とは

Finasee(フィナシー)

「このまま資産が右肩上がりに増えれば、いつかFIREも可能……⁉」

新NISAで資産を増やすことの実感が得られると、このような発想につながるかもしれません。そこで本記事では、新NISAを使ってFIREは可能か、というテーマについて考えてみます。

「FIRE」とは?

FIREとは、Financial Independence, Retire Earlyの頭文字をとったもの。「経済的に自立し、早期にリタイアする」ことを指します。

では、どれだけの資産があればFIREを達成できるのでしょうか。その答えと密接に関わってくるのが「4%ルール」の存在です。

「4%ルール」の概要

FIREにおける4%ルールは、米トリニティ大学の研究グループによって1998年に発表されました。同研究では、資産運用額の4%未満を毎年の生活費として切り崩せば、30年以上経過しても資産が尽きる確率が低い、といった結果が示されています。

必ずしも日本にも当てはまるとは限りませんが、ここでは1つの目安として考えてみましょう。例えば運用資産が5000万円あれば、毎年200万円ずつ取り崩すことができる。さらに1億円あれば、毎年400万円を取り崩しても、資産が底を尽きる可能性が低い、ということです。

逆に言うと、「年間400万円の生活費(毎月33万円程度)で暮らしている人であれば、『資産1億円』の取り崩しだけで生きていける」と考えられます。

FIREの種類

加えて、FIREにもさまざまな種類があります。

例えば上記のように資産の取り崩しだけで生活するモデルは、「フルFIRE」と呼ばれます。この状態に持っていくことは、正直に言うとかなりのハードルの高さです。

一方で、資産を取り崩しつつ、労働で少ない収入を得ながら生活するという「サイドFIRE」というモデルもあります。

もう少し具体的に言うと、

・運用資産を5000万円まで積み上げ、年間200万円(全体の4%)を取り崩す
・労働によって年間200万円程度の収入を得る

というものです。

1億円の資産形成は非現実的でも、資産収入(ここでは配当金・分配金と資産の取り崩しを分けずに「資産収入」と表現します)と労働収入を組み合わせたサイドFIREモデルであれば、フルFIREよりも達成確率は上がります。

「フルFIRE」はかなり難しい

では、ハードルの高い「フルFIRE」から詳しく考えていきましょう。まず、生活のために必要な額は、当然ですが世帯の人数により異なります。

参考に総務省統計局のデータを参考に計算したところ、生活費の年間平均は単身世帯で約194万円、4人世帯で約396万円です(総務省「家計調査報告 家計収支編」(2022年(令和4年)平均結果の概要)。この値をフルFIREの4%ルールに置き換えると、単身世帯は約4850万円、4人世帯は約9900万円の資産が必要となります。

ここまで説明が長くなりましたが、いよいよ本題。「この資産額を新NISAで実現できるのか?」という点について、金融庁の「資産運用シミュレーション」を使って計算します。

10年でフルFIREを目指す場合

まずは、10年でフルFIREするパターン。10年間で新NISA枠の1800万円を埋めるためには、毎月15万円の投資が必要です。

この条件でシミュレーションしたところ、単身世帯がFIREするためには利回り17.7%、4人世帯の場合は28.5%が必要という結果となりました。ちなみに、2024年1月26日時点での「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」の年率リターンは、5年平均で21.70%。この数字だけ見ると、「10年かけて新NISA枠を埋めきった場合、単身世帯であればフルFIREも視野に入る」という見方もできます。

一方で、ここ数年の株式相場はかなり好調であり、今後も年20%を超えるリターンが得られる……というのは、楽観的すぎます。そこで、期間をもう少し長く取り、20年でフルFIREするパターンも見ていきましょう。

20年でフルFIREを目指す場合

20年間で新NISA枠の1800万円を埋めるのであれば、月7.5万円の投資が必要となります。この条件であれば、単身世帯がFIREするためには利回り8.8%、4人世帯の場合は14.2%が必要という結果となりました。

投資期間を長く取ることができれば、複利効果によって資産は雪だるま式に増えていく。さらに月々の投資額も少なく済むため、FIREへのハードルは10年間で枠を埋める場合より低くなります。

現実的な戦略としては「サイドFIRE」が有力

とはいえ、20年で新NISAを埋めきった単身世帯でも、フルFIREのためには利回りが8.8%も必要。さらに4人世帯なら、14.4%も必要……投資期間を30年に延ばすとよりラクにはなりますが、あまり期間をかけすぎるともはや”RE=Retire Early(早期退職)”とは言えなくなってきます。

そこで考えたいのが、サイドFIREです。冒頭で述べた通り、生活のすべてを資産収入に頼るのでなく、労働収入も組み合わせたモデルです。イメージしやすいよう、ここでは「サイドFIREに必要な資産額=フルFIREの半分」で計算してみます(単身世帯は2425万円、4人世帯は4950万円)。

10年でサイドFIREを目指す場合

まず、10年でサイドFIREするパターン。先ほどと同じく、10年間で新NISA枠の1800万円を埋めるためには、毎月15万円の投資が必要です。

この条件でシミュレーションしたところ、単身世帯がFIREするためには利回り5.8%、4人世帯の場合は18.0%が必要という結果となりました。4人世帯の場合はまだ厳しいですが、単身の場合であれば「新NISAを10年で埋めきって、サイドFIREする」という目標も、かなり現実味を帯びてきました。

20年でサイドFIREを目指す場合

さらに、20年で新NISA枠の1800万円を埋める場合は、月7.5万円の投資が必要。この条件であれば、単身世帯がFIREするためには利回り2.9%、4人世帯の場合は9.0%が必要という結果となりました。

現在30代の方が、今から月7.5万円の新NISA投資を続けていくと……うまくいけば、50代でのサイドFIREも実現可能かもしれません。

「FIRE後の生活」を考える

FIREとひとことで言っても、ゴールは1つではありません。

積立額や積立期間を長く取り、資産収入だけで生活するフルFIREを目指す。資産の積み上げはそこそこのレベルにして、“資産収入と労働収入のハイブリッド生活”であるサイドFIREを目指す。どちらか一方が絶対的な正解でもないし、サイドFIREにおける「資産収入と労働収入の割合をどうするか」についても明確な答えはありません。

今の生活からはイメージしづらく、答えのない問いに対して解を得るために、ぜひFIRE後の生活を考えてみてほしいのです。

例えばサイドFIREで、資産収入:労働収入=1:1の割合で生活すると想定します。その場合、仕事で得る収入は今の半分(もしくはそれ以下)でも良くなる……そう考えると、「今とは別の仕事をする」という選択肢が生まれます。

ごく単純に考えると、給料が半分になれば仕事量も半分になります。現在残業が多い仕事に就いている場合、給料が低くても残業ゼロの会社に転職する。週5日働いている方は、週2~3日の出勤でも良い会社に転職する。

他にも「給料は低いけど、心から楽しいと思える仕事(フリーランスを含む)」を見つけ、その分野で新しい人生を歩む、という選択肢も視野に入ります。

***
 

余談ですが、私もサイドFIREを人生の目標としています。現在は本業の銀行員としての仕事と、作家・ライター業で生活していますが……いずれは資産収入を増やして独立し、“好きな時に、好きな場所で好きな仕事をする”ことを夢見ています。

このような人生の目標を持つことで、「サイドFIREするまで、本業ができる時間は限られている。本業は全力で取り組み、今しかできない本業での経験をたくさんしておこう!」と日々の仕事も前向きになれていると感じます。

新NISAでフルFIREまでは難しくても、「資産収入の柱を持ち、好きなキャリアを歩む」という目標を持つと、人生がより豊かになるかもしれません。

参考
・総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2022年(令和4年)」
・金融庁「資産運用シミュレーション

浅見 陽輔/銀行員・証券アナリスト

大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科を卒業後、2013年に銀行に就職。10年のキャリアで、投資運用、リスク管理、法人・個人向け融資、システム部門を経験。証券アナリスト、FP2級、簿記2級、税務上級など20種類の金融系資格を保有。趣味は優待株投資と筋トレ。本業の傍ら、Kindle(電子書籍)作家としても活動中。代表作に『図解 新NISA』『トクする株主優待の選び方』『最後のジュニアNISA』『絶対に続く筋トレ』などがある。Twitterアカウントは【@you_def】。

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