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金の切れ目が縁の切れ目…港区女子とパパ活の末“すべてを失った”男の末路

Finasee / 2024年2月15日 18時0分

金の切れ目が縁の切れ目…港区女子とパパ活の末“すべてを失った”男の末路

Finasee(フィナシー)

<前編のあらすじ>

広田歩(40歳)は大学時代の友人・笹原と一緒に起業して成功を収めた。港区の一等地のデザイナーズ・マンションに妻の玲子(37歳)と幼稚園へ通う息子と3人で何不自由ない幸せな生活を送っていたが、笹原の彼女が25歳の美女であると知ってしまったことや、仕事が成功し華やかな場所で美しい女性たちを見るたびに、美容に労力をかけようとしない玲子への不満が募っていった。

●前編:友人と起業、港区の最上階マンションを手に入れるほど成功したアラフォー男に“魔が差した”身勝手な理由

マッチングアプリで出会った女

それから数ヶ月の時がたった。

その日、歩はとある会員制バーの個室でワインを飲んでいた。目の前に並んでいるのは家では食べられない塩分高めの料理ばかり。歩はそんな料理に舌鼓を打っていた。

すると扉が開き、甘い匂いが部屋に入ってくる。

「あーくん、ごめんね、待った?」

「いいや、俺もさっき来たところだから」

彼女の名前は徳留亜里沙。モデル兼インフルエンサーをやっている。亜里沙と知り合ったのはマッチングアプリ。そこで出会い、仲良くなった。

「このバッグ、ありがとね~。もー、気に入ってずっと使っちゃってるの」

亜里沙はうれしそうにハイブランドのバッグを見せてきた。

「いや、気にするな。亜里沙なら、そのくらいのバッグは持っておかないとな。他にも欲しいものがあったら、何でも言っていいぞ」

「やったー! あーくん、大好き!」

亜里沙のうれしそうな顔を見て、歩の顔もほころぶ。

こんな気持ちは久しぶりだ。亜里沙と出会ってから、明らかに歩の生活には張りが出るようになった。これが欲していたものだと歩は確信していた。

「あーくん、今日は一緒にいられるよね?」

「ああ。アイツには仕事で遅くなるって言ってるから」

「……ねえ、いつまでこんなコソコソしないといけないの? 亜里沙、海外旅行とか行きたいんだけど」

亜里沙は不満を口にする。

「海外旅行か……」

息子が生まれてから、海外旅行には行けてなかった。

最後に海外へ行ったのは新婚旅行のハワイ。それもツアー会社の格安プランだった。しかし今はケチる必要はない。若くて美しい女と高級ホテルに泊まって豪遊ができる。そう思うとまた心が躍った。

「安心しろ、そのうちだよ」

「本当? いつまでも待たせないでね」

「分かっているさ」

見たこともない玲子の表情

亜里沙と別れて歩は帰宅をした。玄関に入るとリビングの明かりが廊下に漏れ出ていた。

リビングに入ると玲子が椅子に座っていた。

「……何だよ、起きてたのか」

歩は夢から覚めたような気持ちになった。

「お酒、飲んでたの?」

「ああそうだよ。付き合いだからな」

「ウソばっかり。女と飲んでたくせに……!」

歩が思わず顔を上げると、玲子は見たこともない形相をしていた。

「……何言ってんだよ?」

「気付いてないとでも思ってた? 私の事、ばかにしないでよ」

いつでも離婚してやると亜里沙には宣言していた。あれは強がったわけではなく本心だった。しかし目の前の玲子の迫力に歩はおじけづく。

「ご、誤解だって……」

「誤解? 私が何も知らずに適当な言いがかりをつけてるとでも思ってるの⁉」

玲子はそう言って、写真を机にぶちまけた。そこには歩が亜里沙と仲むつまじい様子で歩いている様子が写されている。しかもその中の数枚はホテルへの出入りの様子まで収められていた。

「ど、どうしたんだよ、これ……」

「探偵雇って、調べてもらったのよ。これでよく誤解だなんて言えるわね……!」

玲子は低い声で歩をなじる。

「と、とにかく後で話し合おう。今は、ちょっと、疲れているから……」

「そうですか。それじゃ私たちは明日の朝に出て行きます。やり取りは弁護士を通じてやってもらうことにするのでよろしくお願いします」

あまりにも冷めた言葉だった。

歩は目の前の人間が本当に玲子なのかと疑いたくなる。しかしそういう風にしてしまったのは自分自身なのだと思い知る。

「ま、待てって。俺たち、こんなことで終わるのか?」

「こんなことで?」

玲子の眼光が強くなる。

「今まで私がどれだけ我慢をしてきたか⁉ あんたの健康を考えて、塩分控えめの薄味料理を試行錯誤して作っていたのよ。あんたは自分だけしんどい思いをしているって感じてたみたいだけど、私だって我慢してたのよ! あんただけ、そんな薄味だとかわいそうだからね!」

「……そ、そうだったのか?」

歩は玲子の気持ちに初めて気付いた。てっきり玲子は薄い味付けが好みなのだと思い込んでいたのだ。

「これからは好きなだけ味が濃いものもお酒も好き放題よ。それで若い女と遊び倒せるわ。だから私たちがいなくなったらあなたもうれしいでしょ?」

玲子の問いに歩は答えられなかった。

確かにそう考えていた。しかし今はそれが間違いだったと分かっている。だが歩にそれを否定する資格はなかった。

自業自得が呼んだ破滅

そして翌朝、ソファで寝ていた歩が目を覚ますと、玲子たちの姿はどこになかった。まるで初めから誰もいなかったと錯覚するほどきれいに整えられたベッドを見て、頭がうずくように痛くなった。

その後、歩は玲子と一言も話すことなく離婚が成立。多額の養育費と慰謝料を請求されることとなった。

そして一人暮らしを始めて、しばらくたったある日、乱暴なチャイムで目を覚ました。

フラフラとした足取りでドアを開けると、そこにいたのは笹原だった。笹原は怒りと悲しみが合わさったような目で俺を見ていた。

歩は笹原を部屋の中に招き入れる。

「ごめんな、散らかってて」

玲子がいなくなり、生活は荒(すさ)んだ。そんな様子を笹原に見られる気恥ずかしささえ感じなくなっていた。

「なんか、飲むか?」

歩がそう尋ねると、笹原は首を横に振る。

「いや、いい。手短に済ませるから」

そう言った笹原の前に歩は座る。

「どうした?」

「広田、お前は社長から解任されることになった」

「え……」

「もうずっとまともに会社に来てないだろ。それで他の社員からも不満が出ていたんだ」

うちの会社の株は歩と笹原で半々にしていた。つまり笹原の権限で歩を代表取締役から解任させることができるのだ。しかし歩は笹原がそんなことするわけないと高をくくっていた。

「そ、そんな……! 待ってくれ、俺は今、会社を追われたら、生活ができなくなる!」

歩は笹原に訴えかける。

「玲子への慰謝料とか、バカ高い養育費だけでも生活はかなりキツくて……!」

「お前が女にうつつを抜かしているのは知っていた。だけどな、仕事をおろそかにするのは違う。俺たちの会社には社員がいて、彼らを支えないといけないんだぞ? 自分の立場をわきまえろよ」

笹原に言われ、歩は何も言えなかった。

こうして歩は社長という地位も失い、会社からも追い出された。

薄味のレシピ

それから半年後、歩はデザイナーズマンションからボロボロの古いアパートへ引っ越した。

再就職をしようと思ったのだが、高血圧からくる片頭痛に悩まされることになり、まともに働くことができなくなってしまった。そして今は残り少ない貯金を切り崩し、生活保護の申請が通ることを願いながら生活をしている。

亜里沙とはあれからすぐに連絡が取れなくなった。歩とは当然ながら“お金だけの関係”だったということだ。

夕飯時、歩は目の前のパスタを口に運ぶ。お金がなくなり、外食もできないので、最近は自炊をしている。

玲子のクリームパスタをまねて作ったのだ。しかし口に入ってくるのはただ冷めた薄い味のみ。

玲子にレシピを聞こうかと考えた。しかしそれは不可能だと悟る。玲子は家を出てからすぐに番号を変えていた。

この先、玲子と話す機会はもう訪れない。謝罪も感謝もたわいない話も何もかも伝えることはできないのだ。

歩は味のしないパスタを食べながら、ただただ涙を流した。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

梅田 衛基/ライター/編集者

株式会社STSデジタル所属の編集者・ライター。マネー、グルメ、ファッション、ライフスタイルなど、ジャンルを問わない取材記事の執筆、小説編集などに従事している。

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