住友林業が住宅ローン金利の上昇で苦戦 今期に増収増益を見込む根拠とは
Finasee / 2024年2月27日 17時0分
![住友林業が住宅ローン金利の上昇で苦戦 今期に増収増益を見込む根拠とは](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/finasee/finasee_13220_0-small.jpg)
Finasee(フィナシー)
住友林業の株価が順調です。2023年から過去の高値を上抜いて上昇しており、2024年1月も上場来高値を更新しました。売り上げは拡大が続いており、2024年12月期は初めて2兆円に達する見込みです。
【住友林業の業績】
売上高 純利益 2022年12月期 1兆6697億円 1087億円 2023年12月期 1兆7332億円 1025億円 2024年12月期(予想) 2兆0650億円 1050億円※2024年12月期(予想)は2023年12月期時点における同社の予想
出所:住友林業 決算短信
【住友林業の株価(月足、2019年2月~2024年2月)】
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住友林業は収益性の高さから「JPXプライム150指数」に選ばれています。しかし2023年12月期は4期ぶりの最終減益となりました。
住友林業はなぜ利益を減らすこととなったのでしょうか。決算から原因を探ってみましょう。また今期の見通しについても紹介します。
木造住宅の大手 広大な山林を保有する異色企業住友林業は住宅メーカーの大手です。住友家の林業部門を源流に持ち、財閥解体で設立されました。もともと木材を扱う商社でしたが、1975年に注文住宅事業に進出し現在の形となっています。また持分法適用会社としてゼネコンの熊谷組をグループに持ちます。
住友林業は国内では木造のハウスメーカーとして知られています。しかし実は海外事業が売り上げの過半を占めています。2003年にアメリカへ進出し、M&Aで基盤を拡大しました。現在は集合住宅や宅地の開発も手掛けています。
【セグメント売上高(2023年12月期)】
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住友林業は日本有数の森林オーナーでもあります。
住友林業は広大な山林を持つことで有名で、国内におよそ4.8万ヘクタールを所有しています。日本の森林面積はおよそ2500万ヘクタールですから、その500分の1を住友林業1社で所有していることになります。
住友林業は海外でも森林の取得を進めています。保有または森林は2021年で27.9万ヘクタールにも及んでおり、2030年までに50万ヘクタールへ拡大する目標を掲げています(出所:住友林業 WOOD CYCLE)。
4期ぶり最終減益 住宅ローン金利の上昇が重荷住友林業の足元の業績を確認してみましょう。
2023年12月期は前期と比べ売り上げが増加しました。増収は円安も手伝っています。一方、純利益は前期を下回りました。最終減益は2020年3月期以来4期ぶりです。セグメント業績を確認すると、特に海外事業で減益幅が大きかったことがわかります。
【セグメント経常利益の推移(2022年12月期~2023年12月期)】
2022年12月期 2023年12月期 木材建材 149億円 112億円 住宅 154億円 328億円 海外住宅・建築・不動産 1618億円 1125億円 資源環境 14億円 6億円 その他 19億円 22億円出所:住友林業 決算説明会資料
減益の原因はアメリカの戸建住宅事業の苦戦です。2023年度は第1四半期を除き、戸建住宅の販売単価が前期を下回って推移しました。通期では2022年度が50.8万ドルだったところ、2023年度は48.1万ドルにとどまっています。
【米国戸建住宅 販売単価の推移(2022年12月期~2023年12月期)】
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販売単価の低下の背景には住宅ローン金利の上昇があります。アメリカでは2022年から利上げが行われ、住宅ローン金利も上昇傾向にあります。全米抵当貸付銀行協会(MBA)によると、30年住宅ローン金利は2023年10月に7.9%に達しました。
【米30年住宅ローン金利(2023年1月4日~2024年2月14日)】
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住宅ローン金利が上昇したため住宅需要が後退し、販売が伸び悩む原因となったようです。
中期経営計画の最終年度 今期はどうなる?住友林業は2022年から3ヵ年の中期経営計画を進めており、2024年12月期はその最終年度にあたります。
中期経営計画では財務目標として売上高1兆7700億円、経常利益1730億円、純利益1160億円を掲げました。2023年12月期決算で公表した2024年12月期の業績予想によると、売上高と経常利益は達成を見込んでいますが、純利益は目標に届かない見通しです。
【2024年12月期の業績予想】
中期経営計画 2023年12月期の決算公表時 売上高 1兆7700億円 2兆0650億円 経常利益 1730億円 1730億円 純利益 1160億円 1055億円 公表年月 2022年2月 2024年2月
出所:住友林業 決算説明会資料
2024年12月期の見通しについて、住友林業はどう見ているのでしょうか。
前期の減益要因となったアメリカの戸建住宅の販売単価は、2024年12月期も住宅ローン金利の高止まりから47.7万ドルと微減(前期:48.1万ドル)を見込んでいます。
なお販売戸数は増加を予想しています。受注は増加傾向にあり、2024年は前年を上回る想定です。
【2024年12月期に米国戸建住宅の見通し】
2023年12月期 2024年12月期(予想) 販売戸数 10221戸 11785戸 販売金額 6913億円 7870億円 販売金額(ドルベース) 49.18億ドル 56.21億ドル 販売単価 6760万円 6680万円 販売単価(ドルベース) 48.1万ドル 47.7万ドル
出所:住友林業 決算説明会資料
こういった状況から、前期に苦戦した海外事業はアメリカを中心に回復を予想しています。
一方、国内の住宅事業は減益を見込んでいます。期初の受注残の減少が大きく、通期でも販売額は前期を下回ると予想しています。販売単価の上昇から増収を見込むも、コストの増加から利益は減少する見通しです。
【2024年12月期の予想セグメント経常利益】
2023年12月期 2024年12月期(予想) 木材建材 112億円 140億円 住宅 328億円 315億円 建築・不動産(※) 1125億円 1325億円 資源環境 6億円 15億円 その他 22億円 24億円
※海外住宅・建築・不動産セグメントは2024年12月期から建築・不動産へ名称を変更
出所:住友林業 決算説明会資料
なお、配当金は増額を予定しています。前期比5円増額し1株あたり年間配当金は130円とする計画です。
【配当金と配当性向の推移(2021年12月期~2024年12月期)】
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住友林業は2030年までに経常利益2500億円を目指す長期ビジョンを掲げています。今期までの中期経営計画は、その第一段階という位置付けです(出所:住友林業 Mission TREEING 2030)。
今期の業績の見通しから、中期経営計画の経常利益目標(1730億円)には到達する見通しです。しかし利益の多くを占める海外事業は金利や為替の影響を比較的強く受けます。マーケットによっては目標の達成は難しくなるかもしれません。
住友林業は無事に目標を達成できるのでしょうか。市場の関心を集めそうです。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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