「離婚をなかったことにしてほしい」テレビの情報を信じて大誤算…不幸のドン底へ落ちた女性の末路
Finasee / 2024年3月25日 11時0分
Finasee(フィナシー)
<前編のあらすじ>
友美恵さん(39歳・女性)と巧さん(42歳・男性)夫婦は交際後数カ月で結婚。しかしライフスタイルのすれ違いから喧嘩が頻発し、ついに子供の進学のタイミングで離婚することとなった。
離婚に伴う諸々の条件は、2人が前向きに離婚を決断したこともありスムーズに決まった。しかし1つだけ意見が対立して全く決まらない。それが「財産分与」についてだ。
夫婦には離婚時4000万円近い額の貯金があり、この貯金は巧さんが数年前父親から相続したものであった。“夫婦の婚姻中に得た財産”だとして友美恵さんは「半分を受け取る権利がある!」と主張。一方の巧さんは「君は関係ないだろう。財産分与する理由がない」と譲らなかった。
●前編:【離婚で財産4000万円が争点に…「俺の金だ」「私の努力あってこそ」一歩も譲らぬ両者の主張】
「財産分与」のルール両者の言い分と事の経緯が整理できたところで一般的な財産分与のルールについて確認していこう。
財産分与とは、離婚において夫婦の一方から他方に対して婚姻中に得た財産を分けるものである。その根拠には、財産離婚相手の生活保障や離婚の原因についての責任の清算の他にも、婚姻中に築いた財産の分与という側面も強くある。
今回の友美恵さんの主張については「婚姻中に築いた財産の分与」という点に主眼を置いて考えていこう。実務で考える場合においてもこの点は非常に重要となる。
一般的に財産分与の額は夫婦が婚姻生活中に築いた財産の半分の額とされる。そのため、財産分与においては「どの財産が婚姻中に得た財産とされるのか」という点が非常に重要になるわけだ。
これについてだが、財産分与の対象となる財産は婚姻中に夫婦が得た財産のすべてが対象になるわけではない。名義の如何(いかん)にかかわらず、夫婦の協力によって形成された財産が対象となるのだ。
例えば、名義上は夫のものとなっている財産であっても、それが婚姻期間中に夫婦の協力によって得られたものであれば財産分与の対象となる。
巧さんと友美恵さんのケースではどうなるのか先ほど確認した財産分与の概要を巧さんと友美恵さんのケースについて考えていこう。すると、ぱっと見、友美恵さんは財産分与によって巧さんの4000万円の貯金のうち半分に該当する2000万円を財産分与によって得られることになると考えられそうだ。
友美恵さんは婚姻期間中家事を引き受け、親せき付き合いも完璧にこなし、巧さんを対外的にも対内的にも支えてきたからだ。となれば、友美恵さんの言う「お義父さんの介護やお葬式、私はあなたの身内としていろいろな手伝いをしてきた」という主張にも正当性が生まれてくる。相続によって得られた4000万円の貯金には友美恵さんの功績が一定以上は含まれていると考えられそうだ。
だが、だからといって相続によって得た財産までもが財産分与の対象となるわけではない。財産分与の対象となるのは、あくまでも「共有財産」だ。共有財産とは、夫婦が共同で所有する財産、婚姻中に夫婦が協力して形成した財産である。
一方で、相続によって得た財産は「特有財産」となり財産分与の対象とならない。特有財産とはいわば夫婦関係とは無関係の個人的な属性から得た財産を指す。相続によって得た財産は夫婦関係とは関係がない。
たしかに現実としては友美恵さんの助力が一切影響していないとも言い切れない。しかし、仮に友美恵さんの存在がなくとも、相続については自身の家族関係・親族関係といういわば個人的な身分に基づいて生じる。つまり、相続によって得た財産は共有財産ではなく特有財産となる。
このように考えると、結論として友美恵さんは4000万円の相続財産については半分とは言わず、“財産分与を一切受けられない”ことになる。
友美恵さんの悲惨な現状友美恵さんは巧さんの相続した遺産を目的に離婚をもくろんでいた。
「財産分与によって貯金を半分受け取れる」
テレビでの話をうのみにし、離婚するだけで2000万円もの大金が手に入ると思い込んでいたのだ。
しかし、先述の理由から友美恵さんは財産分与により財産をほとんど得られなかった。結果的に相続以外で築いてきた貯金について数百万円程度財産分与を受けたにとどまった。
思っていたものと違い「離婚をなかったことにしてほしい」と巧さんに復縁を持ちかける。しかし巧さんは過去の同僚を頼って転職して転居していた。新天地で充実した生活をスタートしており、友美恵さんと復縁する気は一切なかった。
巧さんから聞くところによれば、友美恵さんはパートをしながら、1人、地元のアパートでほそぼそと暮らしているようだ。当初は実家に戻る予定だったが義父母からはあきれられ実家に戻ることを拒否されてしまったことで始まった一人暮らしのようだ。
ただ、これも巧さんが義父母を通じて聞いた話であり、どこまで正確であるかは定かではない。とはいえ、友美恵さんが財産分与で巧さんが相続で得た4000万円もの財産の半分を得られると思い込んで離婚をし、痛い目をみたことは間違いない。
***財産分与は相続で得た財産や結婚前から有していた財産など夫婦関係とは別で得られただろう財産は対象とならない。それゆえ、配偶者には数千万円の財産があっても、財産分与によって受け取れる財産は数百万円なんてことも決して珍しい話ではない。
友美恵さんのような女性は、法律上保障された権利について取り沙汰されるようになってから増えていることが想定される。
しかし財産分与は必ずしも貯金半分がもらえるような制度ではない。決してこの制度をアテに離婚をしてはいけない。財産分与を過信しての離婚は自身を不幸に陥れかねないのだから。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。
※人物の名前はすべて仮名です。
柘植 輝/行政書士・FP
行政書士とFPをメインに企業の経営改善など幅広く活動を行う。得意分野は相続や契約といった民亊法務関連。20歳で行政書士に合格し、若干30代の若さながら10年以上のキャリアがあり、若い感性と十分な経験からくるアドバイスは多方面から支持を集めている。
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