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神戸物産の「業スー」激安でも高利益率の理由と焼き肉チェーンに賭ける期待

Finasee / 2024年3月19日 17時0分

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Finasee(フィナシー)

神戸物産の株価は横ばいが続いています。2021年9月の高値(4660円)までは顕著に上昇しました。その後は翌年5月の安値(2752円)まで下落し、直近ではおおむね3600円~4200円で推移しています。神戸物産は円高メリットのある銘柄として知られているため、円安が進んだ近年は選好されにくかった可能性があります。

【神戸物産の業績】

   売上高   純利益   2022年10月期 4068億円 208億円  2023年10月期 4615億円 206億円  2024年10月期(予想) 4890億円 215億円

※2024年10月期(予想)は2023年10月期時点における同社の予想

出所:神戸物産 決算短信(外部リンク)

出所:Investing.com(外部リンク)より著者作成

神戸物産は業務スーパーの運営会社です。売り上げは好調で、投資家からも比較的高い評価を得ています。「価値創造が推定される我が国を代表する企業で構成される指数」として算出される「JPXプライム150指数」にも、収益性と市場評価性(PBR基準)の双方の基準を満たし選出されました。

神戸物産はなぜ高く評価されているのでしょうか。ビジネスモデルから探ってみましょう。また2023年10月期の減益の原因と、2024年10月期の見通しも紹介します。

成長力と利益率に強み 業務スーパーのビジネスモデルとは

神戸物産の主力事業は業務スーパーの運営です。2023年10月末で全国1048店舗を主にフランチャイズで運営しています(直営は4店舗)。加盟店への卸売りに加え、加盟店からフランチャイズ契約に伴うロイヤリティを得るビジネスモデルとなっています。

主力の業務スーパーを中心に神戸物産は順調に拡大してきました。売上高は2023年10月期までに18年連続で増加しています。成長は加速しており、2018年10月期からの5期で売上高は72.8%増加しました。1年あたりに直すと増収率はおよそ11.6%となります。

出所:神戸物産 有価証券報告書(外部リンク)より著者作成

高い利益率も神戸物産の強みです。主な小売業や食品卸売業と比べると、売り上げは大きくありませんが営業利益率は高水準です。自社で製造・輸入する付加価値の高いオリジナル商品の比率が34%台と高いこと、独自の管理システムで販管費(販売費および一般管理費)の削減に取り組んできたことが奏功しているとみられます。

【主な小売業・食品卸売業の業績(2022年度)】

           売上高    営業利益   営業利益率   神戸物産 4615億円 307億円 6.7%  セブン&アイHD 11兆8113億円 5065億円 4.3%  イオン 9兆1168億円 2098億円 2.3%  三菱食品 1兆9968億円 234億円 1.2%  加藤産業 1兆0994億円 167億円 1.5%

※神戸物産は2023年10月期、セブン&アイHD・イオンは2023年2月期、三菱食品は2023年3月期、加藤産業は2023年9月期

出所:各社の決算短信(神戸物産(外部リンク)、セブン&アイHD(外部リンク)、イオン(外部リンク)、三菱食品(外部リンク)、加藤産業(外部リンク)、)

発電事業はひと段落 外食・中食は拡大路線

神戸物産の業務スーパー以外の事業として、外食・中食事業とエコ再生エネルギー事業があります。

外食・中食事業ではレストランや焼き肉、惣菜店を直営またはフランチャイズで運営しています。エコ再生エネルギー事業は保有する太陽光およびバイオマス発電所からの売電が収益源です。

【セグメント業績(2023年10月期)】

   売上高   営業利益   業務スーパー 4469億円 341億円  外食・中食 110億円 5億円  エコ再生エネルギー 36億円 9億円

出所:神戸物産 決算説明会資料(外部リンク)

エコ再生エネルギー事業は、予定していた発電所は2023年10月までに全て売電を開始しました。新規の稼働がないため、当面は大きな成長はないとみられます。

一方、外食・中食事業は拡大を目指します。外食はビュッフェレストランの「神戸クック・ワールドビュッフェ」と焼き肉店の「プレミアムカルビ」、中食は惣菜店の「馳走菜(ちそうな)」を展開しています。

店舗数は3業態で148店舗です(2023年10月)。2023年12月に発表した中期経営計画では、これを2026年10月期までに200店舗以上へ、長期的には500店舗以上へ拡大する目標が明かされました。特に全店を直営で運営するプレミアムカルビはフランチャイズ化の計画があり、店舗拡大のけん引役になるとみられます(出所:神戸物産 中期経営計画(外部リンク)

【外食・中食事業の店舗数(2023年10月)】
・神戸クック・ワールドビュッフェ:14店舗(13店舗)
・プレミアムカルビ:20店舗(0店舗)
・馳走菜:114店舗(109店舗)
※()はフランチャイズの店舗数

出所:神戸物産 有価証券報告書(外部リンク)

外食・中食事業はコロナ禍の影響もあり赤字が続いていました。しかし売り上げは順調に推移しており、2023年10月期は4期ぶりに黒字を確保しています。出店が順調に進めば神戸物産全体への貢献も期待できそうです。

出所:神戸物産 決算説明会資料(外部リンク)より著者作成為替ヘッジで9年ぶり最終減益 今期はどうなる?

売り上げを順調に伸ばす神戸物産ですが、2023年10月期は経常利益と純利益は減少しました。最終減益は9年ぶりです。

【神戸物産の業績】

       2022年10月期   2023年10月期   売上高 4068億円 4615億円  営業利益 278億円 307億円  経常利益 321億円 300億円  純利益 208億円 206億円

出所:神戸物産 決算短信(外部リンク)

主な原因は営業外収支の悪化です。為替差益の減少や為替ヘッジにかかるデリバティブ評価損失などから、営業外で7億円の赤字が生じました(2022年10月期は43億円の黒字)。

出所:神戸物産 決算短信(外部リンク)より著者作成

神戸物産は海外から商品を輸入し販売しています。2023年10月期の輸入実績は798億円です。これは商品仕入れ実績(3633億円)の22%に相当します(出所:神戸物産 有価証券報告書(外部リンク)

輸入において円安は不利に働きます。神戸物産は為替の影響を低減するため、デリバティブ取引を活用し仕入れの為替リスクを一部ヘッジしています。

デリバティブ取引にかかる金融商品は時価で評価されています。2022年10月期は5億円の評価益となっていたところ、翌期は41億円の評価損失となり、減益の大きな原因となりました。

今期(2024年10月期)の計画はどうでしょうか。前期決算で公表された業績予想は以下の通りです。増収増益ながら、円安・ドル高およびコストの高騰などが続くことを想定し、営業利益は微増にとどまる見通しです。また業務スーパーの出店は35店舗の純増を計画しています(出所:神戸物産 決算説明会資料(外部リンク)

【2024年10月期の業績予想】
・売上高:4980億円(7.9%)
・営業利益:310億円(0.9%)
・経常利益:330億円(10.1%)
・純利益:215億円(4.6%)
※()は前期比

出所:神戸物産 決算短信(外部リンク)

一方、経常利益は10%の増益と大きめの回復を予想しています。2023年10月期の減益の主因だった営業外収支の赤字は、今期は解消を見込んでいるようです。

神戸物産の上記の計画は円安を前提に予想されています。想定より円高に推移すれば業績にはプラスに働きやすいでしょう。円高が進む局面では、思惑から神戸物産株式に買いが集まるかもしれません。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)

若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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