沈む日本板硝子 世界3位を買収も赤字頻発、株価は5分の1に
Finasee / 2024年3月27日 18時0分
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Finasee(フィナシー)
日本板硝子が復活を目指した中期経営計画「リバイバル計画24」は、未達のまま終了を迎える見込みです。今期(2024年3月期)までの3ヵ年で300億円の純利益を稼ぐ計画でしたが、前期に計上した最終赤字338億円がひびき、期間の累計でも純損失が予想されています(出所:日本板硝子 中期経営計画(外部リンク))。
苦戦の主因は2006年に子会社化した英ピルキントンです。買収に伴い計上していた資産で減損が生じ、巨額の損失につながりました。ピルキントンの取得は、日本板硝子の低迷の原因とよく指摘されています。
今回はガラスの名門、日本板硝子のピルキントン買収を振り返りましょう。
小が大をのむ 板ガラス世界3位を6000億円で買収日本板硝子はガラスのグローバルリーダーを目指し、2006年にピルキントンを6160億円で完全子会社化します。当時ピルキントンは世界3位のガラスメーカーで、日本板硝子の1.9倍の売り上げを持っていたことから「小が大をのむ」買収として話題を集めました。
【日本板硝子とピルキントンの売上高の比較(2005年3月期)】
・日本板硝子:2650億円
・ピルキントン:4920億円
※日本板硝子は日本基準、ピルキントンは国際会計基準
※ピルキントンは1ポンド=205円換算
出所:日本板硝子 英国ピルキントン社の買収手続き開始について(外部リンク)
ピルキントンを連結したことで日本板硝子の業績は拡大します。海外売上高比率も60%台に達し、グローバル化は一気に進展しました。一方、経常利益は支払利息の増加などから減少しています。なお、純利益は買収資金の調達で譲渡した有価証券の売却益などから増益となりました。
【日本板硝子の当時の業績】
2006年3月期 2007年3月期 売上高 2659億円 6815億円 経常利益 104億円 80億円 純利益 78億円 121億円 海外売上高比率 20.2% 67.9%出所:日本板硝子 決算短信(外部リンク)
一方、財務への負荷も小さくありませんでした。買収に伴い有利子負債が拡大し、自己資本比率は40%から20%台にまで悪化します。またのれんといった無形固定資産も顕著に増加しています。
【日本板硝子の当時の財務】
2006年3月期 2007年3月期 総資産 5960億円 1兆4090億円 無形固定資産 70億円 3995億円 有利子負債 2369億円 5611億円 自己資本比率 40.0% 22.7%出所:日本板硝子 決算短信(外部リンク)
有利子負債は一般に金融費用を増加させ、のれんは一般に償却費を増やし利益を圧迫します。日本板硝子は、これらの費用をこなし成長する姿を描いたのかもしれません。しかしピルキントン買収で加速するはずだった成長は暗礁に乗り上げます。
買収後に赤字頻発 株価は長期低迷日本板硝子の業績は2008年3月期までは順調でした。ピルキントン買収で強化された欧州で建築向けや自動車向けが好調で、売り上げと利益は過去最高を記録します(出所:日本板硝子 株主通信(外部リンク))。
しかし翌期から日本板硝子の苦戦が始まります。2008年9月にリーマンショックが起き、売り上げは急減しました。主力の欧州地域のほか、中国やブラジルなどの各地域で不振が相次ぎ、売り上げの減少は長期化します。
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財務が痛んでいた日本板硝子にとって、売り上げの低迷は致命的でした。金融費用などを吸収できず、リーマンショック以降も大きな赤字をたびたび計上しています。最近は金利の上昇も金融費用を増加させています。ピルキントン連結から2023年3月期までに9回の最終赤字となり、累計の損益は大きくマイナスに偏っています。
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株価も沈み込んでいます。リーマンショック後も日本板硝子の株式は浮上せず2008年末の5分の1以下の水準です。同業のAGC(旧・旭硝子)と比較すると、日本板硝子がいかに売り込まれているかわかります。
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冒頭の通り日本板硝子は中期経営計画「リバイバル計画24」の進捗中で、今期(2024年3月期)は最終年度にあたります。
今期の業績見通しは以下の通りです。売り上げは10%の増加、最終損益は2期ぶりの黒字を見込んでいます。営業利益は420億円を予想しており、達成すればリーマン後の最高(2019年3月期:369億円)を更新します。
【日本板硝子の業績】
売上高 営業利益 純利益 2022年3月期 6006億円 200億円 41億円 2023年3月期 7635億円 348億円 -338億円 2024年3月期(予想) 8400億円 420億円 130億円※2024年3月期(予想)は同第3四半期時点の同社の予想
出所:日本板硝子 決算短信(外部リンク)
大きく回復する日本板硝子ですが、株価は芳しくありません。第1四半期決算の公表時は値上がりが見られました。しかし中間決算と第3四半期決算の公表時は反対に売られる展開となりました。営業利益の進捗が鈍化していることが原因の一つだとみられています。
【営業利益の進捗(2024年3月期、累計)】
・第1四半期:146億円
・第2四半期:260億円(+114億円)
・第3四半期:321億円(+61億円)
※()は前四半期比
出所:日本板硝子 決算短信(外部リンク)
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投資家の関心は来期(2025年3月期)の見通しに移っているでしょう。見通しは今期の通期決算と合わせ、2024年5月10日に公表される予定です。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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