「勝手は許しません」不倫バレして夜逃げした夫に、妻が与えた“お金の三重苦”の制裁
Finasee / 2024年4月2日 11時0分
Finasee(フィナシー)
<前編のあらすじ>
中国四国地方在住の小倉さん(30代・既婚)は、19歳のときに1歳先輩の男性と大学のサークルで出会い、3年後に交際に発展。ところがその約2年後、いざ結婚しようという段になった小倉さんが彼の貯金額を聞き出すとわずか20万円だった。
「年収800万円、手取りでも500万円はあったはずでした。それなのに車のローンと奨学金の返済でマイナスに陥っていることにがくぜんとしました」
彼のおおらかさに惹かれていたものの、金銭管理や金銭感覚のズレに不安を抱いた小倉さんは、結婚後の家計管理は自分が務め、お小遣い制とすることで彼と合意した。
●前編:【金銭感覚のズレに妻あ然…お小遣い制をくぐり抜け“飲み会通い”を続けた夫の「まさかの方法」】
不妊治療とマイホームコロナ禍に突入し、夫の飲み会通いは収まったかのように見えた。
夫の給料が上がり始め、収入も安定。子煩悩な夫に対して不満に思うことも少なくなり、「そろそろマイホームや2人目を考えるか?」という話も出ていた。
「私は最初、不妊治療に積極的ではありませんでした。1人目の妊娠で、手術入院までしましたからね。でも子ども好きの夫は、どうしても2人目が欲しかったようです。必死に説得され、私も覚悟を決めて治療に臨みました」
体への負担を覚悟した小倉さんは、パートへ転職。そのとき夫は、「専業主婦になればいいじゃん」と言っていた。しかし夫の過去の行動を思い出し、念のために仕事は続けることに。
……にも関わらず、夫は「俺は問題ないはずだから大丈夫!」と言って自分は治療に消極的。タイミング法や排卵誘発剤で妊娠に至らず、卵管鏡下卵管形成術に挑戦した小倉さんは1人、泣きながら吐くほどの痛みに襲われた。
一方、「もうすぐ3歳になる長男が、小学校に上がるまでに見つかればいいな」と思いながら土地探しを始めたところ、条件に合う土地が見つかり、トントン拍子にマイホームの話が決まる。
「当然のことですが、不妊治療もマイホームも、かなり高額な出費になります。特に家に関しては『高級感が欲しい!』と夫が打ち合わせの度に騒ぐのですが、夫の希望と予算との折り合いをつけるのは私の仕事。新たに家のローンを組むため、残っていた車のローンを早く終わらせるため、毎月多めに払うことになりました」
この頃の小倉家の大きな出費は以下になる。
・高級車のローン
・長男の保育料
・高額な不妊治療
・マイホームの頭金
相変わらず飲み会好きな夫には、どんなに家計簿を見せて説明しても、「俺はもっと稼いでる!」と言って譲らない。
この頃の小倉さんは、「もうすぐ給料が上がる」と言い張る夫を信じ、「家さえ建てば、家賃が要らなくなる」と思うことで自分を支えていた。また、3歳からの幼保無償化や不妊治療の終了も考慮しており、負担が減るめどもある程度はつけていた。
不倫発覚夫は長男が3歳のときに出世し、給料が大幅に増えた。その途端、「俺はこんなに稼いでるのに、なんで小遣いがこんなに少ないんだ!」と騒ぎ立てるように。
「散々説明しましたが、お金なかったのは不妊治療とマイホームの頭金にお金がかかったせいです。夫婦共通の通販アカウントで、必要なものは自由に買えていました。家で飲むビール代やガソリン代も家計費から出しています。私はブランドものなんて1個も持っていませんし、化粧品すら薬局のプチプラ商品でした」
この頃から夫は、急に不機嫌になって小倉さんの欠点を挙げ連ねて責め、一方的に「別れる」とわめき散らすなどの変化が見られ始めた。
そんな頃、マイホームが完成し、引っ越しの日を迎える。
マイホームの各種手続きも、頭金の貯金も、もちろん家事・育児も、夫は「仕事だから」とすべて小倉さんに丸投げ。引っ越し当日になっても夫の荷物はまとめられておらず、結局小倉さんが引っ越し屋に謝りながら、夫の荷物をその場でまとめた。
その日の夜は、大げんかになった。夫は「悪いと思っていない」と言い、この日を境にますます態度が悪くなっていく。
13年間夫を見てきた小倉さんは、「不倫をしている」と直感し、探偵事務所に相談。すると、どうやら土日の日勤明けや、泊まり込みの仕事明けに不倫相手の家に行ってることが判明した。
探偵により証拠写真まで抑えた小倉さんだったが、ダメ押しで自白を狙い、夫が泥酔している夜中に不意打ちのビンタでたたき起こし、「〇〇って誰?」と相手の名前をたずねる。それでも夫は「誰だよそれ!」としらを切ったが、「あなたと不貞行為をしてる、☓☓マンションの女性でしょ?」と言うと、不倫を認めた。もちろん、すべて録音していた。
さらに小倉さんは、夫と相手の女性が口裏を合わせる前に、夫にその場で相手の女性に電話させる。相手は同じ部署で働く若い女性だった。
「小倉の妻です。なぜ電話したかお分かりですよね? あなた方が不貞行為をしていたことも把握しています。同じ職場なのですから、既婚者だと知っていましたよね?」
「……」
「知 っ て い ま し た よ ね ?」
「……はい。すみませんでした」
その後、夫は不妊治療を始めた頃から、飲み会の度に、酔った勢いで職場の女性とワンナイトラブを繰り返していたことを自白した。「若い女性から誘われて舞い上がってしまった」と非を認めたものの、最後まで小倉さんに謝ることはなかった。
臨月の妻をおいて夜逃げ夫の不倫が発覚した2カ月後、なんと小倉さんの2人目の妊娠が判明。
渋々夫に伝えると、「もういらないから、堕ろしたいなら堕ろしていいよ」と関心がなさそうに言われ、離婚と中絶を迫られる。
しかし3週間後、世間体と自分が抱える罪悪感を考えたのか「やっぱり中絶はやめよう」と手のひらを返した。しかし夫婦仲は険悪なままだったため、小倉さんは今後のことを話し合おうとする。しかし夫は都合が悪くなると黙りこみ、何を言っても「離婚だ離婚だ」と話にならなかった。
不倫発覚から9カ月ほどたったある晩、パートから帰宅した小倉さんは違和感に気づいた。夫婦で共有していたスケジュールアプリから夫が退会していたうえ、家にあった夫の生活必需品がなくなっている。
職場に問い合わせても根回しされており、子どもを抱えて途方に暮れていると、普段使っていない机の上に置き手紙があるのに気がついた。手紙には以下のことが書かれており、小倉さんは絶句。
・君は僕の母の悪口を言った
・君とは話し合いができないから、出ていくしかなかった
・職場に来たら警察を呼ぶ
話し合いに関しては既出の通り、拒否していたのは夫の方だった。義両親との関係は、夫の不倫までは良好。だが不倫した夫を義両親がかばったことで関係が悪化。職場に来たら警察……は民事不介入に反する。
しかも夫はありったけの現金やカード類と車を持って、夜逃げしたのだった。
「すべてがうそと被害妄想まみれ、かつ幼稚すぎてクラクラしました。取りあえず弁護士を予約したものの、お金や子どものことで不安になり、長男が寝た後に夜通し泣き続けましたが、翌朝、泣いてる場合じゃない! 出産は待ってくれない! と思い、動き出しました」
役所の子ども相談窓口に電話し、夫が全財産を持って夜逃げしたこと、そして自分は臨月を迎えていること、母親が毒母なので頼れないことを相談。すると職員は、すぐに自宅まで来て話を聞き、出産時の入院期間中と出産後は、児童相談所の緊急保護を利用できることとなった。
大人になりきれない夫1回目の調停は、小倉さんは産後2週間で動けなかったため、弁護士に代理を依頼。
夫は「金銭的な苦労はかけない」と手紙に書いていたにも関わらず、婚姻費用と養育費を基準額より10万円も低い金額で提示してきた。さらに離婚調停では、不貞行為に関して「1回限りだった」とうそをついたと言う。
「相手女性が一定期間の不倫を認めた合意書があるので、どう考えても1回は無理がありますし、そもそも回数の問題ではありません。その後、次の調停を前に一部生活費が振り込まれたところを見ると、夫は『不貞行為』を働いた有責配偶者ではあり、そこに生活費を払わないという『悪意の遺棄』が積み重なると、さらに裁判で不利になるということは分かっているみたいです」
まだ離婚が確定していない現在、夫が小倉さん妻子に払うべきお金は、
・離婚しない場合 → 妻と子の生活保障(婚姻費用)
・離婚する場合 → 子の生活保障(養育費)のみ
となり、小倉さんの場合、この2つで10万円ほど差が出るという。
「さらに離婚原因を作った有責配偶者からは、原則として離婚請求できません。夫が離婚したければ『相手に有利な条件を出して、離婚を認めてもらえるよう交渉する』しかないでしょう。だから弁護士さんから『離婚は急がなくていい』と言われました」
小倉さんは離婚不受理届も出しているため、夫が勝手に離婚届を提出することもできない。ただ、10年以上別居すれば、有責配偶者から離婚請求できる場合もある。しかしそれは、小さい子どもがいない場合が原則だ。
「次男はまだ生まれたばかり。10年たってもまだ10歳では、夫から離婚請求されても認められない可能性が高いです。なので夫は、妻子の生活費+家のローン+夫自身の生活費の“三重苦”が確定しています。私が離婚を突っぱねる限り、最低でも10年は極貧生活が続くわけです」
ただ「不倫がバレて、肩身が狭いし自由が利かないから」という理由で家を飛び出した夫……。
夫の言動からは、大人になりきれていない身勝手さがあふれでている。両親から甘やかされて育ち、毒母育ちの小倉さんが夫のワガママを受け入れ続けてしまったために、夫は40歳手前まで自分の幼さに気づかずに来てしまったのだろう。
「もう、そんな勝手は許しません。私はまず母子の心身と生活基盤を整えて、それから離婚条件についてゆっくり考えたいと思います」
旦木 瑞穂/ジャーナリスト・グラフィックデザイナー
愛知県出身。アートディレクターなどを経て2015年に独立。グラフィックデザイン、イラスト制作のほか、終活・介護など、家庭問題に関する記事執筆を行う。主な執筆媒体は、プレジデントオンライン『誰も知らない、シングル介護・ダブルケアの世界』『家庭のタブー』、現代ビジネスオンライン『子どもは親の所有物じゃない』、東洋経済オンライン『子育てと介護 ダブルケアの現実』、毎日新聞出版『サンデー毎日「完璧な終活」』、日経ARIA「今から始める『親』のこと」など。著書に『毒母は連鎖する〜子どもを「所有物扱い」する母親たち〜』(光文社)がある。
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