HOYAが3年ぶり高値 半導体を支える「意外な世界トップシェア製品」とは
Finasee / 2024年4月2日 17時0分
Finasee(フィナシー)
株式市場でHOYA(ホーヤ)が注目を集めています。半導体が関心を集めており、半導体ブランクス(半導体用フォトマスクの部材)で高いシェアを持つHOYAにも買いが向かっているようです。株価は2021年9月の高値(1万9435円)を更新し、2024年3月には一時2万円を突破しました。
【HOYAの業績】
売上高 純利益 2022年3月期 6615億円 1645億円 2023年3月期 7236億円 1686億円 2024年3月期(予想) 7560億円 1660億円※2023年3月期(予想)は同第3四半期時点における同社の予想
出所:HOYA 決算短信(外部リンク)
出所:Investing.com(外部リンク)より著者作成HOYAはメガネレンズやコンタクトレンズのメーカーとしてよく知られます。しかし、実はエレクトロニクスの分野で高いシェアを持つ企業でもあります。2023年7月には収益性と市場評価性(PBR基準)から「JPXプライム150指数」にも採用されました。
HOYAとはどのような企業なのでしょうか。事業内容や業績を押さえましょう。また積み上がったキャッシュの使い道について、HOYAの方針も紹介します。
メガネレンズと医療機器が柱 「アイシティ」も運営HOYAは光学機器やガラス製品のメーカーです。1941年に光学ガラスメーカーとして設立しました。社名は創業地の保谷町(ほうやちょう、西東京市)に由来します。
主力製品はメガネレンズやコンタクトレンズ、医療用の内視鏡です。半導体やディスプレイ、HDD(ハードディスクドライブ)といったエレクトロニクス製品向けの精密部材も手掛けています。またコンタクトレンズの小売店「アイシティ」の運営も行っています。
【セグメント情報(2023年3月期)】
主な製品 セグメント売上高 ライフケア メガネレンズ、コンタクトレンズ、内視鏡、医療用処置具 4746億円 情報・通信 半導体用ブランクス、
フォトマスク(半導体、FPD)、
HDD用ガラス基板、カメラレンズ 2443億円 その他 音声合成ソフト、情報システム 46億円
※FPD:フラットパネルディスプレイ
※HDD:ハードディスクドライブ
出所:HOYA 決算短信(外部リンク)
売り上げの7割は海外が占めています。アジアや太平洋地域の比率が大きくなっていますが、欧州や米州でもそれぞれ全体の20%前後を占めており、特定の地域への依存は小さめです。円高が1%進んだ場合の為替感応度は、2023年3月期では対米ドルで4.6億円の減益、対ユーロで0.3億円の減益、対タイバーツで2.8億円の減益でした(出所:HOYA 有価証券報告書(外部リンク))。
【地域別売上高(2023年3月期)】
・日本:1700億円(23.5%)
・米州:1272億円(17.6%)
・欧州:1444億円(20.0%)
・アジア、太平洋:2711億円(37.5%)
・その他:107億円(1.5%)
※()は構成比
出所:HOYA 決算補足資料(外部リンク)
上場以来赤字ゼロ 高収益のエレクトロニクス向けが利益を支えるHOYAは1961年に東証二部市場に上場し、1973年に東証一部へ指定されました。東証一部に上場してからは赤字になったことがありません(現在は東証プライム市場に上場)。
HOYAの利益を支えるのがエレクトロニクス向けの製品です。セグメント別利益で最大の情報・通信セグメントには、半導体やディスプレイの製造に用いられるフォトマスクやHDD用ガラス基板などが含まれます。収益力に強みがあり、売り上げのおよそ半分は利益です。
【セグメント利益(2023年3月期)】
セグメント利益 セグメント利益率 ライフケア 943億円 19.9% 情報・通信 1197億円 49.0% その他 9億円 20.3%出所:HOYA 決算短信(外部リンク)
利益率に貢献していると考えられるのが高いシェアです。
HOYAはエレクトロニクス向け製品で世界トップクラスのシェアを持ちます。半導体用ブランクスやフラットパネルディスプレイ用のフォトマスク、HDD用基板のガラスサブストレートなどが代表的です。特にEUV(極端紫外線)向け半導体用ブランクスとHDD用ガラスサブストレートは圧倒的なシェアを持つとみられています。
【HOYAの主な世界シェア首位の製品(2022年度)】
・半導体用マスクブランクス
・FPD用フォトマスク
・HDD用ガラスサブストレート
・ガラス非球面モールドレンズ
※FPD:フラットパネルディスプレイ
※HDD:ハードディスクドライブ
出所:HOYA 2023年統合報告書サイト(外部リンク)
競争で優位に立つHOYAはライバルの脅威が小さく、同社の高い利益率につながっていると考えられます。
積み上がるキャッシュ M&Aで成長を目指すHOYAは財務も良好です。資産に占める現金の割合が高く、有利子負債は抑制的です。また株主資本比率は80%に達しています。
なお「現金の7割ほどをドルで持っていて、外貨全体では比率がさらに高い」と説明していることから、キャッシュの増加は円安も手伝っていると考えられます(出所:HOYA 2024年3月期第2四半期 決算説明会トランスクリプト(外部リンク))。
【HOYAの財務(2023年末)】
総資産 1兆1010億円 現金および現金同等物 4505億円 負債 2267億円 有利子負債 260億円 株主資本 8808億円 株主資本比率 80.0%出所:HOYA 決算短信(外部リンク)
出所:Investing.com(外部リンク)より著者作成現金が積み上がっていることから、その使い道に関心が寄せられています。2024年3月期第3四半期の決算説明会では、現金の使い道について「成長投資のためのM&Aを第一に考えている」と従来からの方針を説明しました(出所:HOYA 2024年3月期第3四半期 決算説明会トランスクリプト(外部リンク))。
HOYAはM&Aで成長してきた企業でもあります。2000年に沖電気工業から半導体フォトマスク製造事業を、2004年に日本板硝子からHDD用ガラス基板事業を買収しました。また2007年にはペンタックスを子会社化し、内視鏡やカメラなどの映像事業を取得しています(ペンタックスは2008年3月に吸収され消滅)。
近年は海外M&Aも積極的です。2016年に米3M社から保護メガネ事業を買収しており、2019年には白内障の治療用機械などを手掛ける米Mid Labs社と独Fritz Ruck社を取得しました。
次はどのようなM&Aを展開するのでしょうか。投資家の期待が高まっています。HOYAは財務規律に照らしM&Aを進めるとしています。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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