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日銀がマイナス金利解除―でも住宅ローン「変動金利」は上がらない可能性も? その理由は…

Finasee / 2024年3月28日 17時0分

日銀がマイナス金利解除―でも住宅ローン「変動金利」は上がらない可能性も? その理由は…

Finasee(フィナシー)

日銀がマイナス金利の解除を決定しました。

「マイナス金利」とは、銀行が日銀に預けてあるお金の一部に適用される金利をマイナスにするというものです。

金利は基本的にお金を借りる側が、お金を貸す側に対して支払うものですが、この金利をマイナスにすると、お金を貸す側が、お金を借りる側に利息を支払うことになります。これは、どう考えても理屈に合わない話であり、そんなことを日本においては2016年2月から、8年間にもわたって継続してきたのです。

なぜ、そんな理屈に合わない金融政策を長々と続けてきたのかというと、それ以前から消費者物価指数の上昇率を2%にするため、大規模金融緩和を実施したにも関わらず、一向に物価が上昇へと転じなかったからです。そのため日銀は、金融緩和の効果をさらに高めようとして、マイナス金利政策を実行に移しました。

マイナス金利といっても、個人にはそれほど大きな影響はなかったはずです。強いて挙げれば、普通預金利率が年0.02%から年0.001%に下がった程度でしょうか。100万円を1年間預けた時の利息が、年200円から10円になっただけなので、ほとんどの人は意識することもなかったはずです。

逆に、今回のマイナス金利解除が報じられた直後から、三菱UFJ銀行と三井住友銀行、PayPay銀行は、その日のうちに普通預金利率の引き上げを発表したものの、その利率は、年0.001%から年0.02%、もしくは0.03%になっただけです。

確かに、ニュースなどでは「普通預金利率が20倍に」などと、大げさな報じられ方がされていましたが、100万円を1年間預けて得られる利息が、10円から200円、300円になっただけのことです。

つまりマイナス金利が導入された時と同じように、マイナス金利が解除されたといっても、預貯金に置いてあるお金が、適用利率の引き上げで大きく増えるようなことにはならず、したがって大半の人にとっては、何の経済的なメリットもないのです。

住宅ローン「変動金利型」には、いきなり返済額が増えない仕組みがある

今回の短期金利におけるマイナス金利の解除で、何となくざわついているのは、住宅ローン界隈でしょう。

昨年10月31日に、YCCにおける長期金利の上限となる1%を超える取引を容認した時は、「長期金利の上昇は変動金利型住宅ローンの金利には影響しない」ことが、しっかりアナウンスされたこともあって、大きな騒動にもならなかったのですが、短期金利のマイナス金利が解除されると、変動金利型住宅ローンの適用利率が見直される可能性が生じてきます。

なぜ、マイナス金利が解除されると、変動金利型住宅ローンの適用利率が見直される可能性が高まるのかというと、変動金利型住宅ローンは短期金利を基準にしているため、短期金利の指標である「短期プライムレート」に連動して、その金利水準が決まるのが一般的だからです。

したがって、今回のように短期金利のマイナス金利を解除するとなれば、短期金利の水準が上方修正されるのと共に、短期プライムレートが上昇し、それによって変動金利型住宅ローンの適用利率も引き上げられる可能性が高まってくるのです。

とはいえ、変動金利型住宅ローンには、「5年ルール」や「125%ルール」によって、いきなり月々の返済額が急増しないような仕組みが設けられています。

5年ルールは、その間に住宅ローン金利が上昇したとしても、5年間は月々の返済金額が同一で、6年目から引き上げられるというルールです。いきなり返済額が引き上げられるわけではないので、その間に心の準備だけでなく、実際にどのような対処をするのかを決められます。

とはいえ、この5年間の金利上昇が非常に著しい場合など、「6年目以降の返済額が急増したらどうしよう」と考える人もいらっしゃるでしょう。

ここで効果を発揮するのが「125%ルール」です。これは、たとえ大幅に金利が上昇したとしても、月々の返済額が25%を超えて増えることはない、としたルールです。

この2つのルールが設けられているので、金利が上昇したからといって、変動金利型住宅ローンの金利も大幅に増えることはありません。

ただし、この2つのルールによって、月々の返済金額の増加がある程度、抑えられたとしても、返済の総額が減るわけではありません。住宅ローンは原則として、返済期間の延長が認められていません。35年で住宅ローンを組んだとして、残債があるからという理由で36年に延ばすことは認められないのです。

もし、金利が上昇した分、返済金額が増えたことによって、返済期間が終了する段になっても残債がある場合は、返済期間の終了時に元金と未払い利息の一括返済を求められることになります。

固定金利型への乗り換えに潜む注意点

金利上昇による住宅ローンの返済額増加で泣かないようにするためには、固定金利型に乗り換えるという手があります。

しかし、金利の予測は非常に難しいことをまず理解してください。将来的に、金利がどんどん上昇していく局面なら、固定金利型住宅ローンに乗り換えるのも有効でしょう。

ただし、同じ時期の変動金利型住宅ローンと固定金利型住宅ローンの適用利率を比較すると、基本的に固定金利の方が高くなります。あくまでもおおよその話ですが、変動金利型に比べ、固定金利型は1%程度、上乗せされると考えて良いでしょう。かつ金利のタイプを変更する際には、手数料を徴収する金融機関もあります。

したがって変動金利型から固定金利型に乗り換えるには、今後、変動金利型のままだと1%超、適用利率が上がることを前提にしないと意味がありません。

では、どの程度、変動金利型の適用利率は上昇するのでしょうか。

実は、マイナス金利が解除されたとしても、変動金利型住宅ローンの適用利率は、それほど上がらないということも考えておく必要がありそうです。というのも、2016年2月にマイナス金利が導入された時、短期プライムレートの最頻値は、それ以前から適用されている年1.475%のまま変わらなかったからです。

したがってこの先、よほど短期金利が上昇しない限り、短期プライムレートが見直されることはなく、変動金利型住宅ローンの適用利率も上昇しない、と考えることができます。

インフレ率を見ると、徐々に落ち着きを取り戻している感もあります。これらの観点から考えると、日銀のマイナス金利の解除によって、泣く人も笑う人もいない、淡々とした状況が、しばらく続くのではないでしょうか。

鈴木 雅光/金融ジャーナリスト

有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。

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