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株式急騰はバブルか実力か? 市場占うポイントを人気エコノミスト永濱氏が解説!

Finasee / 2024年4月1日 7時0分

株式急騰はバブルか実力か? 市場占うポイントを人気エコノミスト永濱氏が解説!

Finasee(フィナシー)

今年のマーケットを振り返ると、市場参加者を沸かせたのが日経平均株価の最高値の更新です。年明け以降、堅調だった先進国株の中でも日本株の上昇が顕著ですが、背景にあるのは円安です。昨年11月から米国の利下げ観測が強まり、長期金利もピークアウトしました。日米の金利差は為替レートの原動力のため、ドル円も140円台前半まで円高に振れました。しかし年明け以降、想定よりも米国の雇用や物価の統計が強いことから、織り込みすぎた利下げ観測の巻き戻しで円安になっています。

今後もこの株高の流れが継続するかは5月に発表されるNVIDIAの決算結果にもよるでしょう。AI関連銘柄とされる同社ですが、日経平均の最高値更新のきっかけになるなど、個別企業の業績がここまで市場全体に影響を及ぼすのは珍しいことです。これまでは期待を上回る業績を上げてきた同社ですが、逆にいつ期待を下回るかがマーケットの調整局面を占ううえでポイントになりそうです。

ソフトランディングに向かうか、世界経済のマクロ動向

マクロ的な注目点はやはり米国の金融政策です。昨年の急速な利下げ観測の背景にはインフレ減速がありました。FRBのインフレ目標2%のターゲットであるPCEデフレーターでも、直近半年だと対前年比で2%程度まで下がっており、現時点では年3~4回の利下げというのがコンセンサスです。

早期利下げ観測は後退したものの、さすがに景気が再加速して利上げに至るという見通しはあまり見かけません。2022年来の急速な利上げを経験して、マクロの景気指標もそれほど強くないからです。主要国の経済見通しでも、今年の米国は経済減速が大勢ですが、あくまでソフトランディングに落ち着くというのがコンセンサスです。

各国の経済見通しで一番弱いのはユーロ圏で0%半ば。特にドイツはロシアに対する経済制裁の影響で天然ガスの調達が困難になり、経済に相当なダメージを受けています。インフレは落ち着いて米国以上に景気がさえないので、ユーロ圏の金融政策は基本的に米国の後追いになりそうです。

中国は経済成長率こそ4%台と高そうですが、不動産バブルが崩壊したことでデフレの入り口に立っています。本当は大胆に金融緩和したいところですが、資本流出に拍車をかけるのでそれも困難です。若年層の失業率は20%を超え、不動産バブル崩壊から長期停滞に陥った30年前の日本と構図が似通っています。

金融政策正常化に踏み出す日銀の次なる一手は

日本の状況を見ると2024年度の経済成長率は0%台半ばの見通しですが、それほど減速感はありません。22~23年度はコロナによる落ち込みからの反発があったからです。日本の潜在成長率が0%台半ばであることからみても、それほど悪い数字ではないでしょう。

国内投資家のみならず世界からも注目される日銀の動向ですが、マイナス金利から脱却する前にイールドカーブ・コントロール(YCC)の撤廃を考える必要があります。これに関しては、2022年来から柔軟化を進める中でもはや形骸化しており、次なる正常化の一手はマイナス金利解除となるでしょう。

そこでキーワードになるのが物価と賃金の好循環なのですが、どのような状況になればそれが達成されたと日銀は判断するのでしょうか。昨年のCPIコアのインフレ率は平均3%に達し、一見するとインフレ目標の2%を超えています。しかし、その3分の2は円安や原材料価格高騰が要因の食料品の値上げによるもので、これでは好循環とはいえません。

国民目線でわかりやすい好循環は実質賃金がプラスになることです。現在、名目賃金はプラスですが、それ以上の物価上昇によって実質賃金はマイナスが続いています。昨年の春闘では30年ぶりの大幅な賃上げがあったはずですが、名目賃金はそれほど伸びていません。よい人材を採用するために表向きは基本給を上げたものの、その分ボーナスを抑制している企業が少なくないからです。それに加えて、労働時間の規制強化による残業代の押し下げ圧力もあります。今年の春闘賃上げ率が4%を大きく上回れば、年内にも実質賃金がプラスに転じる可能性もあります。

日銀がマイナス金利解除に動けるもう1つの理由は、実体経済への影響が限定的なことです。そもそも利上げが経済に影響を与えるのは、短期プライムレートが上がることで、住宅ローンや企業融資の金利が上がるからです。しかし、マイナス金利導入時に短期プライムレートは下がっていないので、解除しても短期プライムレートには変化がないため実体経済にも影響はそれほどないと言えます。

そもそも、マイナス金利導入のきっかけは円高リスク軽減ですが、今や円安が行き過ぎていますから、解除のハードルは日銀にとってそこまで高くないでしょう。しかしその先の追加利上げになると、短期プライムレートも上がると予想されるので、年内は難しいと思います。実質賃金はそこまで伸びないでしょうし、欧米が利下げサイクルに入る中で日本だけが利上げを行うという判断もとりづらいからです。

今年最大のイベントである米大統領選と世界経済見通し

今年は世界的に選挙が目白押しですが、やはり11月の米国大統領選・議会選は市場関係者にとっても外せないイベントです。現時点では民主党のバイデン氏が再選を目指し、対抗馬は共和党のトランプ氏という構図になっています。前回、前々回の大統領選もそうですが、どちらかが勝つかは正確には読めません。そうなると、どちらが大統領になったときに何が起こるかを押さえておくことが重要です。バイデン氏再選の場合、議会がねじれる可能性が高いので、特に大きな変化はなく、マーケットへの影響は限定的でしょう。

トランプ氏が勝つシナリオについては、上下院とも共和党が過半数を握れば、減税期待が高まり短期的にマーケットはリスクオンになる可能性があります。

一方でトランプ政権の復活がリスクとなるのは外交です。国際紛争が多発する中で、トランプ政権になれば米国の関与の低下が懸念されます。ウクライナの支援が細ってロシアが勝利すれば、台湾有事の可能性が高まり国際秩序が乱れるかもしれません。また利下げ圧力や移民排斥はインフレ再燃につながる恐れがあります。

世界経済を見通す上では、米国経済がソフトランディングか、ハードランディングかによっても大きく左右されます。前者の可能性が高いと見ていますが、たとえば、商業用不動産などでリスクもあります。ソフトランディングならば、株価が上値を試す局面はまだまだあるでしょう。足元の日経平均株価は34年前とは違い、バリュエーション的にも企業業績の裏付けがあるので、バブル崩壊のような暴落は考えにくいです。

欧米の金利に関しては低下する方向でしょうが、その下げ幅がどの程度になるかが問題です。一方で日銀がマイナス金利解除後の追加利上げをしないならば、海外金利の押し下げ圧力もあるので、国内の長期金利は0%台後半くらいにとどまると思います。

為替はこの先、円高圧力がかかりますが、大幅な円高には振れず、ドル円は140円前後が中心のレンジになりそうです。リセッションになればFRBの利下げ幅は大きくなり130円を割ってもおかしくありませんが、それでも過去の水準から見れば円安です。

為替のレンジは一昔前に比べたら相当円安に振れていますが、これは円とドルのマネタリーベースでも説明することが可能です。リーマンショック以前、日本と欧米は同程度の通貨供給量でした。しかしその後、日本の量的緩和が遅れた結果、東日本大震災時にはドルの供給量は円の2.5倍もあり、1ドル80円割れを記録しました。しかしアベノミクス以降、日本も量的緩和が進み、足元ではドルの1.2倍くらいまで円が増えています。アベノミクス以前は80~130円が中心的なレンジだったのに対し、今は100~150円です。円高に振れにくいという意味では資産運用にはプラスであり、こうした構造変化も重要なポイントです。

オルイン編集部

「オルイン」は、株式・債券といった伝統資産はもちろん、ヘッジファンドやプライベートエクイティ、不動産といったオルタナティブもカバーする、国内随一の機関投資家向け「運用情報誌」。2006年の創刊以来、日本の年金基金や金融法人、公益法人といった機関投資家の運用プロフェッショナルに対し、その時々のタイムリーな話題を客観的かつ独自の視点でわかりやすくお伝えしています。

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