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大人気で売れすぎた結果、「販売停止」になった投資信託がある!? その理由は…

Finasee / 2024年4月15日 11時0分

大人気で売れすぎた結果、「販売停止」になった投資信託がある!? その理由は…

Finasee(フィナシー)

「いつでも」「いくらでも」買える投資信託は資産形成の強い味方

投資信託の魅力の一つは、需要量と供給量に関係なく、原則として好きなタイミングで購入も解約もできるという点にある。NISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)など、個人の老後資産形成を後押しする公的な制度が、投資信託の積み立てを前提に設計されているのは、このようにあらかじめ指定した日に指定した金額分だけを購入できるという投資信託の特性が関係している。

ところが、その投資信託も買いたいときに買えなかったり、まれに「売り切れ」状態になったりすることがあるということをご存じだろうか。決して頻繁に起きるわけではないが、長期にわたって投資信託と付き合っていく上では、今後、遭遇する可能性もあるため、知識の一つとしてぜひ覚えておいてほしい。

購入・換金申し込み受付中止の最終的な決定権は運用会社にある

一般的に、投資信託の目論見書の「お申し込みメモ」ページには、購入前に確認すべき重要事項が項目別に記載されている。この中の「購入・換金申し込み受付の中止及び取消し」という項目には、どの投資信託にも、以下のような記載がある。

「取引所等における取引の停止、外国為替取引の停止、決済機能の停止、その他やむを得ない事情があるときは、委託会社は、受益権の取得申し込み・換金請求の受付を中止すること、およびすでに受け付けた取得申し込み・換金請求の受付を取り消すことができます。」

上記の大きなポイントは、取引所が停止したり、やむを得ない事情に見舞われたりした場合に、「運用会社の判断で」購入や換金(解約)の受付を停止できるという点にある。

例えば、投資対象地域において非常事態(台風を含む自然災害、金融危機、クーデターをはじめとした政治体制の変更など)が発生すると、取引所が停止されることがあるが、こうした事態が起きた場合でも、投資信託の購入・換金の受付を停止するかどうかの最終的な判断はあくまでも運用会社に委ねられている。

では、この「その他やむを得ない事情」にはどのようなものが含まれるのだろうか。

運用会社が投資信託の新規の購入受け付けを停止する「やむを得ない事情」の典型例は、「資金流入の急増」である。つまり、人気が出て売れすぎてしまった結果、残高が増え、適正な資産規模での運用が維持できなくなる恐れがあるときに販売を停止する。

最近では、SBI岡三アセットマネジメントが、2024年2月7日を最終日として、同社が運用する「日本好配当リバランスオープン」の新規の購入と積立の申し込みを一時停止した(既に設定済みの積立は、これまで通り継続が可能)。

1月31日に公表されたリリースには、「(当ファンドの)純資産規模を運用可能な適正範囲に維持するため」と、一時停止の理由が記載されていた。換金(解約)はこれまで通り受け付けるため、今後、残高が自然に減少していけば、新規の購入受付が再開される可能性はあるが、SBI岡三アセットマネジメントは3月15日、後継ファンドとして「日本好配当リバランスオープンⅡ」の運用を開始した。なお、既存ファンドの購入受付再開を待たずして後継ファンドが設定されるケースは極めてまれである。

適正な資産規模を保つことの重要性

以上の通り、投資信託の資産規模=残高には適正な水準があり、必ずしも「大きければ大きいほど良い」というわけではない。

そもそも投資信託には、信託金限度額という上限額が銘柄ごとに約款で定められている。信託金限度額は投資対象や運用手法によって異なり、大きいもので数兆円単位、小さいものだと百億円程度に設定されており、ファンド間で開きがある。運用会社はファンドの純資産残高が信託金限度額に近づくと、販売を一時的に停止したり、限度額を引き上げたりという措置を取る。限度額を大きくしても運用に支障がないと運用会社が判断した場合は、アクティブファンドでも数兆円単位まで引き上げることもある。

例えば、「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」シリーズを運用するアライアンス・バーンスタインは、2020年以降、複数回にわたり同シリーズの信託金限度額の引き上げを行ってきた。人気のDコース(毎月決算型、為替ヘッジなし)の信託金限度額は2024年4月現在、2兆5000億円である。

積立投資している投資信託が「売り切れ」になったら?

では、自分が保有する投資信託の人気が出て「売り切れ」状態となった場合、どうしたらよいのか。

先述した、適正な運用資産規模を維持するための販売停止であれば、大きな心配は必要ない。というのも、販売停止措置が取られても、換金(解約)は通常通りに行えることが多いためだ。解約は自由にできるため、自身の投じた資金が「凍結」されるようなことは基本的にないと考えてよい。

ただし、「投資対象地域で非常事態が発生した場合」においてはこの限りではない。例えば、ウクライナ侵攻をめぐって世界各国から経済制裁を受けたロシアは、株式市場の機能が事実上停止し、日本で展開されているロシア関連の投資信託にも影響が及んだ。この場合、そもそも市場が正常に機能しておらず、基準価額すら算出できないため、投資信託の解約も制限され、資金が事実上「凍結」された状態となる。こうした、流動性の極端な低下に伴う販売停止は、人気が出て「売り切れ」の状態になるのとは根本的に性質が異なるため注意が必要だ。

なお、積立の取り扱いについては、個々のファンドや運用会社によって対応が分かれる。先述の「日本好配当リバランスオープン」をはじめ、既に設定している積立についてはそのまま継続できることが多いが、ファンドによっては、積立による購入も制限されることがある。

繰り返しになるが、短期間のうちにファンドの人気が出て「売り切れ」の状態になったとしても過度に心配することはない。ただし、まれに積立も停止されることがあるため、販売会社経由でお知らせ(レター)が公表されたときは、その内容を必ず確認するようにしてほしい。

篠田 尚子/楽天証券資産づくり研究所 副所長 兼 ファンドアナリスト

慶應義塾大学卒業後、国内銀行を経て2006年ロイター・ジャパン入社。傘下の投資信託評価機関リッパーにて、投信業界の分析レポート執筆、評価分析などの業務に従事。2013年、楽天証券経済研究所入所。日本には数少ないファンドアナリストとして、評価分析業務の他、資産形成セミナーの講師も務めるなど投資教育にも積極的に取り組む。近著に『【2024年新制度対応版】NISA&iDeCo完全ガイド』(SBクリエイティブ)。

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