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知らずに退職・転職をして損する人が増えている! 企業年金の勘違いが招く「残念な結末」

Finasee / 2024年4月22日 11時0分

知らずに退職・転職をして損する人が増えている! 企業年金の勘違いが招く「残念な結末」

Finasee(フィナシー)

定年や60歳になる前に転職・退職をする人は、辞めた会社で加入していた企業年金をどうしていますか? 「数年で辞めたから金額も少ないしどうしようもない」とか「辞めたらもらえないでしょ」などと思い込んでいませんか?

会社が企業年金として積み立てていたお金は、会社のものではなく、従業員個人の年金資産です。会社を辞めたからと言って消滅するものではありません。「もらえない」と思って放置すると、せっかくの年金資産がどんどん減ってしまいます。今回は、転職・退職時に自分でするべき企業年金の手続きや、放置した場合のデメリットについて調べた結果を報告します。

転職・退職時に知っておきたい「企業年金の行方」

会社員のなかには、転職を経験したことがあるという人も少なからずいるでしょう。では、会社を辞めたとき、辞めた会社で加入していた企業年金をどうしたか、覚えているでしょうか?

企業年金のうち、確定給付企業年金(DB)や厚生年金基金は、勤務3年以上で中途退職すると、脱退一時金が支給されます。このタイプに加入していた人は、退職時に一時金の支給を受けたかもしれません。わずかでも一時金をもらった人は、それで転職前の企業年金は精算済みになります。

一方、企業型確定拠出年金(DC)は、中途退職をしても、原則として60歳になるまで年金資産を引き出せません。

企業型確定拠出年金(DC)は手続きが必要!

企業型確定拠出年金(DC)の年金資産は、自分で手続きをして、転職先の会社の制度や個人型確定拠出年金(iDeCo)などの他の制度に持ち運ばなければならないのです。企業年金の持ち運び(ポータビリティ)が可能なパターンは、下記の厚生労働省のホームページでご確認ください。

●参考:厚生労働省「離職・転職時等の年金資産の持ち運び(ポータビリティ)」(外部リンク)

上記リンク先の表を見ると、確定給付企業年金(DB)も、退職時に一時金を受け取らず、転職前の会社と転職後の会社の規約によっては、年金資産を新しい勤務先の確定給付企業年金に移すことが制度上は可能になっています。ただし、実施している企業は現在のところあまり多くはないようです。

転職先の会社の制度が企業型確定拠出年金(DC)だったという場合は、DBの脱退一時金を企業型確定拠出年金(DC)に移換できます。転職先に企業年金制度がない場合は、iDeCoや通算企業年金(年金資産を企業年金連合会に移換して、原則65歳以降に終身年金を受け取る制度)に移換する方法があります。

また50歳以上で20年以上勤めた人など、長期勤続者の確定給付企業年金(DB)や厚生年金基金は、元の会社で資産を預かってもらい60歳以降にもらえる場合もあります。この場合は、将来、請求し忘れない限り大事には至りません。

うっかり忘れに注意! 企業型確定拠出年金(DC)の持ち運び

転職時や退職時に手続きが必要になるのは、企業型確定拠出年金(DC)の加入者です。転職前の会社で企業型確定拠出年金(DC)に加入していた人が、他の会社に転職した場合、次のようなパターンが考えられます。

【転職先の会社に企業型DCがある場合】

①転職先の企業型DCに加入し資産を移換
②転職先の企業型DCに加入せずiDeCoに資産を移換
③転職先の企業型DCに加入せず通算企業年金に資産を移換

【転職先の会社に企業型DCがない場合】

①iDeCoに資産を移換
②通算企業年金に資産を移換

【転職先の会社の制度が確定給付企業年金(DB)だった場合】

①転職先のDBに資産を移換(転職先に受け入れる規約がある場合のみ)
②iDeCoに資産を移換
③通算企業年金に資産を移換

これらの選択肢のうち、「通算企業年金」を選んだ場合は、その後積み立てはできません。ただし、いったん通算企業年金に移管した資産も、企業型DCやiDeCoに移換することが可能です。

注意したいのは、企業型DCにはDBのような、60歳になるまで元の会社が資産を預かってくれる制度はないということです。何かしらの制度への移換手続きを必ず自分でしなければなりません。しかし、転職前に企業型DCに加入しているという自覚がない人や、ポータビリティについてよく理解していない人もいて、企業型DCの資産が放置されてしまうケースがかなりあります。

企業型DCは、転職や退職で加入者資格を失ったとき、手続きせずに6カ月過ぎると、年金資産は現金化され、国民年金基金連合会に自動移換されてしまいます。これが、かなりのデメリットになります。

知らないと年金資産が減る続ける「残念な結末」に…

自動移換のデメリットとして次のことが挙げられます。

①自動移換時に4348円が手数料として年金資産から差し引かれる
②自動移換されている期間管理手数料として毎月52円年金資産から差し引かれる
③現金化され資産の運用がされない
④自動移換中の期間は、通算加入者期間にカウントされないため、受け取り可能年齢が遅くなる可能性あり
⑤再び企業型DCやDBに移換する場合は1100円の手数料がかかる
⑥60歳以降に受け取るためにはiDeCoへの移換が必要で3929円の手数料がかかる

自動移換されると、運用されないばかりか、手数料が毎年差し引かれるため、せっかく積み上げた年金資産が少しずつ減ります。

これほどのデメリットがあるにもかかわらず、企業型DCの普及に伴い、自動移換者も増加しているとのこと。「令和4年度国民年金基金連合会業務報告書」によると、令和5年3月31日現在の自動移換者は66万1528人(資産額0円を含む自動移換者は118万3061人)で、管理資産額は2818億9700万円にものぼります。そのうち、令和4年度に新規自動移換された人が15万227人おり、その資産額だけで565億8200万円となっています。

これだけの年金資産が宙に浮いたような状態になっているとは、もったいないとしか言いようがありません。

心あたりのある人はすぐにアクションを!

国民年金基金連合会では、増加する自動移換者対策として、自動移換時および年1回、手続き奨励の通知を行っています。郵便物が来ていないか確認してください。

また、自動移換者縮小に向けた取り組みとして、自動移換者で新たにiDeCoや企業型DCの加入者になったことが確認できた場合は、本人が移換の申し出をすることなく、移換処理が行われるといった手続きの簡素化も行われているようです。

自動移換者には「資産0」という人が約52万人いますが、これらの人は自動移換中の手数料はかかりません。加入期間等の情報のみが管理されている状態です。これらの人も申し出ることで、今後新たに企業型DCやiDeCoに加入したとき、過去の加入期間が通算され、受け取り可能年齢が早まる場合があります。

過去に転職や退職した経験があり、その当時企業年金があったかどうか記憶にないという人は、もしかすると企業型DCが自動移換され、年金資産が眠っているかもしれません。

心あたりがある方は、国民年金基金連合会が委託した特定運営管理機関が運営する自動移換者専用コールセンターに問い合わせを行ってください。手続きを取って年金資産をiDeCo等に移換すれば、再び積み立てや運用ができます。早めにアクションを起こしましょう。

参考:国民年金基金「令和4年度 国民年金基金連合会業務報告書」
参考:厚生労働省「離職・転職時等の年金資産の持ち運び(ポータビリティ)」

加茂 直美/フリーライター・行政書士

主に年金、老後資金、行政手続きなどの細かい情報をリサーチし生活に活かすための記事を執筆。行政書士。2級DCプランナー。行政書士事務所オフィスリーガルブレーンを主宰。『役所や会社は教えてくれない! 定年と年金 3つ年金と退職金を最大限に受け取る方法』(大江加代 監修/ART NEXT)『アメリカ人が当たり前に知っているお金のこと全部』(西村隆男 監修/宝島社)『60歳からの得する年金!働きながら「届け出」だけでお金がもらえる本 2023-2024最新版』(小泉正典 監修/講談社MOOK)などの取材、企画、構成、執筆等を担当。

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