新NISAスタートから3か月、ネット証券でトップのeMAXIS Slim「オルカン」人気はまだまだ続く
Finasee / 2024年4月9日 16時0分
Finasee(フィナシー)
SBI証券のランキング5位は「iFreeNEXT FANG+インデックス」
SBI証券のランキング5位は、「iFreeNEXT FANG+インデックス」だった。同ファンドは大和アセットマネジメントが運用する投資信託で、Facebook、Amazon、Netflix、Google(Alphabet)の頭文字をとって「FANG」と呼ばれる次世代テクノロジーをベースにしたグローバル社会で影響力と知名度の高い10銘柄の米国企業の株式に等金額投資したポートフォリオで構成されるNYSE FANG+指数(配当込み、円ベース)の動きに連動する投資成果をめざす。原則としてNYSE FANG+指数を構成する全銘柄に投資し、為替変動リスクを回避するための為替ヘッジは原則として行わない運用方針となっている。2月末時点の1年騰落率は+99.9%となっており、高いパフォーマンスから、3月以降もSBI証券のランキング上位に入る可能性は高いだろう。
■iFreeNEXT FANG+インデックス
基準価額 5万1039円
信託報酬 0.7755%(年率・税込)
純資産残高 1278億円
<騰落率>
1カ月 9.7%
3カ月 23.3%
6カ月 31.1%
1年 99.9%
※2月末時点
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の人気が継続3月も、SBI証券や楽天証券では「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の人気が高かった。たしかに、同ファンドへの投資は、世界経済の成長力を活用し、長期的に資産を増やす機会を提供するものである。
世界の人口は増加傾向にあり、2024年の約80億人から2058年には100億人に達すると予測されている。人口増加に伴い、消費も拡大し、モノやサービスの生産も増加する。世界経済が継続的に成長するならば、長期的な株価上昇の可能性は高いといえるだろう。
しかし、すべての人がeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)に投資すべきというわけではない。その理由は、個人のリスク許容度が異なるからである。リスク許容度とは、「どの程度の損失に耐えられるか」を表す尺度である。一般的に、「高収入」「資産が多い」「若年層」などはリスク許容度が高いとされるが、個人の主観的な意向によっても左右される。リスク許容度の高低に優劣はなく、自身のリスク許容度を理解し、それに適した商品を選択することが重要である。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は世界中の企業に投資することで分散投資の効果が得られるが、その対象は様々な国の株式であるため、債券などに比べるとリスクは比較的高めなのである。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の調べによると、外国株式型ファンドは、2008年のリーマンショック時に-53%下落しており、短期的に大きな損失を抱える可能性がある。
リスク許容度の低い人がeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)を購入すると、自身の許容範囲を超えた値動きに晒される可能性があり、適切とはいえない。したがって、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は、リスク許容度が高い人向けの商品であることを認識しておくべきである。リスク許容度が高くない場合は、債券ファンドや株式と債券の両方に投資するバランス型ファンドの方が適している。
投資家は自身のリスク許容度を慎重に評価し、長期的な投資目標と整合性のある商品を選択することが大切である。eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は世界経済の成長力を取り込む魅力的な選択肢ではあるが、すべての人に適しているわけではない。「売れているファンドだから」という理由で買うのではなく、自身のリスク許容度を理解し、それに応じた投資戦略を構築することが、長期的な資産形成の鍵となるであろう。
■eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
基準価額 2万3162円
信託報酬 0.05775%(年率・税込)
純資産残高 2兆6248.2億円
<騰落率>
1カ月 5.0%
3カ月 12.5%
6カ月 14.3%
1年 35.2%
※2月末時点
新NISAの5割が個別株に
日本証券業協会の調べによると、2024年2月におけるNISA口座の開設件数は、2023年1~3月の1カ月平均に比べて2.9倍になった。
新NISA制度は2024年1月より開始され、「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の二本柱からなっている。「成長投資枠」では個別株と投資信託の購入が可能であり、「つみたて投資枠」では投資信託を毎月積み立てることができる。2つの枠を合計した年間の購入上限は360万円に拡大され、非課税運用期間も恒久化された。これにより、個人投資家にとって長期的な資産形成がより容易になったといえるだろう。
今年2月、日経平均株価は約34年ぶりに史上最高値を更新した。過去の長期にわたる相場低迷を経験してきた高齢者は、株価が上昇すると「塩漬け株」を売却する傾向が強かった。しかし、最近では株価水準に関係なく、コツコツと株式購入を続ける若年層が新たな投資家層として台頭していると考えられる。
その背景には、いくつかの要因がある。まず、スマートフォンの普及やオンライン証券会社の台頭により、若者にとって株式投資がより身近で手軽なものになったことが挙げられる。インターネット上で簡単に情報を入手し、少額から株式投資を始められる環境が整ってきた。
また、金融リテラシー教育の充実も一因と言えるだろう。学校教育の中で投資の基礎知識を学ぶ機会が増え、若い世代の投資に対する意識が高まってきている。
加えて、長期投資の重要性が広く認識されるようになったことも背景にある。SNSなどを通じて、若者の間で「つみたてNISA」や「iDeCo」といった長期・積立・分散投資の考え方が浸透してきた。株価の短期的な変動に一喜一憂するのではなく、長い目で見て着実に資産を築いていこうとする姿勢が見られる。これらの変化により、若年層が市況に左右されず、計画的に株式投資を続ける傾向が強まっていると考えられる。
成長投資枠での買付額は、2024年1~2月の1カ月平均が1.5兆円と、2023年1~3月の1カ月平均に比べて3.3倍、つみたて投資での買付額は、2024年1~2月の1カ月平均が2700億円と、2023年1~3月の1カ月平均の3.0倍となった。
そして、NISA買付額のうち成長投資枠の割合は85%、つみたて投資枠の割合は15%となっている。
さらに、成長投資枠での買付金額のうち、株式の割合は59%と、投資信託の41%を大きく上回っている。
NISA全体の買付額で考えると個別株の割合は46%となっており、人気も高いといえるだろう。その中でも、国内の高配当株が人気となっている。これは、昨今の金利上昇とインフレ懸念を背景としたものと考えられる。金利上昇により、債券などの固定収益商品の魅力が高まる一方で、株式市場には割高感が出てきた。そのような環境下で、投資家は比較的割安で、かつ高い配当利回りが期待できる高配当株に注目しているのだ。インフレ対策としても、物価上昇に負けない収益力のある企業の高配当株は魅力的な投資対象といえるだろう。
山下 耕太郎/金融ライター/証券外務員1種
一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は金融ライターをしながら、現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。ツイッター@yanta2011
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