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出光興産が減収減益も株価は快走 注目のPBR改善策とは

Finasee / 2024年4月16日 17時0分

出光興産が減収減益も株価は快走 注目のPBR改善策とは

Finasee(フィナシー)

出光興産の株価が上昇しています。2024年4月10日までの1年間で80%以上も上昇しました。2024年3月期は減収減益の見通しながら、足元で原油価格が上昇傾向にあること、また2023年から取り組むPBR改善策が投資家に評価されているものと考えられます。

【出光興産の業績】

    売上高    純利益   2022年3月期 6兆6868億円 2795億円  2023年3月期 9兆4563億円 2356億円  2024年3月期(予想) 8兆6500億円 1800億円

※2024年3月期(予想)は同第3四半期時点における同社の予想

出所:出光興産 決算短信

出所:Investing.comより著者作成

出光興産は資本収益性の高さから「JPXプライム150指数」に選ばれています。

今回は出光興産に焦点を当ててみましょう。収益源である5つの事業と原油価格との関係、また同社のPBR改善策を紹介します。

石油元売り大手 原油から派生する5事業が収益源

出光興産は石油元売りの大手です。2019年に昭和シェル石油と経営統合しました。国内ではENEOSホールディングスに次いで2位に位置します。

【石油元売り大手3社の予想売上高(2024年3月期)】
・ENEOS HD:14兆0000億円
・出光興産:8兆6500億円
・コスモエネルギーHD:2兆5550億円
※ENEOS HDは国際会計基準、その他は日本基準
※同第3四半期時点における

出所:各社の決算短信

主力事業は燃料油の販売です。原油を仕入れ精製し、ガソリンや軽油といった石油製品を企業や消費者向けに販売しています。

原油の精製で生まれるナフサはエチレンなどの化学製品になることから、石油元売りは一般に化学メーカーとして顔も持っています。出光興産も産業向けに基礎化学品や高機能材を販売しています。

オイルショックを受け石油に代わるエネルギーを模索した経緯から、出光興産は電力や再生可能エネルギー事業も展開しています。所有する発電所から電力の卸売りや小売りを行っています。また石炭や石油・天然ガスといった資源ビジネスも重要な収益源となっています。

【セグメント業績(2023年3月期)】

                売上高    セグメント損益   燃料油 7兆4039億円 730億円  基礎化学品 6669億円 101億円  高機能材 5110億円 170億円  電力・再生可能エネルギー 1971億円 5億円  資源 6721億円 2309億円

出所:出光興産 決算短信

原油相場の影響大 利益の浮き沈みは大きめ

出光興産は利益の振れ幅が大きい企業です。2023年3月期は2期連続で2500億円以上の最終黒字となっていますが、2020年3月期は200億円の純損失でした。直近10期では3回の最終赤字を経験しています。

出所:出光興産 有価証券報告書より著者作成

利益の変動が大きいのは、在庫評価損益の影響を受けるためです。

石油元売り各社は法令で一定以上の在庫保有を義務付けられています。在庫は時価で評価されるため、期首から原油価格が急落すると巨額な損失が計上される傾向にあります(参考:ENEOSホールディングス 在庫影響除き当期損益/営業損益)

出光興産は2015年3月期に1300億円を超える最終赤字を計上しました。その主因となったのも在庫評価損失でした。当時は原油価格が顕著に下落しため、関連するセグメントで巨額の在庫評価損失を計上しています。

出所:Investing.comより著者作成

このような関係から、出光興産は株価も原油相場の影響を受ける傾向にあります。冒頭の通り出光興産の株式は直近で大きく上昇していますが、原油価格も同様に上昇していることがわかります。

出所:Investing.comより著者作成JPXプライム150では珍しい割安株 PBR1倍割れはどう解消?

出光興産はPBRが1倍を下回る割安株です。純資産に対する株価の水準を図るPBRは、2024年4月10日終値で0.84倍となっています。

JPXプライム150指数メンバーのうち、PBRが1倍を下回る銘柄は5%しかありません。中央値は2.6倍で、構成銘柄の6割以上が純資産の2倍以上に株価が評価されています。

【JPXプライム150指数のPBR構成比】
・2倍以上:61%
・1倍以上~2倍未満:34%
・1倍未満:5%
・(参考)中央値:2.6倍
※2023年5月16日時点

出所:日本取引所グループ JPXプライム150指数

PBRの1倍割れは、株価が純資産を下回っている状態です。純資産は原則として株主のもので、企業が解散すると株主に分配されます。つまりPBRの1倍割れは「企業の存続価値が解散価値を下回っている」状態であり、株主に将来性を評価されていないことを表しています。

もっとも、出光興産のPBRは改善傾向にあります。

出光興産は2023年11月、PBR1倍割れ解消の施策として中期経営計画を修正しました。従来のROE目標を8%から10%以上に引き上げる内容です。資本収益性を高めることで稼ぐ力を強化し、株式の価値を高める狙いがあります。

株主還元の強化も表明しました。総還元性向は50%以上を維持しつつも、1株あたり配当金は増額かつ下限を設け、新たに自社株買いにも言及しています。さらに1:5の株式分割も実施し、投資単位の引き下げも実施ました。

【中期経営計画の資本・財務計画(2023年度~2025年度)】

  当初計画
(2022年11月)
修正
(2023年11月)
 ROE目標 8% 10%以上  総還元性向 50%以上 50%以上  1株あたり配当金(※) 24円を基本 32円を下限  自社株買い ― 機動的に実施

※2024年1月の1:5の株式分割を考慮(分割前:120円を基本→160円を下限)

出所:出光興産 決算説明会資料

株式市場はこれらの動きを評価しているようです。出光興産がPBR向上の施策を公表すると株価は大きく上昇し、その後も値上がり傾向が続いています。公表前のPBRは約0.55倍でしたが、株価の上昇で0.29ポイント改善しています。

出所:Investing.comより著者作成

出光興産は今後も資本効率の改善を継続し、PBRの向上に取り組む考えです。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)

若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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