「オルカン」「S&P500」を追う2強海外アクティブ投信。なぜ? みんなが買う理由がわかった!
Finasee / 2024年4月17日 18時0分
Finasee(フィナシー)
新NISAのスタートを控えた2023年から、新NISAが始まった2024年1月以降の投資信託の純資金流入額で、圧倒的な存在感をみせる2本のアクティブ投信がある。X(旧Twitter)やYouTubeなどのSNSで、「新NISAは『オルカン』の積立一択」と思い込んでいる人には意外なことかもしれないが、投信市場で「オルカン」と「S&P500」のインデックスファンドに次ぐ人気を集めているのは、アクティブ投信であり、さらには、新NISAの対象でもない毎月分配型の投信なのだ。
その2本とは、「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」と「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)【愛称:世界のベスト】」だ。なぜ、この2本のファンドがこれほど強い支持を集めるのだろうか?
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毎月決算型でNISA対象外でも資金流入が継続投信の購入による設定額と売却による解約額等との差額をまとめた純資金流出入額の推移をみると、2024年1月~3月の3カ月間で、純資金流入額のトップは「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の6788億円、第2位は「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の4659億円というインデックスファンドの2強だった。そして、第3位に「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」の1675億円、第4位が「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)【愛称:世界のベスト】」の1604億円になっている。第5位の「楽天・S&P500インデックスF」が862億円と流入額の規模が劣るため、上位の4本の投信が2024年の資金流入額が目立って大きい投信ということになる。
そして、この上位4本は、トップ2のインデックスファンド2本が新NISAの「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の両方の対象商品であり、新NISAのスタートとともに資金流入に拍車がかかった2本。これに対し、第3位と第4位の2本はともに毎月決算型であるために新NISAの対象商品ではない投信ということになる。
また、「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)【愛称:世界のベスト】」は2023年の年間の資金流入額が7573億円で全ファンド中のトップだった。さらに、2022年の年間トップこそ「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の7364億円だったとはいえ、2021年の年間トップは「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」の9393億円というように、ここ数年間は継続的に高い人気を集めてきた投信でもある。
インデックスファンドのトップ2本は、信託報酬率が年0.1%を下回る超低コストであり、新NISAを使った長期・積立投資の本命といわれてきたこともあって順当なランキング入りと考えられるが、アクティブ投信の2本については、信託報酬率は年1.5%を超え、かつ、NISAを使う税制優遇(収益額の約20%の源泉徴収税の免除)も受けられない。それにもかかわらず、アクティブ投信の中で、群を抜いて強い人気を維持している背景はどこにあるのだろうか?
2本のアクティブ投信には、NISAに対応した分配頻度の低いコースが存在する。「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」には、年1回決算の「Aコース(為替ヘッジあり)」と「Bコース(為替ヘッジなし)」、そして、2023年10月に新規設定された隔月決算の「Eコース隔月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」があり、この3本はNISA「成長投資枠」の対象商品だ。
また、「インベスコ 世界厳選株式オープン【愛称:世界のベスト】」にも、「年1回決算型」(為替ヘッジあり・なし)、「奇数月決算型」(為替ヘッジあり・なし)のコースがあり、この4本は「成長投資枠」の対象商品だ。
それぞれ、NISAの非課税メリットを受ける手段があるにもかかわらず、新NISAが始まった2024年になっても、「毎月決算(為替ヘッジなし)」コースの人気が衰えない。
根強い「毎月分配」ニーズ、年金生活者には合理的毎月決算型投信は、「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」が2008年8月に残高で約5兆8000億円を記録するなど、高齢の投資家が「年金の補完・上乗せ」として毎月の分配金を活用する目的で使われてきた。たとえば、世界の国債に投資して年4%の運用利回りがあれば、2000万円の資金投資で、年間で80万円(税抜きで約64万円)、毎月5万円超が分配金で受け取れる計算だ。毎月数万円~二十数万円の年金を頼りに生活している高齢者にとって、5万円が上乗せされる意味は大きい。しかも収益の一部が分配されるため、自己資産である元本部分が残り続けるというメリットが安心感につながる。
その後、金利低下によって債券の利回りが低下すると、高配当株やリート(不動産投信)などを投資対象として毎月決算型の人気は続いた。ただ、毎月分配に傾斜するあまり、元本を取り崩してでも分配を優先する「たこ足分配」の指摘が出て、金融庁は「資産形成にふさわしくない」として毎月決算型の投信を問題視するようになった。そこで、「たこ足分配」の批判に当たらない「予想分配金提示型」が開発された。基準価額が1万円以下では分配せず、1万円以上の水準に応じて決められた分配額を払い出す。また、過度な分配を行わないようにした毎月決算型の投信が、投資家の根強いニーズに応えて提供され続けている。
「持続的な成長企業」に厳選投資しインデックスを上回る成績ただ、その中でもなぜ、2強といえるほどに2本のアクティブ投信が頭抜けた存在であり続けるのか? それぞれの投信の生い立ちを調べたら、その理由が見えてきた。
まず、「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」は、設定が2014年9月。2006年5月に設定された年2回決算型の「Aコース(為替ヘッジあり)」と「Bコース(為替ヘッジなし)」があったが、この投信の評価が高まったのは、毎月決算型の「Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)」が設定されてからだ。それまでは1本あたり残高が100億円に届かない投信だった。「Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)」の設定以来、同投信に対する評価が高まっていく。その背景に、同投信の取り扱い販売会社数の拡大があった。「Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)」の取り扱い販売会社数は2015年末に6社だったが、2019年末には33社に拡大し、2021年末に60社、2024年3月末には70社となり、さらに、取り扱いを検討している販売会社が複数社あるという。
アライアンス・バーンスタイン社に同投信の人気化の背景を聞くと、「景気に左右されずに自らの利益を再投資することで、長期安定的に成長できる『持続的な成長企業』に厳選投資を行うこと。イノベーションや労働人口増などで、世界経済を引き続きけん引することが期待できる『米国株式』は、ポートフォリオのコアとして保有するに適したファンドであることを、約10年にわたり丁寧に説明してきたことも、ご支持いただけた要因の一つと考えます」という回答だった。設定来のトータルリターンは、米国株インデックス「S&P500(配当込み、円ベース)」を上回るパフォーマンスを残しているという運用力に加え、丁寧な情報提供によって地道に販売会社を拡大してきた努力が、今の残高増につながっている。分配金は基準価額の水準によって決定されている。2023年6月以降は毎月200円が支払われ、2024年2月と3月は300円に増額された。4月の分配金は基準価額の上昇に応じて400円になった。
「顔の見える運用」めざし年間500回の勉強会を実施一方、「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)【愛称:世界のベスト】」は、1999年1月の設定で25年超えの歴史がある投信だ。ただ、純資産総額が100億円を超えたのは2018年6月末のことで、残高増が目立ってきたのは、2021年10月に残高が1000億円を超えたあたりからだった。この投信の取り扱い販売会社数は、2017年12月末までは18社だったが、2021年末に27社、2022年末に33社だったものが、2023年末には47社に急増し、2024年3月末には52社となり、さらに複数の販売会社が取り扱いを検討しているという。
インベスコ・アセット・マネジメントに人気の背景を聞くと「コロナ禍の間も、長くお取り扱いを頂いているメガバンクや地方銀行を中心に、販売会社様向け勉強会を開催し、わかりやすいレポートや動画を作成する等、情報提供に努めて参りました」と、やはり情報提供など丁寧な説明の取り組みを強調した。「2023年には約500回もの勉強会を実施しました。また、『顔の見える運用』というコンセプトのもと、運用責任者および運用チームメンバ―が数カ月ごとに来日して、直接販売員の方々にファンドの運用状況をご説明しています。そうした取り組みもあり、特に昨年、新たに多数の販売会社様にご採用いただくことができ、好調な資金流入が継続しています」と、販売会社の拡大が残高増の大きな力になっている。設定来のトータルリターンは、先進国株式の代表的なインデックスである「MSCIワールド・インデックス(円ベース)」を上回る実績を残していることも残高増に寄与しているといえるだろう。分配金は2017年1月以降は毎月150円以上を実施した上で6月と12月を中心にボーナス的な上乗せ分配を実施。2020年1月以降は毎月150円を継続している。
販売会社の説明力がワークすることで「売れる投信」にアクティブ投信2強に共通していることは、しっかりした運用成績に加えて、取り扱う販売会社の大きな広がりがあることだ。当然、インデックスファンド2強も販売会社の数は多いだが、取り扱いはインターネットによるオンライン販売に限られる。米国「S&P500」などよく知られた株価指数(インデックス)に連動することをめざすため、特段の説明がなくても、その商品性は理解され、投資家の自発的な注文で残高を拡大してきた。これに対し、アクティブ投信は、「インデックスとは何が違うのか」、「誰が運用するのか」、「過去の運用実績はどうだったのか」など、商品の理解にはさまざまなポイントを知る必要がある。資料や動画などを通じてインターネットで情報を届ける方法もあるが、投信について経験が浅い投資家や、投資未経験の人が、納得いく理解を得るためには、やはり、訓練された販売員による説明が必要になる場面もあるだろう。
優れたパフォーマンスに加え、分厚い販売会社のネットワークがあってこそ、何年にもわたって残高を積み上げることが可能になっている。そして、既にできている販売網は、優れた運用成績と納得のいく説明が得られ続ける限りは、継続的にワークし、さらに、販売網の拡大につながっていく。
新NISAによって、新たに投信を購入する人が増えているとはいえ、日本では、まだまだ多くの国民が預貯金に資金を預けている。投信の利用経験がある人は各種の意識調査で20%~30%程度とみられ、依然として、投信を使ったことがない国民が大半だ。そのような人にアプローチする有力なチャネルが銀行や証券会社の販売員を通じた説明だろう。アクティブ投信2強は、幅広い販売会社を通じて、多くの国民に届けられるチャンスがある。投信会社の販売会社との緊密なリレーションが、アクティブ投信としての成功を導いているようだ。
Finasee編集部
「インベストメント・チェーンの高度化を促し、Financial Well-Beingの実現に貢献」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAやiDeCo、企業型DCといった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。
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