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100均「キャンドゥ」イオンの子会社化で赤字でも株価は上昇 3期ぶり黒字化への道のりは?

Finasee / 2024年4月25日 17時0分

100均「キャンドゥ」イオンの子会社化で赤字でも株価は上昇 3期ぶり黒字化への道のりは?

Finasee(フィナシー)

キャンドゥは2024年4月9日、2024年2月期の決算を発表しました。売り上げは堅調でしたが、コストの増加から純利益は赤字となりました。減損に伴う特別損失が拡大したことも痛手でした。最終赤字は2期連続です。

【キャンドゥの業績】

    売上高     純利益    2023年2月期 932億円 -3.43億円  2024年2月期 804億円 -4.59億円  2025年2月期(予想) 850億円 0.40億円

※2025の円2月期(予想)は2024年2月期時点の同社の予想
※2023年2月期は決算期の変更に伴い15か月間の変則決算(2022年3月~2023年2月は売上高750億円、純利益-4.52億円)

出所:キャンドゥ 決算短信

苦戦が続くキャンドゥですが、株価は上昇傾向にあります。2024年4月15日までの5年間でおよそ60%値上がりしました。

出所:Investing.comより著者作成

業績が悪化しているにもかかわらず、なぜキャンドウは買われているのでしょうか。同社の利益が減少している理由と株価が値上がりしている背景を探ってみましょう。また黒字化を目指す今期(2025年2月期)の計画も紹介します。

100均業界で3位 インフレが逆風で利益は減少

キャンドゥは100円ショップの大手です。直営店による小売りとフランチャイズ店に対する卸売りを行っています。業界では3位の売り上げを持つとみられています。なお業界首位とみられる『ダイソー』の大創産業は非上場企業です。

【主な100円ショップの売上高(2022年度)】
・大創産業:5891億円
・セリア:2124億円
・キャンドゥ:750億円
・ワッツ:593億円
※大創産業は2023年2月期、セリアは2023年3月期、ワッツは2023年8月期、キャンドゥは2023年2月までの12ヶ月間(キャンドゥの2023年2月期は決算期の変更に伴い15ヶ月間の変則決算。通期の売上高は931億円)

出所:各社の決算資料および会社案内

キャンドゥの売上高は増加傾向にあります。積極的に出店する戦略で売り上げを拡大してきました。海外にも出店しており、国内外の店舗数は2024年2月末で1258店舗に達しています(直営857店(委託店含む)、FC394店、海外FC7店)。

ただし利益面は厳しい展開が続いています。円安や資源高などからインフレが起こり、原材料費や光熱費といったコストが増加しているためです。営業利益は2024年2月期までに4期連続で減少し、直近10期で最低水準にまで落ち込みました。

出所:キャンドゥ 決算短信より著者作成

採算の悪化は特別損失にもつながっています。

キャンドゥは店舗の使用価値を資産に計上しています。継続的に営業損失を計上するなど使用価値が減少した店舗は減損させ、当期の損益計算上は特別損失として処理しています。

近年は店舗の減損額が増加傾向にあります。営業利益の減少と特別損失の増加が同時に生じ、2024年2月期までの2期連続の最終赤字につながりました。

出所:キャンドゥ 決算短信より著者作成株価はライバルより好調 イオンによる子会社化が下支え

苦戦しているのはキャンドゥだけではありません。インフレに伴うコストの増加は100円ショップ業界の全体で起こっており、上場する3社はいずれも減益傾向にあります。

【100円ショップ上場3社の純利益(2022年度)】

         純利益     前期比    セリア 102.54億円 -40.47億円  ワッツ 2.51億円 -6.52億円  キャンドゥ -4.52億円 -4.40億円

※セリアは2023年3月期、ワッツは2023年8月期、キャンドゥは2023年2月までの12ヶ月間(キャンドゥの2023年2月期は決算期の変更に伴い15ヶ月間の変則決算。通期の純利益は-3.43億円)

出所:各社の決算資料

しかし株価の値動きは異なります。セリアやワッツの株式が低迷する中、キャンドゥの株価は右肩上がりに上昇しました。

出所:Investing.comより著者作成

キャンドゥ株式の好調の背景にはイオンによる子会社化があります。

イオンは2021年10月、キャンドゥ株式の公開買い付けを実施しました。公開買い付けは同年12月までに2回実施され、イオンはキャンドゥの議決権の過半を取得します。この取引によりキャンドゥはイオンの連結子会社となりました。

イオンは100円ショップが同社の既存事業との親和性が高いと考え、キャンドゥの子会社化に踏み切りました。またキャンドゥ側にも出店機会の増加が見込めるメリットもありました。

このような思惑から、キャンドゥはイオングループ傘下となります。同業他社と比較しキャンドゥの株価が堅調だったのは、イオンという強力な買い手が現れたこと、またイオンとキャンドゥの協業が投資家に期待されたことなどが背景にあるとみられています。

3期ぶり黒字化の見通し 今期の業績予想は

キャンドゥの今期(2025年2月期)の業績見通しは以下の通りです。純利益は微益ながらプラスを計画しており、達成なら3期ぶりの黒字となります。

【2025年2月期の業績見通し】
・売上高:850.00億円(前期比率5.8%)
・営業利益:4.50億円(同85.2%)
・経常利益:5.00(同68.8%)
・純利益:0.40億円(黒字化。前期は-4.59億円)

出所:キャンドゥ 決算短信

今期は積極的な出店を計画しています。95店舗の純増(出店170店舗、退店75店舗)を目指す内容で、達成すると国内外の店舗数は1353店舗に達します。95店舗の純増は直近10期で2番目の水準です。

出所:キャンドゥ 決算短信より著者作成

キャンドウが2022年1月に発表した「キャンドウ×イオン五か年計画」から、出店はイオングループ各社への出店が中核になるとみられます(出所:キャンドゥ キャンドウ×イオン五か年計画)

またイオン流の人的投資も行います。賃金や教育、人事制度をイオンに準じる内容で実施し、生産性の向上と企業価値の増加を目指します。

インフレなどから、当面100円ショップ業界は厳しい経営環境が続くとみられます。キャンドウはイオンとの協業を強化し、収益の改善を目指します。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)

若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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