「オルタナティブデータ」はプロだけのものじゃない! 個人投資家もできる活用法とは
Finasee / 2024年4月26日 7時0分
![「オルタナティブデータ」はプロだけのものじゃない! 個人投資家もできる活用法とは](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/finasee/finasee_13455_0-small.jpg)
Finasee(フィナシー)
ナウキャスト
辻中 仁士 CEO
――前編ではオルタナティブデータの概要と貴社の商流についてご説明いただきました。貴社がオルタナティブデータにビジネスチャンスを見いだしたきっかけはなんでしょう。
ビジネスとしての成功を目指すと言うよりは、事業を通じて理想的な未来創造を目指す、いわゆる「ビジョンドリブン」な気持ちでスタートしました。もともとナウキャストは、消費者物価指数や日銀短観といった伝統的指標の正確性・速報性に課題を感じていた東京大学大学院・渡辺努教授が「オルタナティブデータなら解決できるのではないか」と考えて立ち上げたプロジェクトが母体なのです。
そして私も日銀在籍時から、渡辺教授と同じく伝統的指標の正確性・速報性に問題意識を持っておりました。例えば日銀短観の調査に携わった際、回答者が「人」であるため間違いや漏れがあり正確性に疑問を感じました。また、全国2万社ほどから回答を集めるコストの大きさゆえに3カ月に1回しか実施できないという速報性の課題もありました。2013年4月の「黒田バズーカ」や14年の消費税率引き上げなどによるマーケットのダイナミズムを目の当たりにしながらも、スピーディーな実態調査ができないことに歯がゆさを感じていましたね。
そこで、伝統的指標の課題をテクノロジーによって解決することを目指すナウキャストに魅力を感じてジョインし、今に至っています。
――オルタナティブデータは伝統的指標の課題を解決し得るわけですね。ところでオルタナティブデータは今のところ主に機関投資家に用いられているようですが、個人投資家にも活用する機会はあるのでしょうか。
大きく分けて2つの活用方法があると考えています。
1つ目の方法は、投資判断にオルタナティブデータを用いている公募投資信託(公募投信)の購入です。オルタナティブデータを巡っては、専門チームを立ち上げて運用したり、アクティブ運用のコアなリサーチ手法として導入したりする国内系運用会社も増えてきました。このような運用を行っている公募投信を購入すれば、間接的にはなりますがオルタナティブデータの恩恵にあずかることができるでしょう。
2つ目としては、インターネット上から特定の情報を抽出(ウェブスクレイピング)するプログラムを作成し、個人投資家自身でオルタナティブデータを生成・分析する方法もあります。例えばアミューズメントパークのアトラクションの待ち時間を公式サイトなどから抽出すれば、待ち時間が長ければ長いほど来場者が増えていると推測できますので、運営会社の株価にとってプラスと判断できるかもしれません。また、いわゆる「ユーチューバー」の登録者数の推移を分析すれば、広告収入の先読みができ、その所属事務所の株価の先行きを見通せる可能性もあります。
こうしたアイデアはいくらでも考えることができますし、最近ではChatGPTなどの便利なツールも発達してきています。一定のハードルはあるとはいえ、個人投資家でもオルタナティブデータを活用する機会はあるのです。
――海外投資家と国内投資家の間でオルタナティブデータの活用状況に違いはありますか。
海外の方が圧倒的に進んでいます。例えば米国の機関投資家や証券アナリストから話を聞くと、「小売業者の分析にクレジットカードのデータを見ないなんて考えられない」と言っています。また米投資銀行のリサーチヘッドに「日本では決算発表だけで企業分析し、オルタナティブデータはチェックしないアナリストもいる」と説明したところ、「米国でそんなアナリストがいたら『クビ』だろう」と話していたのも印象的でした。
――今後、貴社としてはどのようなことに注力していきますか。
大きく分けて、①事業会社向けビジネスの拡大、②海外展開、③国内投資家へのオルタナティブデータ推進――の3つに注力していきます。このうち①については金融分野にあまり関係ないので省略し、②と③についてお話しします。
まず②については、今後の市場成長が見込まれる東南アジアでのデータ収集に着手したいと考えています。ナウキャストの名前は国内オルタナティブ市場では知られてきたという自負はありますが、東南アジアではまだまだですので、認知度向上に向け様々な施策を展開していきます。すでに取り組みの成果も出てきており、3月にはアジア地域の機関投資家向けオルタナティブデータプロバイダー発掘を目的としたBattleFinのピッチコンテスト「The Alternative Data Challenge - Asia 2024 Edition」で優勝しました。
続いて③については、オルタナティブデータの提供にとどまらず、より幅広い投資家に興味関心を持ってもらえるような施策を打ち出していく予定です。先述の通り、海外に比べて国内ではオルタナティブデータの普及が進んでおりません。そこで従来のようにオルタナティブデータを提供するだけでなく、投資家がデータ分析するケイパビリティをシステム面でも人材面でも整えてあげられるような支援策が必要と考えています。すでに新サービスも始めており、昨年6月には機関投資家向けにデータ分析基盤をセミオーダーで提供する「AlternaData Hub(オルタナデータハブ)」をリリースしました。
――オルタナティブデータが普及したら投資家にどのような変化がもたらされるでしょうか。
いわゆる「市場の効率性」がこれまで以上に高まっていくでしょう。オルタナティブデータの大きな特徴は速報性ですから、リサーチ手法のひとつとして普及すれば、マーケットが実体経済の変化を織り込むスピード感が早まっていくと思います。
オルイン編集部
「オルイン」は、株式・債券といった伝統資産はもちろん、ヘッジファンドやプライベートエクイティ、不動産といったオルタナティブもカバーする、国内随一の機関投資家向け「運用情報誌」。2006年の創刊以来、日本の年金基金や金融法人、公益法人といった機関投資家の運用プロフェッショナルに対し、その時々のタイムリーな話題を客観的かつ独自の視点でわかりやすくお伝えしています。
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