円谷フィールズ最高益で株価4倍 「ウルトラマン」が変えるパチンコ企業の姿
Finasee / 2024年5月2日 17時0分
![円谷フィールズ最高益で株価4倍 「ウルトラマン」が変えるパチンコ企業の姿](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/finasee/finasee_13461_0-small.jpg)
Finasee(フィナシー)
2022年以降、円谷フィールズホールディングスは株価が急伸しています。2021年末に256円だった株価は、2023年8月におよそ13倍となる3380円まで取引されました。以降は値下がりし、2024年4月23日までの5年騰落率は4倍ほどに落ち着いています。
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円谷フィールズはパチンコ・パチスロ遊技機の販売と、「ウルトラマン」などの知的財産を活用したライセンスビジネスを手掛ける企業です。
なぜ円谷フィールズ株式に買いが集中したのでしょうか。背景を探ってみましょう。
株価急騰の理由は業績の回復 3期連続赤字から大復活円谷フィールズ株式の値上がりは業績の回復が評価されたものだとみられます。
円谷フィールズは近年まで経営不振に苦しんでいました。2019年3月期までに3期連続の最終赤字となり、2021年3月期も再び純損失を計上しています。
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業績が落ち込んだ理由の一つが販売の不振です。
円谷フィールズの主要な事業はパチンコやパチスロといった遊技機の販売であり、売り上げの大部分を占めています。しかし遊技機の販売台数は2021年3月期まで顕著に減少しました。2021年3月期はコロナ禍の影響も受けました。販売台数の減少に伴い、売上高も同じように減少しています。
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販売が回復した2022年3月期は黒字を確保し、翌期は純利益ベースで最高益となりました。2024年3月期も最高益の更新を見込みます。
【円谷フィールズHDの業績】
売上高 純利益 2022年3月期 949億円 25億円 2023年3月期 1171億円 82億円 2024年3月期(予想) 1230億円 85億円※2024年3月期(予想)は同第3四半期時点における同社の予想
出所:円谷フィールズHD 決算短信
2024年3月期の決算は5月14日に公表される予定です。
破綻寸前だった円谷プロが成長 海外使用権の勝訴でグローバル化が加速円谷フィールズのメイン事業は遊技機の販売ですが、投資家の期待はコンテンツビジネスに向けられているとみられます。
円谷フィールズの事業は2つあります。遊技機の販売を手掛けるPS事業と、知的財産を活用したライセンスビジネスおよび映像制作を手掛けるコンテンツ&デジタル事業です。
コンテンツ&デジタル事業の売り上げは全体から見ると大きくありません。しかし営業利益では全体の4割を占めており、重要な収益源となっています。
【セグメント業績(2023年3月期)】
売上高 営業利益 PS 1008億円 77.1億円 コンテンツ&デジタル 145億円 43.8億円 その他 23億円 0.8億円 (参考)連結 1171億円 109.5億円出所:円谷フィールズHD 決算短信
コンテンツ&デジタル事業の中核子会社が円谷プロダクションです。
コンテンツ&デジタル事業は主に円谷プロダクションとデジタル・フロンティアで構成されています。デジタル・フロンティアの営業利益はセグメント全体の1割程度であることから、利益の大半は円谷プロダクションが稼いでいるとみられます。
【コンテンツ&デジタル事業の業績の内訳(2023年3月期)】
事業収入/売上高 営業利益 円谷プロダクション 102億円 ― デジタル・フロンティア 41億円 4.1億円 (参考)セグメント全体 145億円 43.8億円※円谷プロダクションは事業収入、デジタル・フロンティアとセグメント全体は売上高
出所:円谷フィールズHD ファクトブック
円谷プロダクションは「ウルトラマン」などの知的財産を所有する企業です。かつては赤字体質から経営危機に陥っていました。2007年には映像コンテンツを制作していたティー・ワイ・オー(現・KANAMEL)に買収されてしまいます。
円谷フィールズ(当時はフィールズ)の子会社となったのは2010年のことです。円谷プロダクションは2014年度に債務超過を解消し経営再建を果たしました。
現在では円谷プロダクションは円谷フィールズの中核的な存在となっています。「ウルトラマン」などの知的財産は海外でも知られており、特に2019年度に本格参入した中国で人気です。買収した円谷フィールズも、2022年に社名を現在のものへと変更しました。
【円谷プロダクションの事業収入(2023年3月期)】
・国内MD・ライセンス:18億円
・海外MD・ライセンス:61億円
・映像事業:23億円
※MD(マーチャンダイジング)=商品化
※海外MD・ライセンスのうち中国:55億円
出所:円谷フィールズHD ファクトブック
円谷プロダクションは2018年、「ウルトラマン」の海外利用権で争っていた米国の訴訟で勝利しました。2020年に勝訴が確定したことから、現在は北米地域への進出を強化しています。
円谷フィールズによれば、米国のコンテンツ市場規模は2020年で49.6兆円です。これは日本(同12.0兆円)や中国(同20.7兆円)の数倍に上ります(出所:円谷フィールズ グループ成長戦略 コンテンツ&デジタル事業領域)。北米への進出が成功すれば、円谷プロダクションはさらに大きな収益を得られるかもしれません。
パチンコ企業からコンテンツ企業へ 公表した3ヵ年計画を確認円谷フィールズの長期の見通しも確認しておきましょう。
円谷フィールズは2023年5月、中期経営計画(2023年度~2025年度)を発表しました。営業利益を160億円まで拡大させる計画です。2022年度の実績は110億円でした。3年で45%、1年あたり13%の成長を目指します。特にコンテンツ&デジタル事業が伸びる見込みで、計画通りなら営業利益はPS事業に並びます。
【中期経営計画(2023年度~2025年度)の財務目標】
2022年度(実績) 2025年度(計画) 連結営業利益 110億円 160億円 うちPS事業 77億円 90億円 うちコンテンツ&デジタル事業 44億円 90億円 その他事業および調整 -11億円 -20億円出所:円谷フィールズHD 新・中期経営計画
3ヵ年の取り組みで主なものがグローバル化の強化です。中国・アセアン地域では映像作品やテーマパークを展開し、米国ではネットフリックス制作の「ウルトラマン」CGアニメの配信を行います。これらの取り組みでブランドの浸透を目指します。
近年、国内のパチンコホールは数を減らしています。店舗数は2000年の半分以下にまで減少しました。遊技機の設置台数も大きく減少しています。
【遊技場の店舗数と設置機械台数】
店舗数 設置機械台数 2000年末 1万6988 475万5302 2010年末 1万2479 455万4430 2020年末 9035 400万6787 2022年末 7665 356万4039出所:全日本遊技事業協同組合連合会 全国遊技場店舗数及び機械台数(警察庁発表)
円谷フィールズは市場縮小が見込まれる遊技機から軸足を移し、コンテンツビジネスのグローバル化で成長を目指します。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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