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資産運用の大前提に これから数十年続く2つのトレンド

Finasee / 2024年5月1日 7時0分

資産運用の大前提に これから数十年続く2つのトレンド

Finasee(フィナシー)

マーサーでは毎年、今後数年間の市場テーマと投資機会を表すタイトルをグローバルで考えており、2024年は「アジリティの時代(An age of agility)」に決定しました。アジリティとはスポーツなどでよく用いられる言葉で、敏捷性や機敏性といった意味があります。投資家の皆さまに対し、これまで以上に機動的に運用していただきたいというメッセージを込めました。

なぜアジリティが重要なのかと言うと、今まさに市場環境がダイナミックな変化を遂げつつあるからです。変化を具体的に挙げると、時間軸の短い順に、➀各国金融政策の変更などに端を発する足元の「レジームチェンジ」、②通常の景気サイクルの2~3倍の長さで続く「スーパーサイクル」、③今後数十年間にわたって続くと見られる「メガトレンド」の3つがあります。

後編では、②スーパーサイクルと③メガトレンドについて取り上げます。

一般的な景気循環より数倍長いスーパーサイクル

数年程度で終わる通常の景気サイクルと比べ、2~3倍の長期間にわたって続くのがスーパーサイクルです。足元で起きているスーパーサイクルとしては、「インフレ」と「資金の貸し手・借り手の力関係の変化」という2つのテーマが挙げられます。[more]

1つ目のテーマであるインフレについては構造的な事象であり今後も続いていくと思います。これまでのインフレは主にサービス価格の上昇が支えてきましたが、今後は地政学的リスクの高まりや気候変動に伴う資源需要などを背景として、いわゆる「財」の価値が高まっていくと見られるためです。ChatGPTを始めとした生成AIの台頭により労働集約型産業などでディスインフレになるリスクはありますが、それを差し引いてもインフレは高止まりする可能性が高いでしょう。

投資妙味のある資産としては、不動産・インフラといったプライベートアセットや天然資源、インフレ連動債などが挙げられます。

続いてスーパーサイクルの2つ目のテーマである「資金の貸し手・借り手の力関係の変化」を取り上げます。従来の低金利環境は、「フリーマネー」と表現されることもあるように借り手有利な状況でした。しかし近年の金利上昇とともに、徐々にパワーバランスが貸し手側へと傾いてきているのが現状です。

貸し手側にパワーバランスが傾くと、投資家にはリスクとチャンスの両方がもたらされるでしょう。

まずリスクとなるのは企業の淘汰です。貸し手優位の状況とは、言うまでもなく借り手にとって資金調達コストが高まることを意味します。とりわけ従来のフリーマネーにより辛うじて存続してきたいわゆる「ゾンビ企業」にとって厳しい状況となるのは避けられないでしょう。

一方、先行き懸念があるときこそチャンスがあるとの見方もあります。例えば、ハイイールド債のスプレッドが広がりを見せるタイミングで、プライベートデットやクレジットオポチュニティなどのリターンが高くなるという調査結果が出ています。また市場混乱時にリターンを狙う方法として、クレジットを活用したヘッジファンドや、投資適格未満のクレジットに幅広く投資するマルチアセット・クレジットといった、各種クレジット戦略も検討に値するでしょう。

超長期的な変化を示すメガトレンド

最後のテーマは、今後数十年間にわたって続くと見られる「メガトレンド」です。メガトレンドの主流はESGで、大きく分けて「エネルギー・モダナイゼーション」と「自然の再秩序」という2つの要素に分類できます。

前者のエネルギー・モダナイゼーションとは、文字通りエネルギーの現代化を意味し、新たな投資機会のきっかけとなります。例えば今後さらに普及していくと見られる電気自動車では、リチウムやニッケル、マンガンといった高価なレアメタルが必要となりますので、鉱物に着目した株式のアクティブ戦略などに妙味が出てくると考えられます。

後者の自然の再秩序としては、「森林」や「農業」、「循環型経済(サーキュラーエコノミー)」への投資が挙げられます。

まず森林への投資には、比較的安定したリターンが取りやすい特徴があります。例えば米国の森林投資のリターンを見てみると、直近35年間でマイナスになった年は数えるほどで、年率10%程度のリターンが出ています(図表)。一番大きいマイナスとなった2001年でも-5.2%に過ぎず、リスクが比較的小さいという特徴もあります。さらに木材活用に関する技術革新が進んでいますので、今後も期待できる市場と言えるでしょう。

 図表 米国の森林のリターン


続いて農業についても投資妙味があると見ています。農業投資の過去のリターン実績を見ると、森林と同様に高リターン・低リスクとなっている上、伝統的資産との相関がほとんどなく分散効果が高いこともわかります。さらに世界的な人口増による食糧危機の懸念や、温室効果ガス抑制に向けた技術革新の必要性などを踏まえると、今後も投資先として追い風が吹きそうです。

そして循環型経済についても今後の重要な投資テーマになるでしょう。循環型経済とは、現状では廃棄されてしまうような各種資源について、リユースやリサイクルを通じた再活用や付加価値の創造を狙うものです。例えばオランダでは、2050年までに100%循環型経済を実現する目標を立てるなど、世界的に注目されている取り組みです。投資先としては「リスクが高いのではないか」とか「あまりリターンが良くない」といった先入観を持たれがちですが、実際にはリスクが低くてリターンも高いとの分析結果も出ており、これから注目したい投資テーマと言えるでしょう。

オルイン編集部

「オルイン」は、株式・債券といった伝統資産はもちろん、ヘッジファンドやプライベートエクイティ、不動産といったオルタナティブもカバーする、国内随一の機関投資家向け「運用情報誌」。2006年の創刊以来、日本の年金基金や金融法人、公益法人といった機関投資家の運用プロフェッショナルに対し、その時々のタイムリーな話題を客観的かつ独自の視点でわかりやすくお伝えしています。

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