「ラーメン山岡家」株価9倍&最高業績でライバル日高屋を猛追 売上300億を目指す今期の計画とは
Finasee / 2024年5月9日 17時0分
Finasee(フィナシー)
丸千代山岡家の株式が急騰しています。2023年頃から値を上げ始め、2024年4月末までの5年間で9.4倍に上昇しました。同業他社と比較しても、山岡家の株価の上昇率は圧倒的です。
出所:Investing.comより著者作成出所:Investing.comより著者作成株式市場で注目される山岡家とはどのような企業なのでしょうか。株価が急伸した理由と一緒に押さえましょう。また今期(2025年1月期)の業績見通しも紹介します。
「ラーメン山岡家」の運営会社 売り上げ急伸でライバルに迫る丸千代山岡家は「ラーメン山岡家」などのラーメン店を展開する企業です。直営かつ24時間営業を基本に、2024年1月末で183店舗を運営しています。店舗は北海道と関東を中心に広がっており、関西より西の地域は手薄な状況です。
【エリア別の店舗数(2024年1月末)】
・北海道・東北エリア:72(北海道54、東北18)
・関東エリア:75
・その他:36(北陸10、東海18、関西3、中国2、九州2)
※合計:183
出所:丸千代山岡家 決算説明会資料
店舗の伸びはゆるやかです。直近10期の増加数は54であり、1年あたりの増加ペースは5~6店舗であることがわかります。
一方で売り上げは顕著に伸びています。2024年1月期は247億円と、10期前(88億円、2014年1月期)から2.8倍に増加しました。1店舗あたりの売上高は、同じ期間に6790万円から1億3500万円へと大きく改善しています。
出所:丸千代山岡家 決算説明会資料より著者作成売り上げ好調な山岡家ですが、業界内では追う立場にあります。しかし増収率は高水準です。直近で同業他社が2~3割にとどまる中、山岡家は4割以上伸ばしました。高い成長率で売り上げを伸ばしライバルを猛追します。
【主なラーメンチェーン企業の売上高(2023年度)】
主な業態 売上高 売上高(前期比) ハイデイ日高 日高屋 488億円 +27.8% 力の源HD 一風堂 315億円 +20.6% ギフトHD 町田商店 276億円 +20.1% 丸千代山岡家 ラーメン山岡家 247億円 +41.9%
※ハイデイ日高は2024年2月期、力の源HDは2024年3月期(連結)、ギフトHDは2024年10月期(連結)、丸千代山岡家は2024年1月期
※ハイデイ日高と力の源HDは予想
出所:各社の決算短信
株高の理由は高い成長期待 ラーメン好調で財務も改善2023年に入り丸千代山岡家の株式が急騰したのは、好業績が期待されたためだと考えられます。
山岡家は売り上げを月次で公表しています。2024年1月期はすべての月で前期を上回りました。特に2023年12月と2024年1月は単月売上高が過去最高を記録します。業績の拡大を期待する思惑が広がり、投資家の買いを誘ったとみられます。
2024年3月に公表された通期決算でも、大幅な増収増益が確認されました。営業利益、経常利益、純利益はいずれも過去最高を更新しています。
【丸千代山岡家の業績(2024年1月期)】
・売上高:265億円(+41.9%)
・営業利益:20.6億円(+301.4%)
・経常利益:21.3億円(+266.1%)
・純利益:14.3億円(+246.2%)
※()は前期比
出所:丸千代山岡家 決算短信
山岡家の純利益は前期比のおよそ3.5倍に増加しました。不採算店舗の減損などから、2018年1月期は最終赤字となっていました。2024年1月期は減損が1店舗にとどまったことも、大きな最終利益を残すことができた理由です。
出所:丸千代山岡家 決算説明会資料より著者作成利益の改善は財務にも好影響を与えています。
山岡家の有利子負債は横ばいの状況です。しかし有利子負債比率は低下傾向にあります。2024年1月期までの10期で33.8%ポイント改善されました。これは利益の蓄積によって純資産および総資産が増加し、相対的に有利子負債が小さくなったことが理由です。
出所:丸千代山岡家 決算説明会資料より著者作成今期の業績はどうなる?積極的な採用で売上300億円を計画丸千代山岡家の今期(2025年1月期)の見通しは以下の通りです。業績が急拡大した前期と比べれば成長スピードは落ち着くものの、増収増益を見込みます。
【丸千代山岡家の業績予想(2025年1月期)】
・売上高:300億円(+13.2%)
・営業利益:22.8億円(+10.5%)
・経常利益:23.5億円(+10.2%)
・純利益:15.7億円(+9.8%)
※2024年1月期時点の同社の予想
※()は前期比
出所:丸千代山岡家 決算短信
今期の取り組みで目を引くのが採用計画です。年間で200人以上の中途採用を見込んでいます。2024年1月末の従業員は558人でした。計画通りなら、1年で35%以上増やす大幅な増員となります(出所:丸千代山岡家 決算説明会資料)。
従来の山岡家は採用に慎重な姿勢がうかがえました。2014年1月期と2019年1月期は従業員の数が減少しています。前期は100人以上増えていますが、直近10期の1年あたりの増加数は33人です。山岡家にとって、年200人の採用は挑戦的な目標だと考えられます。
出所:丸千代山岡家 有価証券報告書より著者作成採用に合わせ出店も進めます。
今期は関東と九州を候補地に10店舗を出店する計画です。また手薄な九州、中国、関西への出店に向け物件調査の強化にも取り組みます。既存店エリアでは、好調な店舗周辺でのドミナントも展開します。
より長期の取り組みは新しい中期経営計画の公表を待ちたいところです。
山岡家は2023年3月、2026年1月期までの中期経営計画を発表しました。しかし目標の大部分を2024年1月期に達成したことを受け、現在新しい中期経営計画を策定中です。
新中期経営計画は、今期の第1四半期決算の発表時に公表される予定です。積極的な目標が示されれば株価上昇の材料となるかもしれません。決算は6月の公表を予定しています。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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