ネット通販の“爆買い”で老後資金を切り崩した高齢女性…最後の切り札が使えず迎えた「寂しすぎる結末」
Finasee / 2024年5月30日 11時0分
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Finasee(フィナシー)
<前編のあらすじ>
田中さん(72歳・女性)はテレビで通販番組を見て「こんな商品があるのか」と漠然と眺めるのが趣味だった。見るだけで満足していたため実際に購入するようなことはなく、お金がかからない1つの趣味として楽しんでいた。
しかし、コロナ禍をきっかけにインターネット通販にのめり込むようになった田中さん。安いから、セールしていてお得だから……。何かと理由をつけてどんどん商品を購入してしまう。月の支払額が10万円を超えることも珍しくなく、気づけば自宅は段ボールが山積みに。
そんな田中さんの状況に気付いたのは、たまたま訪れた息子の剛さん(40歳・男性)だった。積みあがった段ボールや真新しい家電を見て、全てを察したようだ。「母さん、この段ボールは何?」。剛さんは怒りを抑えて、田中さんに問いかける。
●前編:【「全身に電流が走ったかと…」ネット通販にどハマりして“理性崩壊”した高齢女性の悲しい末路】
インターネット通販はまさかの「クーリングオフ対象外」問い詰められた田中さんは、最初こそ隠そうとしたが、剛さんの圧に負けて全てを語り始める。外出できない中、時間つぶしでインターネット通販サイトで買い物をしたこと。そこから買い物がくせになってしまい徐々に頻度や金額が増えていったことを告白した。
それを聞いて剛さんは「クーリングオフ」を田中さんへ勧め、筆者の行政書士事務所へ2人で訪れた。クーリングオフとは、一定の期間内であれば無条件で解約ができる。一方的な都合で商品を返品し、返金を受けられる制度というわけだ。
だが、クーリングオフは万能のカードではない。一定の制限が存在しておりその範囲内ではクーリングオフができない。私は相談に訪れた田中さんと剛さんにクーリングオフについて伝える。
「申し訳ございませんがインターネット通販においてクーリングオフは適用されません」
私は断腸の思いでそう伝える。
そもそもだが、一度成立した契約は当事者の同意なく覆せないのが原則である。買い物という契約において無条件に好き勝手にクーリングオフを認めてしまえば法治国家である日本の社会の在り方が揺らぐ。
そういった背景も踏まえクーリングオフには適用される範囲が厳格に定められている。一例としては、クーリングオフが適用されるのは訪問販売や電話勧誘販売、業務提供誘引販売取引(内職商法やモニター商法等)など特定の範囲に属する契約が挙げられる。
つまりは、突発的な出来事から契約につながった場合に限られる。それらに当てはまらないインターネット通販サイトでの買い物は対象外なのだ。
田中さんが迎えた「寂しすぎる結末」インターネット通販ではクーリングオフが適用できないとはいえ別の制度が利用できる。それは通常の商品の返品だ。店舗で買った商品でもレシートを持っていけば返品してお金を返してもらうことができるあれだ。インターネット通販においてもそれは利用できる。
「一般的には通販サイトには規約が存在しています。その規約に基づき返品をします」
私は2人に説明する。田中さんと剛さん、両名とも顔が明るくなる。
だが、急いでサイトの返品規約を確認していくと、購入から30日内や8日内など、サイトによって期日はばらばらだ。また返品条件も「未開封であること」などといろいろ条件付けされており、全てが返品できるわけではなかった。むしろほとんどが返品できない状態だった。
その額実に80万円超。田中さんの老後資金の一部を切り崩すしか方法がない。田中さんと剛さん、そして私との間には重い空気が漂った。
田中さんはそれ以来、剛さんによってインターネットの利用を監視されている状態だ。インターネット通販サイトは軒並み利用を禁じされた。
相談から数年たった今も田中さんはインターネット通販サイトを一切使えていない。それについて田中さんは「仕方ないことだと思うけど、楽しみを失って寂しい部分がある。心にぽっかり穴が空いたみたいです」と語っている。
***今、インターネット通販サイトを利用する高齢者は決して珍しくはない。その影響からか通販サイトで過剰な買い物をしてしまう高齢者の存在もじわじわ問題になりつつある。高齢者の買い物はクーリングオフで解除できるものも多いが、インターネット通販サイトはその対象外だ。
身内の高齢者の買い物について「クーリングオフがあるから」と特に中止をしていない場合、そこには大きな危険が迫っているかもしれない。クーリングオフはメディアでいわれる程万能な切り札ではないことを、私たちは知っておかなければならないだろう。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。
※登場人物はすべて仮名です。
柘植 輝/行政書士・FP
行政書士とFPをメインに企業の経営改善など幅広く活動を行う。得意分野は相続や契約といった民亊法務関連。20歳で行政書士に合格し、若干30代の若さながら10年以上のキャリアがあり、若い感性と十分な経験からくるアドバイスは多方面から支持を集めている。
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