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目薬のロート製薬が6期連続で最高益 逆風の化粧品セクターで快走する理由

Finasee / 2024年5月16日 17時0分

目薬のロート製薬が6期連続で最高益 逆風の化粧品セクターで快走する理由

Finasee(フィナシー)

近年、化粧品企業の株価が冴えません。主要な銘柄は直近5年で半値ほどに値下がりしました。コロナショックからの回復が鈍い企業も多く、株価は押される状況が続いています。

そんな中、ロート製薬の株式は堅調です。2024年4月末までの5年間で株価はおよそ2倍に上昇しました。

出所:Investing.comより著者作成

ライバル企業の株価が低迷する一方で、なぜロート製薬には買いが向かったのでしょうか。理由を探ってみましょう。またロート製薬が取り組む新規事業も紹介します。

「目」と「肌」のケア製品大手 人気ブランド多く業績は安定

まずロート製薬の概要を押さえましょう。

ロート製薬は医薬品や化粧品などを製造販売する企業です。主要な製品は目薬の「Vロート」や内服薬の「パンシロン」、機能性化粧品の「オバジ」や「肌ラボ」などがあります。子会社にはリップクリームの米メンソレータム社や「ボラギノール」の天藤製薬を持ちます。

社名はロートムンド博士に由来します。ロートムンド博士は、1909年発売の「ロート目薬」を処方した井上豊太郎(いのうえ・とよたろう)博士の恩師にあたる人物です。今や目薬はロート製薬の代名詞となっており、OTC(市販薬)領域では国内トップクラスのシェアを持つとみられます。

もっとも、売り上げの過半を占めるのはスキンケア製品です。スキンケア製品は海外でも人気があり大きな収益源となっています。例えば香港では「50の恵」ブランドが高シェアを持つほか、「メンソレータム」ブランドは中国やアメリカで浸透しています。

【製品別売上高(2023年度)】

  主な製品 売上高    アイケア  目薬、洗眼薬 534億円  スキンケア  外皮用薬、日やけ止め、機能性化粧品  1768億円  内服  胃腸薬、漢方薬 309億円  その他  体外検査薬 97億円

出所:ロート製薬 決算三共資料

【地域別売上高(2023年度)】
・日本:1569億円(57.9%)
・アジア:788億円(29.1%)
・アメリカ:186億円(6.9%)
・ヨーロッパ:139億円(5.1%)
・その他:28億円(1.0%)
※()は構成比

出所:ロート製薬 決算短信

業績も安定的です。売り上げはおおむね右肩上がりで増加してきました。赤字は2002年度を最後に出していません。2023年度は売上高および各利益段階で過去最高を更新しました。純利益ベースでの増益は2023年度で6期連続です。

出所:ロート製薬 ファクトブックより著者作成

今期(2025年3月期)も増収増益を見込んでいます。また配当金の増額も計画しており、実現すれば連続増配記録は21に達します。

【ロート製薬の業績見通し(2025年3月期)】
・売上高:3000億円(+10.8%)
・営業益:430億円(+7.4%)
・経常益:440億円(+3.7%)
・純利益:320億円(+3.4%)
※()は前期比
※2024年3月期時点における同社の予想

出所:ロート製薬 決算短信

ライバルは減益傾向 ロート製薬はなぜ好調?

冒頭の通り、主要な化粧品企業の株価が低迷する一方、ロート製薬の株式には買いが集まっています。これは業績の差が反映されているとみられます。

ロート製薬の営業利益は2023年度までの6期でおよそ2倍に増加しました。一方、資生堂とコーセー、ポーラ・オルビスHDは同じ期間で6~7割ほど営業利益を減らしています。ファンケルも2020年度から減益傾向が続いていましたが、2023年度に回復しおよそ5割に増益となりました。

出所:各社の決算資料より著者作成

ロート製薬とその他の化粧品企業は、新型コロナウイルスの流行以降に明暗が分かれます。

コロナ禍では活動の自粛が求められたため化粧品の需要が減少しました。特に海外では強力な行動制限や物流の混乱なども生じ、海外向けの売り上げが大きい企業は業績の悪化にみまわれました。

ロート製薬もコロナ禍では海外を中心に苦戦します。しかし国内売上高比率が比較的高いこと、化粧品以外の製品も手掛けることから影響は限定的でした。感染が拡大した2020年度も減収率は4%程度で済んでいます。また広告費や販促費を抑制したことから、営業利益の減益率は1%未満にとどまりました。

むしろ経常利益と純利益は増益しました。受取配当金や持分法の投資利益といった営業外収益が増加したためです。これらの影響から、ロート製薬は競合より小さなダメージでコロナ禍を乗り越えました。

脱コロナが進んだことから化粧品市場は持ち直します。ただし、俯瞰すると売り上げの回復が鈍い企業や、化粧品の製造や販売にかかる費用の増加に悩まされている企業もあります。業績悪化に伴う構造改革費を計上する企業も見られました。

ロート製薬がライバルより早いペースで成長できたのは、コロナの傷が浅く、また化粧品以外の収益源も持つことが理由にあると考えられます。

2030年までの長期ビジョンを推進中 収益化目指す3つの新規事業とは

最後にロート製薬が取り組む3つの新規事業を紹介します。

ロート製薬は創業120周年を迎えた2019年、2030年までの長期目標として「経営ビジョン2030」を策定しました。その中で6つの事業領域へ注力する方針を明かしています。

うち新規事業は「成長投資事業」とした医療用眼科領域と再生医療、開発製造受託(CDMO)の3つです。「コア事業(既存事業)」に加え、より専門的な領域へ進出することで収益機会の獲得を目指します。

【「経営ビジョン2030」における6つの事業領域】
・成長投資事業:医療用眼科領域、再生医療、開発製造受託(CDMO)
・コア事業:OTC医薬品(一般用医薬品)、スキンケア、機能性食品・食品

出所:ロート製薬 「ロート製薬 HEALTH VALUES REPORT2019」制作について

医療用眼科領域と開発製造受託は早期の収益化を図ります。

医療用眼科領域では、2020年に医療用眼科用薬メーカーの日本点眼薬研究所(現・ロートニッテン)を子会社化しました。臨床試験も進めており、早いもので2026年の承認を目指しています(2024年5月現在)。

開発製造受託では製造拠点および研究拠点を新設し、生産能力の強化に取り組んでいます。当面はグループ子会社とシナジーが期待できる内服薬、医療用眼科用薬、再生医療で開発受託可能な体制の整備を目指します。

再生医療は中長期で収益化を目指します。2021年にはオリンパスの再生医療子会社(現・インターステム)を買収しました。日本でパイプラインを進捗させると同時に、中国での展開を見込み現地企業と合弁会社設立に向けた契約を進めています。

ロート製薬の新規事業は成功するのでしょうか。投資家の関心が集まります。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)

若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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