イオンが売上10兆円でセブンに迫る! 営業益も過去最高でツルハを子会社化、今年は上場50周年の記念配当も
Finasee / 2024年5月21日 17時0分
Finasee(フィナシー)
イオンがついに売り上げ10兆円が視野に入りました。流通企業で10兆円の売り上げはセブン&アイHDに続いて2社目です。積極的な出店とM&Aで規模を拡大し首位のセブン&アイHDを追い上げています。
【イオンの業績】
売上高 純利益 2023年2月期 9兆1168億円 214億円 2024年2月期 9兆5536億円 447億円 2025年2月期(予想) 10兆0000億円 460億円※2025年2月期(予想)は2024年2月期時点における同社の予想
出所:イオン 決算短信
出所:Investing.comより著者作成イオンは「JPXプライム150指数」メンバーの1人です。市場評価性(PBR基準)の高さから指数に採用されました。
イオンの概要と今期(2025年2月期)の見通しを押さえましょう。また2024年2月に発表したツルハHD子会社化のスケジュールも紹介します。
流通の代表格、金融や不動産も収益源 海外はアセアンを重視イオンは多様な業態を展開する総合小売業です。中核業態は総合スーパーとスーパーマーケット、ディスカウントストアです。M&Aを通じドラッグストアや専門小売店も取得してきました。
また非小売事業として銀行やクレジットカードなどの金融業や、商業施設でテナント料を得る不動業も展開しています。連結子会社の数は300社超、従業員は16万人に達しています(2023年2月)。
【セグメントの状況(2024年2月期)】
主な子会社 売上高 GMS イオンリテール 3兆3893億円 SM ダイエー、いなげや、ミニストップ 2兆7821億円 DS イオンビッグ 4004億円 ヘルス&ウエルネス ウエルシアHD 1兆2351億円 総合金融 イオンフィナンシャルサービス 4835億円 ディベロッパー イオンモール、イオンタウン 4683億円 サービス・専門店 キャンドゥ、ジーフット 7974億円 国際 イオンストアーズ香港 5087億円※GMS:総合スーパー、SM:スーパーマーケット、DS:ディスカウントストア
出所:イオン 決算説明会資料
かつてイオンは流通首位の地位を占めていました。しかし2021年度に売り上げでセブン&アイHDに追い抜かれています。セブン&アイHDが米コンビニのスピードウェイを取得したためです。連結でイオンの売り上げを上回り、差は翌年度に2兆7000億円まで拡大しました。なお、今期(2025年2月期)は1兆2500億円にまで縮まる見込みです。
出所:各社の決算資料より著者作成地域別で見ると、イオンの国内の売り上げはセブン&アイHDの3倍です。しかし海外ではセブン&アイHDに大きな差を付けられています。イオンは最重要国に位置付けるベトナムのほか、マレーシアやカンボジアで出店を進め海外を強化しています。
【イオンとセブン&アイの地域別売上高(2024年2月期)】
イオン セブン&アイ 日本 8兆7393億円 2兆9006億円 海外 8142億円 8兆5712億円 (参考)連結 9兆5536億円 11兆4718億円※セブン&アイの海外のうち米国:8兆1376億円
出所:各社の決算短信
今期は利益も過去最高 上場50周年の記念配当も予定今期(2025年2月期)の見通しはどうなっているのでしょうか。
イオンは今期に売り上げ10兆円を計画しています。全セグメントで増益を予想しており、連結の各段階利益でも増益を見込んでいます。計画通りなら、営業利益と経常利益は過去最高を更新します。
【業績の見通し(2025年2月期)】
・売上高:10兆円(+4.7%)
・営業益:2700億円(+7.6%)
・経常益:2600億円(+9.5%)
・純利益:460億円(+2.9%)
※()は前期比
出所:イオン 決算短信
今期計画には想定される費用の増加分も反映されています。前期比で人件費は650億円、水道光熱費は100億円、物流費は40億円の増加を見込みます。人件費には戦略的な積み増し分500億円も含まれます。
近年は特に人件費の上昇が顕著です。2024年2月期は前期比で800億円以上増加しました。今期も人件費の増加を見込みますが、増加幅はやや緩やかになる見通しのようです。
出所:イオン 決算補足資料より著者作成成長投資も拡大させます。
イオンは今期に5000億円~5500億円の投資を計画しています。前期は3962億円で、中期経営計画(2021年度~2025年度)の期間中は平均して4000億円~4500億円を投じる計画でした。
投資の内訳は店舗に75%(国内50%、海外25%)、デジタル・物流に25%です。海外の出店を進めるとともに、国内はネットスーパーや店舗のデジタル化を強化し、収益の向上を図ります。
また、今期は記念配当の予定もあります。
イオンは1974年9月に上場しており、今期は上場50周年にあたります。それを記念し、上乗せの配当金を出す予定です。
予想配当額は1株あたり40円です。2024年5月10日終値(3336円)で計算した配当利回りは1.2%となります。
【予想配当(2025年3月期)】
中間 期末 通期 普通配当 18円 18円 36円 記念配当 2円 2円 4円 合計 20円 20円 40円出所:イオン 決算説明会資料
ツルハ子会社化を発表 好採算のドラッグストアで利益率改善へイオンを巡ってはツルハHDの子会社化も話題です。
イオンとウエルシアHDは2024年2月、ツルハHDと経営統合に向け協議を開始したと発表しました。一連の取引を経て、最終的にツルハHDはイオンの連結子会社、ウエルシアHDはツルハHDの完全子会社となる内容です。合意は遅くとも2027年末までの締結を目指しています。
ウエルシアHDはドラッグストア業界で首位、ツルハHDは2位の企業です。統合が実現すれば売上高2兆円を超える企業連合が誕生します。
【主なドラッグストア企業の売上高(2023年度)】
・ウエルシアHD:1兆2173億円
・ツルハHD:1兆0330億円(※)
・マツキヨココカラ:1兆0225億円
・コスモス薬局:9160億円(※)
・スギHD:7445億円
※ツルハHDとコスモス薬局は第3四半期時点の予想、その他は実績
出所:各社の決算短信
ドラッグストアは好採算の事業です。イオンの小売事業において、ドラッグストアのヘルス&ウエルネスは営業利益、営業利益率ともに最大です。
出所:イオン 決算説明会資料より著者作成イオンは2025年度までに営業利益3800億円、営業利益率3.5%を目指しています。2023年度の実績はそれぞれ2508億円、2.6%でした。利益率の高いドラッグストア事業を強化し、目標の達成を目指します。
なお、統合に先立ってイオンは香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントからツルハHDの株式を取得します。取得は2024年3月を予定しており、議決権比率は19.9%に達する見込みです。
法令の許認可等を得られれば、イオンはツルハHD株式を追加取得します。追加取得で議決権比率は27.2%に達し、ツルハHDはイオンの持ち分法適用子会社となる見込みです。
持ち分法適用子会社となった場合、ツルハHDの経営成績はイオンの営業外損益に反映されるとみられます。統合の最終的な合意は2027年末までとしていますが、ツルハHD取得の影響はそれより早く表れそうです。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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