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「お宝を換金しただけなのに」“棚ぼた”で手に入れた500万円を使い切った夫婦の「信じられない結末」

Finasee / 2024年5月31日 11時0分

「お宝を換金しただけなのに」“棚ぼた”で手に入れた500万円を使い切った夫婦の「信じられない結末」

Finasee(フィナシー)

<前編のあらすじ>

私の実家は東北地方の農村にあります。7年前に父、2年半前に母が亡くなり、ひとり息子の私が引き継ぐことになりました。実家は築50年の昭和の建物で、新幹線の駅からのアクセスも悪く、取りえと言えば建坪が100坪と広いことくらいです。

近年は放置された空き家が社会問題化し、行政サイドからの対策も厳しくなってきているので、早めに更地にした上で売るか、それが難しければ相続土地国庫帰属制度を活用して国に引き取ってもらうことを考えていました。

そのためには物があふれた家の中をきれいにする必要があり、週末や祝日の連休を利用して月に1~2回は妻と一緒に帰省し、実家の片付けにいそしみました。

●前編:【「顔面蒼白になりました」実家で“お宝”を発見して大喜び…散財が止まらない夫婦が青ざめた「一通の書類」】

大金を得た佐藤さん夫妻の散財ぶり

1年半年ほどして母屋の片付けが一段落し、別棟の蔵に着手したところ、蔵の奥の方に積み重ねてあったつづらの1つから意外な“お宝”が見つかりました。年代物の金の延べ棒です。

表面は変色し、いつの時代のものかも分かりません。しかし、これは私たちが実家の片付けを頑張ったことに対するご先祖さまのご褒美に違いないと思いました。持ち帰って妻が買い取り商で換金したところ、金価格が上がっていたこともあって500万円近くになりました。

思いがけぬ収入に、私たちはすっかり浮き足立ちました。換金したお金で今住んでいる妻の実家のリフォームをグレードアップし、冷蔵庫やテレビを買い替え、妻が行きたかった沖縄のリゾートに妻の両親も誘って出掛け、さらに、お互いが欲しかった服や腕時計を購入するなどして、あっという間に500万円を使い果たしました。

「どうせ『棚からぼた餅』だし」と気楽に考えていたところ、その次の年の1月に、わが家に税務署から通知が届いたのです。金の売却で得た利益の確定申告を促す内容でした。

私たちにとっては青天のへきれきでした。

仕方なく税理士事務所へ相談することに

慌てて換金した買い取り商に電話を入れると、「金の売却益は譲渡所得になりますので、特別控除50万円を超えた分は申告、納税が必要です」と説明されました。聞けば、買い取り価格が200万円を超える場合は、業者から税務署に支払い調書が提出されるのだそうです。

しかし、いきなりそんなことを言われても金投資などしたこともない私たちは戸惑うばかりです。仕方なく、ネットで探した税理士事務所に相談に行きました。そこでは若い税理士さんが丁寧に金の確定申告について教えてくれました。

いわく、金の売却益は「譲渡所得」となること、譲渡所得の課税方式には税額を他の種類の所得と合わせて計算する「総合課税」と他の所得とは切り離して計算する「分離課税」があり金は前者の総合課税となること、金の売却益は売却して手にした金額そのものでなく購入した額(取得価額)や売却の手数料などを差し引けること、5年以上保有していれば課税所得が2分の1になること……といった話です。

しかし、私たちが売却した金の延べ棒は偶然発見したものですから、購入時期や取得価額など見当もつきません。そもそも、先祖の誰が買ったものかも分からないのです。それを話すと、担当の税理士さんの表情が曇りました。

そして、「そうですか。佐藤さんのようなケースだと、売却した価格の5%を取得価額として計算することになってしまうんです。せめて購入時期が特定できれば、その時期の金価格を参考にした取得価額で申告することができるかもしれないんですけどね」と気の毒そうに言いました。

佐藤さん夫婦が迎えた「信じられない結末」

結局そこの税理士事務所で確定申告の手続きをしてもらったのですが、私の給与所得などとあわせた総合課税だったことも裏目に出て、所得税だけで税率が33%となり、100万円近い税金を納める羽目になりました。

棚ぼたの売却益は使い果たした後で、スズメの涙の預金から別途リフォーム代200万円も支払ったばかりでしたから、かなりの痛手になりました。

税理士さんからは「相続税の申告をしなくて済んだのは不幸中の幸いですよ」と妙な慰め方をされました。実家から相続したのは二束三文の不動産だけで金目の資産はほとんどなかったため、相続時点の金の延べ棒の評価額を加算しても、相続税の基礎控除(私の場合は法定相続人が1人なので3600万円)に届かなかったのです。

税理士さんの話によると、最近は相続税の申告を終えた後に何百万円ものタンス預金が見つかったり、税務署から家族も知らなかった暗号資産の取引を指摘されたりして、修正申告をするケースがぼちぼちあるのだそうです。

追徴課税をされずに済んだのは確かにラッキーだったのかもしれませんが、そもそも、たまたま見つけたお宝を換金しただけで税金を払わなければならないということ自体、いまだもって解せない気持ちです。

※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。

森田 聡子/金融ライター/編集者

日経ホーム出版社、日経BP社にて『日経おとなのOFF』編集長、『日経マネー』副編集長、『日経ビジネス』副編集長などを歴任。2019年に独立後は雑誌やウェブサイトなどで、幅広い年代層のマネー初心者に、投資・税金・保険などの話をやさしく、分かりやすく伝えることをモットーに活動している。

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