「ただ成功を祈っていたのに…」夢を追う友人に“大金”を注ぎ込んだ男性が受けた「あり得ない裏切り」
Finasee / 2024年6月5日 11時0分
Finasee(フィナシー)
契約書や遺言書、法律が関わる場面における最強の書面といわれるものに公正証書がある。その強さゆえSNSなどでは「公正証書さえ作っておけば安全」とまでいわれることもあるほどだ。だがしかし、公正証書は致命的な弱点も有している。今回は友人に起業資金として700万円貸した忍田さんの話を紹介しよう。
これで返済漏れはないと豪語する忍田さん忍田さんには10年来の友人がいる。同じ大学出身の吉川さんだ。吉川さんは起業の夢に向けて資金集めをしており、今まさに忍田さんは彼へのお金の貸し付けについての話が決まったところだ。
だが、忍田さんには不安がある。それは吉川さんが起業に失敗した場合だ。最初から失敗を疑うわけではないが、やはり気になる部分ではある。
そこで忍田さんは先日SNSで見た「公正証書」なるものを作成しようと吉川さんに提案した。吉川さんも約束事は重要視しているようで快諾。それに当たり、事前に忍田さんから依頼を受け筆者が案文を作成、後日2人そろって公証役場にてその案文を基に公正証書を作成する運びとなった。
作成する公正証書の内容について簡単に記載すると「1年目は返済不要。2年目からは毎月10万円の返済をし、1回でも返済が滞れば一括返済することと、強制執行での差し押さえがなされることに同意する」といったようなものだ。
「これで返済がされないことはないから安心です」
忍田さんはそう安心しきったという。
そもそも「公正証書」とは?忍田さんと吉川さんが作成した公正証書とはどのような書類なのだろうか。
公正証書について一言でいうなれば、法の専門家で国から権限を与えられた準公務員の公証人と呼ばれる人が作成する文書だ。公正証書とすることで公的な文書扱いとなり、そこに記載されている内容は基本的に間違いのない事実として扱われることになる。この証明力の強さこそが公正証書最大の特徴であり、世間的に信用されさまざまな場面で利用されている理由である。
また、公正証書はその証明力ゆえ、裁判手続きではすぐに証拠として利用できる。一般の書類であればその書類が正しいものであると証明しなければ証拠となりえないのだが、公正証書はそれが不要だ。つまりこれ1枚提出するだけで事実関係を確定させ勝敗を決することができる“強力なカード”となるわけだ。
加えて公正証書には執行力と呼ばれる力もある。執行力とは「債務者は直ちに強制執行に服する」といったような文言を記載することで、相手の金銭を強制執行にて差し押さえすることができるものだ。
通常強制執行をするには裁判で確定判決を得る必要があるが、公正証書があればそれが不要になる。つまり、簡易かつ迅速に相手財産の差し押さえが可能になるわけだ。
とはいえ、裁判をすれば数カ月単位の時間と数十万、百万単位のお金がかかることも珍しくない。しかし、最初に公正証書を作成すれば数時間と数万円とわずかな時間とお金をかけるだけでそれを省略でき、万一の際非常に有用な効果をもたらす。
こういった2つの大きな力から、公正証書は忍田さんたちのような金銭の貸し付けの他、養育費の支払い、財産分与など金銭の支払いを目的とする場面で利用されている。
返済が滞る吉川さん案の定というべきか、吉川さんからの借金の返済が滞りだした。条件はお金の貸し付けから1年の経過後から毎月10万円ずつ返済するというものだったが、返済されない月が徐々に出てきたのだ。
当初は「すまない、返済が滞りそうだ」と吉川さんは心から申し訳なさそうな表情で忍田さんに頭を下げたという。それを見た忍田さんは友人の姿に心を痛め、返済の猶予を快諾する。そのうえで「経営の方は大丈夫なのか?」と吉川さんを気遣う余裕さえあった。
忍田さんは返済よりも友人の起業の成功を心配しており、返済については二の次、三の次に感じ、ただただ友人の成功を祈っていた。だが、忍田さんのその気持ちは徐々に小さくなっていく。なぜなら次第に吉川さんの態度が「返済は滞ることが当たり前」といったものになっていったからだ。
●年数を重ねるごとに返済が滞る吉川さんに、忍田さんが取った行動とは? 後編【「そうだ、差し押さえよう」お金を返さない“ヤバい友人”へ強硬手段に出た男性が迎えた「まさかの結末」】で詳説します。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。
※登場人物はすべて仮名です。
柘植 輝/行政書士・FP
行政書士とFPをメインに企業の経営改善など幅広く活動を行う。得意分野は相続や契約といった民亊法務関連。20歳で行政書士に合格し、若干30代の若さながら10年以上のキャリアがあり、若い感性と十分な経験からくるアドバイスは多方面から支持を集めている。
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