「そうだ、差し押さえよう」お金を返さない“ヤバい友人”へ強硬手段に出た男性が迎えた「まさかの結末」
Finasee / 2024年6月5日 11時0分
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<前編のあらすじ>
忍田さんには、吉川さんという同じ大学出身の友人がいる。吉川さんは夢であった起業に向けて資金集めをしていて、忍田さんも吉川さんにお金を貸し付けた1人だった。
ただ、忍田さんには吉川さんが起業に失敗した場合のお金の返済に不安があった。そこで忍田さんは、最近SNSで見た「公正証書」を作成しようと吉川さんに提案し、吉川さんも快諾。貸し付けたお金の返済について、公正証書が作成された。
その後、忍田さんの懸念は的中する。吉川さんからの返済が滞りだしたのだ。はじめのうちは申し訳なさそうな表情で忍田さんに頭を下げる吉川さんだったが、次第に「返済は滞ることが当たり前」といった“あり得ない態度”をとるようになった。
●前編:【「ただ成功を祈っていたのに…」夢を追う友人に“大金”を注ぎ込んだ男性が受けた「あり得ない裏切り」】
ついに返済が途絶える当初は約束していた期日の前に、吉川さんから忍田さんへ返済が滞ることへの相談があった。しかし、年数を重ねるごとに期日当日になってからの相談になった。4年に入るころには期日後での相談になった。そして、5年目を迎えるころにはついに毎月の返済はされることがなくなっていた。
お金の貸し付けから6年目を経過した日、2人は今後の返済について話し合うためにおよそ1年半ぶりに顔を合わせた。
「返済はもう無理だ」
開口一番悪びれる様子もなく吉川さんが言葉を発した。ろくに目も合わせず投げやり気味のセリフだった。ここで忍田さんの堪忍袋の緒が切れた。
「いい加減にしろ! 当初の約束はどうなった⁉」
それに対して吉川さんは逆ギレする。
「起業は大変なんだ、会社員でぬくぬくしてるお前には分からねえよ!」
喫茶店で会話をしていた2人だが話し合いはろくになされずほぼほぼ水掛け論だ。お金をきちんと返せ、返せないの押し問答。小一時間ほどそれを繰り返し忍田さんの方が身を引いた。
そして忍田さんは決意した。
「そうだ。公正証書を使って差し押さえをしよう」
公正証書の効力に隠された意外な落とし穴事実は小説よりも奇なりとはいったもので、物語のオチは意外な結末を迎える。忍田さんの差し押さえは失敗に終わったのだ。忍田さんは公正証書を用いて強制執行をしたのだがそれが空振りに終わったからだ。
読者諸兄はこの点について「?」と疑問に思っただろう。それについて順に解説していく。
そもそもだが強制執行して財産を差し押さえようにも相手に財産がなければそれができないのだ。公正証書があってもその点に変わりはない。忍田さんが公正証書の記載内容に沿って差し押さえ手続きを実行しても吉川さんに財産がなければそれは空振りに終わる。
「公正証書さえ作れば絶対に安全だと思っていたのに……」
忍田さんは当時のことをそう振り返った。
公正証書は契約が履行されることの保証書ではない忍田さんは2024年5月現在でも1円たりとも吉川さんから返済を受けられていない。吉川さんの事業はうまくいっておらず、今後うまくいく見込みもない。なぜなら吉川さんは現在事業活動をほとんど行っておらず、無職の状態であるからだ。
そうなると今後忍田さんが吉川さんから返済を受けることはもちろん、差し押さえによって返済を実現することは現実的に不可能だ。
公正証書は、確かに記載されている内容が事実として扱われるようになる強力な書類である。しかしながら、そこに記載されている内容が必ず実現されるという保証書ではない。差し押さえがうまくいかず空振りに終わることは決して珍しくはないのだ。
最後に忍田さんは私にこう伝えた。
「まさか、財産がないと差し押さえができないというのは盲点でした。SNSで見たことをそのまま信じ込むのは危険ですね」
SNSでは公正証書について絶対の文書のように扱われることも少なくない。だが、金銭の取り立てを最終的な目的とする場合、差し押さえについてまで考えなければ、公正証書はただの紙切れになるリスクがあることを知っておかなければならない。
繰り返すが公正証書は絶対の保証書ではない。公正証書を作成する際は必ず、万一のこととなった場合は相手の財産をどのように差し押さえるか。ここまで考えて作成を依頼するべきだろう。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。
※登場人物はすべて仮名です。
柘植 輝/行政書士・FP
行政書士とFPをメインに企業の経営改善など幅広く活動を行う。得意分野は相続や契約といった民亊法務関連。20歳で行政書士に合格し、若干30代の若さながら10年以上のキャリアがあり、若い感性と十分な経験からくるアドバイスは多方面から支持を集めている。
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