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幸福度が世界51位の日本は“不幸な国”なのか? 日本人が幸せになるために向き合うべき「最も大切な問題」

Finasee / 2024年6月4日 11時0分

幸福度が世界51位の日本は“不幸な国”なのか? 日本人が幸せになるために向き合うべき「最も大切な問題」

Finasee(フィナシー)

世界幸福度調査が51位と低い日本

毎年3月に公表される世界幸福度調査というものがありますが、日本は毎年ランキングが低いことが話題となります。2024年3月に公表されたランキングでも51位となっています。

このランキング、6つのキーワードで幸福度を分析していますが、日本は客観的な指標では好成績をあげています。具体的には、健康寿命は世界トップですし、GDPも上位の水準です(少なくとも51位ではないですよね)。

ところが、主観的な数字を見る指標で中位~低位にとどまっていることが災いしています。人生の選択に自由があるか、社会的なつながりの有無、政治の腐敗、寄付の有無などを聞く設問があるのですが、いずれも主観的に答えてもらうと、日本はあまり高い得点とならないのです。

東洋の価値観では「私? すごく幸せです!」と答えるより「えー、普通くらい?」と答える人の方が多いことが影響しているのではという意見もありますが、でもやはりもうちょっと高いランキングでもいいように思えます。

そもそも、日本ってそんなに不幸な国なのでしょうか。

先進国の若者が幸福を感じにくい理由とは

もうひとつ、2024年版の世界幸福度調査のレポートで指摘されている項目に興味深い指摘があります。それは「先進国の若者の幸福度は相対的に低い」というものです。先進国の多くでは、高齢者の幸福度と若者の幸福度を比較すると、高齢者の方が幸福度が高くて、若者の方が低くなるというのです。

新興国などでは経済の発展がめざましく、その恩恵を現役世代が強く受けます。生活が日々豊かになっているという実感も得られるのでこれまた幸福度を高めます。

一方で、社会が成熟し高齢社会になると若い世代の生活の変化は小さくなり、どうしても幸福度を実感しにくくなります。むしろリタイアして安定的な生活に入った高齢者の方が、過去の豊かさ獲得の歴史を回顧しつつ、今も幸福度を実感できるのかもしれません。

日本の若い世代が特に幸せを実感できていないのだとしたら、これはもったいないことです。

「当たり前の幸せ」を実感するために必要な視点

あなたは自分の豊かさについて考えたことがあるでしょうか? そもそも、豊かさについて真剣に考えたことがない人がほとんどでしょう。「今より豊かになることはないのでは?」と未来を悲観的に捉えている人もいるかもしれません。

でも、あなたの生活は歴史的に見れば最も豊かな水準にあります。日本で暮らしていて日常的に生命を脅かされることはありません。泥棒や強盗のような犯罪を心配することも少ないでしょう。世界的に見れば、喫茶店や電車内でうたた寝できるのは驚くべきことで、安全な社会環境が日本にあることを示しています。また、上下水道や電気ガスなどの整備状況、道路や電車などのインフラの整い方、水が安全で安価に手に入ること、食の不安の少ないことなども、日本の豊かさの象徴です。

これらも数行で書いてしまうと当たり前のことを羅列しているように思えますが、海外に出かけたことがある人は強く実感したことがあるはずです。日本に暮らしていると気付くことが難しい「当たり前の幸せ」はたくさんあるのです。

日常生活の水準も歴史的に最高の豊かさです。このコラム、多くの人はスマートフォンで読んでいると思いますが、インターネット回線が高速かつ手軽に利用でき、それをスマートフォンやタブレットという技術革新により簡単に使えるようになったのも、まさに豊かさです。情報の受信だけでなく発信も簡単にできるようになりました。

住環境もそうです。50年前に学生が一人暮らしをすると「トイレ共同、風呂なし、エアコンなし、壁うすくて音が筒抜け」というものでしたが、今では考えられません。細かいところで私たちの生活はアップグレードされてきたのです。

もしかしたら、自分と過去の日本とを比べる視点を持てば、今よりちょっと幸せを多く実感ができるようになるかもしれません。

日本人が向き合うべきは「お金の問題」

幸福、あるいはウェルビーイングについては、近年研究が進められています。かつては幸福とは理屈ではない、と断じられていた部分にスポットライトが当たり始めています。

ウェルビーイングの向上、幸福度の向上を考えたとき、“心の持ちよう”は重要なポイントです。例えば、日々感謝や挨拶を声に出す人とそうでない人はウェルビーイングが違ってくるという研究があるそうです。

一方で、不安の解消を分析したとき、特に先進国に暮らす私たちにとって最も大切なのは「お金の問題」をスッキリさせることです。現在と将来のお金の不安というものはやっかいで、幸福の実感を小さくさせてしまうからです。「今月、赤字にならずにやりくりできるかしら……」「将来、心配なく老後を過ごせるのだろうか……」という不安を抱えているままでは、やはり幸せを感じにくくなります。

内閣府の「「満足度・生活の質に関する調査」に関する第1次報告書」では、世帯年収が一定水準を上回ることが幸福度に強く影響するとされています。日々の生活の不安を解消できるくらいお金を稼げることは幸福度に直結しているというわけです。

第一生命経済研究所の「第12回ライフデザインに関する調査」によれば、家計の満足度と幸福度は強い関係があるとしています。もちろん家計の安定がもたらされ、不安がない方が幸福度は高くなります。

だとすれば、私たちはお金の問題ともっと向き合ってみることで、もっと自分の幸せを実感し、より高い幸福度を得ることができるかもしれません。それは、「たくさん稼げば幸せになる」という単純な話でもなければ「たくさん出費をすれば幸せが手に入る」という簡単な話でもありません。しかし、いくつかのヒントを知っているかいないかで、あなたはもっと幸せを手に入れられるようになるはずです。

本連載ではこれから、お金の不安を小さくし、幸せを上手に感じられるようなお金との関係づくり、ファイナンシャル・ウェルビーイングについて考えてみたいと思います。

山崎 俊輔/ファイナンシャルプランナー

1972年生まれ。フィナンシャル・ウィズダム代表。1995年中央大学法学部法律学科卒業後、企業年金研究所、FP総研を経て独立。確定拠出年金を中心とした企業年金制度と投資教育が専門。著書『普通の会社員でもできる 日本版FIRE超入門』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『共働き夫婦 お金の教科書』(プレジデント社)、『ファイナンシャル・ウェルビーイング』(青春出版社)など多数。

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