何度逃げても “ヤバすぎる義家族”に必ず見つけ出されてしまう…子を思う女性が取った「覚悟の行動」
Finasee / 2024年6月10日 11時0分
Finasee(フィナシー)
<前編のあらすじ>
関西地方在住の行田優芽子さん(仮名・40代)は、高校卒業後に派遣社員としてレジャー系企業で働くことになり、そこで教育担当となった男性と交際に発展。初めて彼の実家に訪れた際、行田さんは家の中の至る所に宗教的なものが置かれていることに気付き、思い切って彼に確認する。
彼から「ああ。俺も子どもの頃は母さんに連れられて通っていたけど、俺はもう信仰してないよ。それに母さんもきょうだいも、絶対に勧誘して来ないから大丈夫だよ」と説明を受け、安心する行田さん。
その後、彼と入籍して義家族と同じマンションに住むことになり、ついに恐れていた事態が起こる。義母から毎日のように呼び出されては、正座で聖書の復唱をさせられたのだ。
●前編:【「タメになるお話をしてあげる」義母に連日呼び出された女性が恐怖した義家族の「異常な言動」】
摂食障害義実家で洗脳まがいの恐ろしい出来事を体験したあと、行田さんは摂食障害を発症し、持病の肝臓病を悪化させてしまう。それに伴い44㎏ほどだった体重が、5カ月ほどの間に80㎏台まで激増。就いたばかりの仕事も退職してしまった。
「私が義実家でひどい仕打ちを受けた日、彼は会社の研修で不在でした。また次、彼が仕事などで不在の時が来たらと思うと怖くて、私を苦しめました」
行田さんの変化に彼は気付き、心配してくれたが、行田さんは義母と義兄からの仕返しが怖くて何も言えなかった。
その後も行田さんは、義母からの呼び出しがあれば義実家に行った。義実家には義母の他に、自称“パニック障害”でニートの義弟(当時26歳)がおり、義母や義弟の機嫌を損ねると、罵倒されるようになった。
初めての大げんかそれでも2人は結婚式を挙げ、結婚式後も義母の呼び出しは続いた。
ある日義母が、「牧師先生」と行田さんとの面談を決めたと言う。
その夜、行田さんは家に帰らずに街をさまよい歩いていた。ふらふらと歩いていると携帯が鳴る。見ると夫からの着信とメールが何件もある。時計を見ると日付が変わっている。
電話に出ると夫は心配していた様子で、車で迎えに来てくれた。車に乗ると、行田さんは泣きながら、引っ越してきてから義母や義きょうだいたちにされてきたことを話した。
せきを切ったように話し続ける行田さんに対し、突然夫は叫ぶように言った。
「もういい!」
びっくりした行田さんは、何も言えなくなってしまう。
「優芽子ちゃん、母さんや兄貴たちのことボロカスに言うけど、母さんたちがホンマに勧誘してくるん? 何でこんなことになるん?」
それを聞いた行田さんは思わず笑ってしまう。
「何でって、あんたの親兄弟が異常やからやん! 私が話したことはうそじゃない!! 全部あんたがいないところでされて来た! 結婚パーティーで怒鳴るお義母さん見てるはず! それでも私を疑うなら疑えば良い!」
気付けば初めて夫を「あんた」呼ばわりしていた。
手術と入院で200万円それからしばらくは、夫が義母や義きょうだいに厳しく注意してくれたため、呼び出されることはなかった。
ところが義母が救急車で運ばれたと夫に連絡が入る。義母は車を運転中、猛烈な頭痛とめまいで運転操作を誤り、単独事故を起こしたとのこと。脳内出血のため、早急に開頭手術が必要な状況だと判明し、手術を受けることに。
手術は成功し、義母は約2カ月の入院を経て、退院が決まった。すると義兄が行田さんと夫に病院からの請求書を見せ、義母の手術・入院費用を夫と折半しようと言う。
「もう20年近く前の出来事のため、100%正確ではありませんが、開頭手術と入院費用で200万円以上の請求があったと記憶しています。当時26歳の無知な私でも、この金額はおかしいと思いました。義母は『神様に守られているから』と、公的医療保険も民間の保険もいっさい入っていなかったのです。もちろん、高額療養費請求も使えません」
これにはさすがに夫も抵抗。しかし結局義兄にはかなわず、夫は100万円を行田さんの両親に借りて支払った。
義母の退院から数日後、行田さんは夫と義兄を前に、両親から借りた100万円をいつ返してもらえるのかをたずね、こう言った。
「そもそもお義母さんが国保にも民間の保険にも入っていなかったから、あんな高額な請求が来たんですよね? 私の実家とは関係ないことです。お義母さんから100万円を返してもらいます!」
すると義兄は激昂。
「それはおかしいだろう! 母親の大変な時に息子が助けて何が悪い! 優芽子ちゃんの親が出したのならそれはくれたのだろう! 出せる人間が出したら良いんだ! お前もそう思うだろう!」
話を振られた夫は困惑。
「まぁ、借りたのは俺だし……。優芽子ちゃんのお父さんは返すのはいつでも良いって言ってたし……」
カチンと来た行田さんは、「私の親を巻き込まないで! そっちの家族間で解決してよ!」と叫ぶ。
「うちの弟や妹に金があるわけないだろう! あいつらに迷惑かけるな!」と義兄。
「私の親に迷惑をかけるほうがおかしいですよね! じゃあお義兄さんが弟さんと妹さんの分を立て替えて……」
行田さんが言い終わらないうちに、義兄は机をたたいて出て行ってしまった。
毒家族との別離宗教を盲信していた義母は、社会から孤立していた。行田さんが知る限りでは、義父は夫が中学生、義弟と義妹が小学生の頃に行方をくらまし、以降はすでに成人していた義兄が一家の大黒柱として家計を支えてきたらしい。
行田さんいわく、義母のみならず、夫も義きょうだいたちも皆常識知らずで、年金や保険のことを知らなかっただけでなく、最初の頃は夫も、他人に何かをしてもらってもお礼もせず、食事のマナーも最悪だったという。
夫は行田さんと出会ったことで、徐々に社会性を身に着けていった。最初の頃は認められなかったものの、ゆっくりだが自分の母親やきょうだいたちの異常性に向き合い始め、現在は距離を置いている。
義実家と同じマンションで暮らし始めてしまった行田さんは、義母や義きょうだいからの異常なほど執拗な宗教勧誘を避けるため、何度も引っ越しを繰り返した。だがその度に居場所を突き止められ、突然訪問された。子どもが2人生まれてからは、「子どものいない信者夫婦に養子に出せ」と迫られ、一度は保育園から連れ去られたこともあった。
自身だけでなく、子どもへの危険を感じた行田さんは、34歳の時に夫に離婚を切り出す。夫は拒んだが、1人につき6万円の養育費を支払うと約束して離婚に応じた。
しかし行田さんは、離婚後も義家族に隠れて元夫と連絡を取り合い、子どもたちと一緒に過ごす時間をもうけるよう努めた。
そして離婚から4年後、小学校2年生になった長男が、父親がいないことで同級生からからかわれていた事実を黙っていたことが判明。これがきっかけで2人は再婚を決めた。
社会人になってから食事付きの寮生活をしていた夫は、手元に1〜2万円ほど残し、残りの給料をすべて義母に送っていたという。おそらくそれが息子として正しいことだと教えられていたのだろう。義母は宗教依存、夫と義母は共依存状態だったのだと想像する。そして依存体質である夫と結婚した行田さんも、夫と一緒にいるうちに夫と共依存関係に陥っていたのだろう。いくらでも夫を見限るタイミングはあったが、それでも不思議なほど別れられなかったのは、共依存関係に陥っていたと考えれば腑に落ちる。
現在の行田さんは、完全に義母や義きょうだいたちを恐れなくなったわけではない。だが、夫が義母や義きょうだいたちと物理的にも精神的にも距離を置いてくれてからは、家族4人で穏やかに暮らすことができている。機能不全家庭で毒親に育てられた夫にとって、原家族の異常さを目の当たりにしながら、少しずつ行田さんとの生活にシフトしていく過程が、時間はかかったが、そのまま解毒につながったのかもしれない。
旦木 瑞穂/ジャーナリスト・グラフィックデザイナー
愛知県出身。アートディレクターなどを経て2015年に独立。グラフィックデザイン、イラスト制作のほか、終活・介護など、家庭問題に関する記事執筆を行う。主な執筆媒体は、プレジデントオンライン『誰も知らない、シングル介護・ダブルケアの世界』『家庭のタブー』、現代ビジネスオンライン『子どもは親の所有物じゃない』、東洋経済オンライン『子育てと介護 ダブルケアの現実』、毎日新聞出版『サンデー毎日「完璧な終活」』、日経ARIA「今から始める『親』のこと」など。著書に『毒母は連鎖する〜子どもを「所有物扱い」する母親たち〜』(光文社)がある。
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