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「なんで私がこんな目に?」無職の弟が離婚し養育費を支払えず…立て替えを頼まれた姉が下した「苦渋の決断」

Finasee / 2024年6月6日 17時0分

「なんで私がこんな目に?」無職の弟が離婚し養育費を支払えず…立て替えを頼まれた姉が下した「苦渋の決断」

Finasee(フィナシー)

<前編のあらすじ>

岡田さん姉弟には、子どものころからそれぞれ夢がありました。姉の美月さんは、英語を使う仕事につくこと、弟の敏行さんはプロ野球選手になることです。

その後、美月さんは外国語大学を卒業後、教員として働くことになりました。一方、敏行さんは試合中のケガが原因で夢を断念することに……。気持ちが切り替えられないまま就職活動を始め、なんとか地元の企業に就職します。

そんな中、夢破れた敏行さんと家族に転機が訪れます。子どもができたことをきっかけに、敏行さんが勤務先の後輩である光さんと結婚することになったのです。予想外の出来事に美月さんも大喜び。

しかし、家族が増えた喜びをかみしめている中、光さんから「どうしよう。敏行さんが帰ってこない……」と驚きの電話がかかってきます。美月さんが光さんを連れて、心当たりのあった場所へ向かいます。

●前編:【“プロ野球選手の夢”に未練を残して就職した元球児…結婚後、妻に衝撃を与えた「身勝手な行動」】

いつまでも夢を追う弟に突き付けられた「離婚宣告」

予想通り、野球部仲間の家にいた敏行さん。妻の光さんに内緒で仕事を辞めたため、なんとなく家に帰りにくかったのだそうです。

辞めた理由は、野球への夢を諦められなかったから。「社会人野球や独立リーグに挑戦しようとトレーニングを続けてきたのに、子どもができたばっかりに、諦めざるを得なかった。思いを心に閉じ込めてきたけれど、子どものために働くのはもうたくさん! これからは自分の人生を生きていきたい」と言い出しました。

敏行さんとしては、そんな自分を理解してついてきてほしいと言ったつもりでしたが、光さんの受け止め方は全く逆。娘の唯ちゃんと3人の生活を大切にしてきた光さんにとって、敏行さんの発言は許しがたいものだったのです。

「そんなに自分が、野球が大切なら、1人で生きていけばいい!」

即座に離婚を決断し、唯ちゃんを連れて実家に帰ってしまいました。

敏行さんからの理不尽なお願いに困惑する美月さん

ほどなくして離婚が成立。晴れて自由の身となった敏行さんに降りかかってきたのは、唯ちゃんの養育費問題でした。

離婚した当時3歳だった唯ちゃんが社会的・経済的に自立するまで、生活費の他に学費や医療費などを父親として負担する義務があります。2024年4月に施行された改正ADR法では、養育費問題の和解内容に基づく強制執行が可能になったことで給料の差し押さえなどができるようになっています。

ただ、現在無職の敏行さんには養育費は払えません。差し押さえできる資産もありません。年金生活の両親も養育費を負担できず、頼れるのは姉の美月さんだけ。

「離婚のきっかけを作ったのは姉ちゃんでしょ? 次の仕事が決まるまで、養育費、立て替えてもらえないかな?」

あまりにも身勝手な弟の言い分に腹が立った美月さんでしたが、かわいい姪の唯ちゃんのためなら仕方ない。教師という仕事柄、学費が払えず高校を辞めざるを得なかった生徒も見てきました。

「なんで私がこんな目に?」

まったくもって理不尽なお願いでしたが、渋々受け入れることにしました。

養育費の負担が心配に…美月さんが下した苦渋の決断とは?

お給料から毎月10万円を養育費として敏行さんに託していた美月さん。このまま払い続けて大丈夫かと不安になっていました。

当初は毎月実家に養育費を受け取りに来ていた敏行さんでしたが、いつしか実家に顔を見せることなく、自宅のポストに入れておいてほしいと要求し始めました。美月さんの残業が重なり期日までに届けられなかったときには、督促のメールが届く始末。再就職してもなお自分で支払う気は一切ないようです。美月さんが養育費を負担し続けている状況を「当たり前」と捉えている敏行さんに、腹立たしさを覚えます。

また、現在8歳の唯ちゃんが大学を卒業するまであと14年。月10万円で考えると1680万円ものお金を負担することが、おひとりさまである自身の老後にどう影響するのかも気になりました。

実際に美月さんのご希望にそって老後に必要な金額を試算すると、退職時点で3000万円程度の資産が必要です。敏行さんや姪の唯さんをいくら援助しても、自分は助けてもらえない可能性を考えると、これまで通り養育費を負担するより老後資金を早めに準備することが美月さんには必要だと分かりました。

しばらくして美月さんから、養育費の支援をやめたと連絡がありました。親としての責任感が全くない弟だけでなく、「養育費をいくら立て替えても、あなたは他人。老後の面倒なんて知ったことじゃない。唯には絶対させません! 必要なら、あなたが自分で子どもを産めばいいでしょ!」と言い放った光さんにも憤りを感じました。

「こっちは家族だと思って大切にしてきたのに。老後の面倒を見てもらおうだなんて、考えてなかったのに……」

敏行さんに代わって養育費を援助してきたことに対し、誰も感謝しないことが空しくなり、今後一切援助をしないと決めたそうです。

おひとりさまで子どもがいない方は、時間とお金の余裕を家族に注ぎがちです。そしてそれは、感謝されることなく当たり前のように受け止められます。甘えは本人のためになりません。現実としっかり向き合うことを促すのも、家族の愛情ではないでしょうか。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。

辻本 由香/つじもとFP事務所代表・一般社団法人WINK理事

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、相続手続カウンセラー、50代からのくらし(医・職・住)と資産を守るファイナンシャルプランナー。おひとりさま・おふたりさま×特有の課題・お金の問題の事例などが得意分野。企業の会計や大手金融機関での営業を経て、2015年に、保険や金融商品を販売しないFP事務所を開業。個別相談の他、企業・病院・大学などでの講演も行っている。

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