「住んでもいないのに…」相続した実家の税金に悩む男性…売却できず“八方ふさがり”の状況に陥ったワケ
Finasee / 2024年6月20日 17時0分
Finasee(フィナシー)
望月亮さん(仮名)は羽田空港の保守管理を行う会社のエンジニアです。航空会社に勤務するご家族と、空港近くの自宅マンションに暮らしています。
望月さんご自身は山梨県の出身で、親の死後に相続した実家を持て余していました。そんな時、実家の隣に住んでいた幼なじみの男性から、「上物はそのままでいいから、売ってくれないか」と打診されました。望月さんにとっては渡りに舟のありがたい申し出です。
しかし、望月さんには気になることが1つありました。お父様が亡くなる前に、実家の土地が何代前かの先祖の名義のままになっていると聞かされていたからです。この4月から相続登記が義務化されたこともあり、幼なじみの提案は面倒ごとを一気に片付けるチャンスかもしれないと早速登記を調べたところ、名義人はなんと望月さんの曾祖父(そうそふ)でした。
望月さんとお父様は一人息子ですが、祖父は7人きょうだいで、連絡を取る必要のある相続人候補は相当数になりそうです。とても自分の手には負えないと司法書士法人の利用も考えましたが、その時にふと思い出したのが、地元の役所に勤務する妻の弟が話していた「スーパー司法書士」のことでした。そして数カ月後、望月さんは無事に相続登記を終え、実家の売却を果たします。
そこに至るまでの経緯と、スーパー司法書士のスーパーなサポートぶりを望月さんが話してくれました。
〈望月亮さんプロフィール〉
東京都在住
49歳
男性
航空保守管理会社勤務
妻と娘の3人暮らし
金融資産1500万円
ちょうど1年ほど前の夏のことでした。郷里の実家の隣に住んでいた幼なじみから何十年ぶりかに連絡をもらい、勤務先に近い新橋の居酒屋で一杯やることになりました。
子供時代のやんちゃ話などで盛り上がり、これからも定期的に会おうと約束した後、幼なじみが切り出したのが私の実家の話題でした。
「亮ちゃんの家、おやじさんが亡くなってからもうすぐ3年になるよね。ずっと空き家のままだろう? 良かったら、俺に売ってくれないか?」
幼なじみが実家の買い取りを希望幼なじみは都内で器や箸などを扱う雑貨店を経営していて、自身も陶芸家なのだそうです。隣家の裏山を利用した登り窯の造成を考えているらしく、同時に家も本格的な陶芸施設に建て替え、販売や見学、陶芸体験もできるようにしたいという計画を話してくれました。ただ、ショップや駐車場などを確保するには広さが足りず、空き家になっている私の実家を買い取ることを思いついたようでした。
それは私にとっても渡りに舟の提案でした。
父が亡くなった後は、私宛てに実家の固定資産税の請求書が届くようになっていました。自宅マンションに比べれば大した額ではないのですが、このまま住んでもいないのに実家の税金を払い続けなければならないのかと思うと気が重くなりました。
それだけではありません。火事の原因になったり鳥獣のすみかになったりすると集落の人に迷惑がかかりますから、父が亡くなった後も何度か実家の様子を見に帰りました。コロナ明けで仕事が立て込み、なかなか休みも取れない中でそれだけのために帰郷するのは結構な負担です。妻はNPO(非営利団体)法人などの空き家管理サービスの利用を勧めますが、空き家とはいえ、見ず知らずの人に勝手に家に出入りされるのは抵抗がありました。
一方で国の放置空き家対策は年々厳しくなっており、昭和中期の建築で人が住まなくなった実家は正直、いつ「特定空き家」やその手前の「管理不全空き家」に指定されて行政指導を受けてもおかしくないように思えました。
幼なじみは「上物は壊さなくていい」「点検も必要だろうから引き渡しは1年後くらいで構わない」と言い、ビジネスなので私が良ければ地元の不動産会社を通して適正価格で取引したいと打診してきました。それは、私にとっても願ったりかなったりでした。ただ、いざ売却するとなると不安もありました。実家の登記の問題です。
望月さんが八方ふさがりの状況に陥ったワケ生前の父から、実家の土地が何代か前の直系尊属の名義のままであることは聞かされていました。父の代で名義を変更することも考え、知り合いの司法書士にも相談していましたが、その頃から体調を崩すことが増え、そのままになっていたようです。
私自身、父の相続の際には手を着ける気になれず、実家の処分が決まったらその時に登記もすればいいやとのんびり構えていました。ところが今年4月からは過去に相続した不動産の登記も義務化され、2027年の3月末までには名義変更を済ませないと10万円の過料が科されてしまう可能性が出てきたのです。
幼なじみの申し出は、実家を特定空き家にしなくて済み、かつ、父の代からの積年の課題を解消するいいチャンスになるかもと思いました。
しかし、いざ取りかかろうとすると、確かにそれは難題でした。登記簿を確認したところ、実家の土地は私が遺影でしか顔を見たことのない曾祖父の名義になっていました。私から数えて3代前ということになります。
昔は子供の数が多かったので、祖父のきょうだいだけで6人はいたはずです。父と私は一人息子ですが、それでも曾祖父の相続人たり得る人は両手では済まないだろうと思いました。
もう自力では八方ふさがりの状況で、これはプロに頼るしかないと、大手の司法書士法人に依頼することを考えました。しかし、何社かのウェブサイトなどをチェックしていた際に、ふと、役所に勤務する妻の弟が話していた「スーパー司法書士」のことを思い出したのです。
役所の司法書士相談で相続や資産承継、不動産の売買・贈与などに関する厄介な相談を親身になって解決し、本来は相手を選べない相談に指名が入る若手の司法書士さんがいるという話でした。
その人なら実家の登記の問題も何とかしてくれるかもしれない。弟に頼み込んで、そのスーパー司法書士を紹介してもらいました。それが中村さんとの出会いでした。
●会ってみると“意外と普通の人”に見えた中村さん。ところがヒアリングが始まってすぐに「スーパー司法書士」と呼ばれる理由が判明! 後編【「連絡先が不明な人も」空き家放置で“21人の相続人”爆誕。どうしても売却したい男性が迎えた結末は…】で詳説します。
※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。
森田 聡子/金融ライター/編集者
日経ホーム出版社、日経BP社にて『日経おとなのOFF』編集長、『日経マネー』副編集長、『日経ビジネス』副編集長などを歴任。2019年に独立後は雑誌やウェブサイトなどで、幅広い年代層のマネー初心者に、投資・税金・保険などの話をやさしく、分かりやすく伝えることをモットーに活動している。
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