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「連絡先が不明な人も」空き家放置で“21人の相続人”爆誕。どうしても売却したい男性が迎えた結末は…

Finasee / 2024年6月20日 17時0分

「連絡先が不明な人も」空き家放置で“21人の相続人”爆誕。どうしても売却したい男性が迎えた結末は…

Finasee(フィナシー)

<前編のあらすじ>

望月亮さん(仮名)は羽田空港の保守管理を行う会社のエンジニアです。空港近くのマンションに家族で暮らしています。

望月さんの実家は山梨県にあり、親の死後、相続した実家を持て余していました。そんな時、実家の隣に住む幼なじみの男性から、「上物はそのままでいいから、売ってくれないか」と打診されます。望月さんにとっては渡りに舟のありがたい申し出でした。

ただ、望月さんには実家について気になっていることがありました。それは、父親が亡くなる前に、実家の土地が何代前かの先祖の名義のままになっていると聞かされていたことです。結局、売却に向けて動くも手続きが難航してしまい、自力では八方ふさがりの状況に。そんな時に思い出したのが、「スーパー司法書士」のことでした。

●前編:【「住んでもいないのに…」相続した実家の税金に悩む男性…売却できず“八方ふさがり”の状況に陥ったワケ】

実家の登記を阻む問題

少子高齢化を背景に、日本の空き家は増える一方のようです。4月末には、全国の空き家の総数が900万を超えたという報道もありました。

私の山梨県内の実家も、3年前に父が亡くなってから空き家になっています。やむなく管理をしていますが、父の三回忌も終えてそろそろ空き家バンクにでも登録し、売却や再利用の道を探ってみようかと考えていました。

そんな時、隣に住んでいた幼なじみから、実家を売ってくれないかと持ち掛けられました。都内で雑貨店を経営し、自身も陶芸家である幼なじみは郷里の裏山に登り窯を造り、家を本格的な陶芸施設に建て替えて観光スポットにもしたいというプランを立てていたのです。

上物はそのままでいい、引き渡しも1年後くらいでという私にとっては大変ありがたい申し出でした。すぐにでも応じたい気持ちでしたが、ネックになったのが実家の登記の問題です。父の存命中に、実家の土地は何代か前の直系尊属の名義になっていると聞かされていました。売却する前に名義を変更する必要があります。

ちょうど今年の4月からは3年以内の相続登記が義務化されていて、実家も2027年3月末までに名義変更をしておかないと過料を科される可能性があります。いずれにせよ登記をしなければならないなら、今回はいいチャンスかもしれないと重い腰を上げました。

しかし、実際に登記簿を確認すると、土地の名義人は私の3代前の曾祖父(そうそふ)で、相続人の有資格者は10人以上に上りそうでした。とても私の手に負えるものではありません。

最初は、それなりの費用がかかっても大手の司法書士法人に依頼しようと考えました。しかし、そんな時に思い出したのが以前、役所に勤めている妻の弟から聞いた「スーパー司法書士」の中村さんのことでした。

若くてフットワークは抜群、親身になって相談に乗ってくれる。そのせいか本来指名は不可の相談に「中村さんにお願いしたい」というリクエストが殺到するくらいの人気だとか。この人ならと、弟に頼み込んで中村さんを紹介してもらいました。

「スーパー司法書士」と呼ばれる理由

30代前半の中村さんは、父親の経営する司法書士事務所で主に新規の顧客を担当している2代目でした。名刺交換の際は、失礼ながら意外に普通の人だなという印象を持ちました。中肉中背で取り立てて特徴のない容貌が、スーパー司法書士というネーミングとミスマッチだと感じたのです。

しかし、ヒアリングが始まるとすぐに「スーパー」の意味が分かった気がしました。私が用意した書類や資料を瞬く間に確認し、それに対して的を射た指摘や質問を繰り出してきたからです。その後の手際の良さにも驚かされました。

3週間後に事務所を訪れた際には、曾祖父から始まる家系図が用意されていました。わが家の戸籍を集めて作成したのだそうです。「相続のお手伝いをさせていただく時によく使うんですよ」と事もなさげでしたが、相続人の名前や連絡先まで一覧表にしてありました。

存命の相続人は21人。中には連絡先が空欄の人もいました。「どうしても難しかったら提携先の調査会社を使いますが、なるべく私が調べてみます」とのことでした。

相続人探しと並行して連絡先の判明している相続人と連絡を取り、実家を私名義に変更することに同意を得ていくという話でした。実家の家屋は未登記だったため、そちらも合わせて代々の遺産分割協議書を作成し、登記に向けた準備を進めることになりました。

とはいえ、本当に大変なのはそれからでした。中村さんの司法書士ネットワークを通じた地道な調査で幸いにも相続人全員の連絡先は判明したのですが、中には相続人から代償を求められたり、相続人が認知症で成年後見人とのやり取りを余儀なくされ話し合いが難航したりするケースもありました。

私自身、いくらスーパー司法書士とは言え、これはきついだろうと思いました。しかし、中村さんはそれから数カ月で相続人全員の了承を取り付け、実家の土地と家屋の名義変更の手続きまで済ませてくれたのです。

中村さんの司法書士としての“社会貢献”

聞けば、相続登記の義務化を背景に私のような依頼が増え、同様の案件を数件、同時進行で進めていたとのことでした。それを全く感じさせないプロフェッショナルな仕事ぶりに頭が下がりました。

謝礼も、思わず「これで利益が出るんですか」と尋ねてしまったほど良心的な額でした。事務所で資料や書類の控えなどを戻してもらった際、中村さんはこんなふうに話してくれました。

「空き家や所有者不明土地の問題が深刻化する中で、国が相続登記の義務化に踏み切ったのは、今これをやっておかないと将来大変なことになるという危機感の表れだと思います。幸い、相続登記は私たちが資格や経験を通して皆さんのお役に立てる分野です。ご依頼主のご事情に寄り添いながら1件ごとに丁寧な対応を心掛け、所有者不明土地を少しでも減らせるように社会に貢献していかなければならない。今、私たちにはそうした覚悟が求められているんです」

なるほど、意識の高さからしてスーパーなんだなと腹落ちした次第です。

何度かやり取りをする中で中村さんが日本酒好きで酒器のコレクターだと知ったので、幼なじみの陶芸施設が完成した暁には、ぜひ中村さんを誘って訪ねてみたいと考えています。中村さんが骨を折って登記をしてくれた空き家が、立派に生まれ変わって世の中の役に立っている様子をぜひとも見てもらいたいのです。

※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。

森田 聡子/金融ライター/編集者

日経ホーム出版社、日経BP社にて『日経おとなのOFF』編集長、『日経マネー』副編集長、『日経ビジネス』副編集長などを歴任。2019年に独立後は雑誌やウェブサイトなどで、幅広い年代層のマネー初心者に、投資・税金・保険などの話をやさしく、分かりやすく伝えることをモットーに活動している。

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