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「オルカンに投資しておけば大丈夫」はホント? “オルカン一択”でいくのなら知っておきたい「リスク」とは…

Finasee / 2024年5月30日 16時0分

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Finasee(フィナシー)

かつて大人気だったファンドといえば「グロソブ(グローバル・ソブリン・オープン)」。そして今や「オルカン(eMAXIS Slim全世界株式 オール・カントリー)」。両者の共通点をご存じですか。

それは両ファンドとも、国際投信投資顧問という今はなき運用会社の血が、脈々と流れていることです。国際投信投資顧問は2015年7月に、三菱UFJ投信と合併し、その後、現在の三菱UFJアセットマネジメントになりました。つまり両ファンドにとって、根は同じということになります。

そして、この両ファンドとも国内で設定・運用されている投資信託において、純資産残高がトップとなりました。

ちなみに「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」は世界の優良な債券(ソブリン債)に分散投資するファンドで、2008年8月には5兆7685億円という純資産残高を記録しています。

これまで単体のファンドでここまで純資産残高を増やしたケースはありません。今はオルカンが一大ブームですが、それでも純資産総額は3兆4398億円(5月22日現在)です。

さて、そのオール・カントリーですが、人気の理由は運用コストが極めて低いことと、全世界の株式に一括投資できるという分かりやすさがあるからでしょう。

“オルカン”は多くの人に高い利便性をもたらしているが…

その人気ぶりのせいか、最近は「オルカン一択で本当にいいの?」といった論調の記事が出てくるようになりました。

株式投資には興味がない。あるいは仕事などが忙しくて、自分で銘柄選択をする時間がない。とはいえ多少、株式も自分の資産に組み入れておきたい。そんな人にとって、オルカンは非常に高い利便性をもたらしてくれます。世界中のメジャーな株式に分散投資してくれますから、いちいち自分で個別銘柄を調べて投資するという手間が省けますし、世界経済の成長に連動してリターンを享受できます。

ただ、「オルカンに投資しておけば大丈夫」という短絡的な考え方は、しない方が無難でしょう。改めて言うまでもないことですが、オルカンもリスクはあります。

確かに、これまで安定的にリターンを上げてきたのは事実です。2024年4月30日までのリターンを見ても、過去1年で40.0%の値上がりですし、運用がスタートした2018年10月からを見ても、144.7%の値上がり率を実現しています。この数字だけを見れば、「オルカンに投資しておけば大丈夫」という気にもなるでしょう。

でも、オルカンだって大きく値下がりすることはあるという点は、留意しておくべきでしょう。過去の基準価額をたどっていくと、2020年2月20日に1万2216円まで値上がりしたオルカンの基準価額は、同年3月19日にかけて8320円まで値下がりしています。わずか1カ月で31.9%の下落率です。

もちろん、この時は「コロナショック」という、まれに見る株価急落局面だったので、そうしょっちゅう起こるようなことではありませんが、もしオルカン一択で運用するならば、時々、この程度の値下がりをかぶるリスクがあることは、理解しておく必要があります。

そのうえでのオルカン一択であるならば、それはそれで良いと思います。

インデックスファンドへの投資は“ベター”だが、“ベスト”の選択肢は他にある…?

それともう1点、留意していただきたいのは、インデックスファンドによる運用は、リターンを獲得するという点においては「ベター」な選択肢ですが、決して「ベスト」ではない、ということです。

よく「アクティブファンドはインデックスファンドに勝てない」と言われますが、決してそのようなことはありません。インデックスファンドを上回るリターンを実現しているアクティブファンドは、確かに存在しています。

いささか古いデータで恐縮ですが、2024年3月末時点のデータを使って、日経平均株価を上回るリターンを実現している日本株アクティブファンドが何本あるのかを集計したことがあります。その時は、過去1年の騰落率で33本、過去3年の騰落率で57本、過去5年の騰落率で77本、過去10年の騰落率で29本という結果でした。過去10年騰落率で日経平均株価を上回るアクティブファンドの本数が急減しているのは、それだけ長期で運用されているアクティブファンドが少ないことの証とも言えるでしょう。

これらの数字からも分かるように、確かにインデックスファンドのリターンを上回るアクティブファンドは、存在しているのです。

ただ、その事実があるにも関わらず、「インデックスファンドでよし」とされるのは、当たり外れが非常に少ないからです。インデックスファンドのリターンを上回るアクティブファンドは存在するものの、アクティブファンドのリターンの差は、同じ資産クラスに投資するものだとしても、かなりの差があります。

たとえば運用期間5年の騰落率で比較すると、日本株アクティブファンドで最も高いリターンを上げたのは、明治安田アセットマネジメントが設定・運用する「明治安田セレクト日本株式ファンド」の19.1%(年率換算)ですが、仮に日経平均株価を上回るリターンを上げているものでも、低いファンドだと年12.8%のリターンなので、両者の間には6%強の差が生じています。

その点、インデックスファンドはたとえ運用会社が違ったとしても、同じ指数への連動を目標にしたものであれば、アクティブファンドほどの大きな差は生じません。

プロでも選定は難しいが…「良いアクティブファンド」の条件は?

また同時に、インデックスファンドのリターンを恒常的に上回るアクティブファンドを、一個人が選べるのか、という問題があります。そして結論を言えば、これが実は大変に難しいのです。

なぜなら、良いアクティブファンドを選ぶために開示されている情報が非常に限られていますし、仮にそれらの情報が与えられていたとしても、総合的な観点から、良いアクティブファンドがどれかを判断するのは、プロでも非常に難しいからです。

アクティブファンドが良いリターンを上げ続けるためには、良い銘柄を選ぶアナリスト、高い判断能力を有するファンドマネジャー、最良の条件で売買発注を行うトレーダーといった運用体制の優秀さに加え、常に資金流入超にできるだけの販売力、それを支える運用会社のブランド力、さらにはブランド力を強める運用哲学などがそろわなければなりません。

そして、それらが本当にそろっている運用会社なのか、そのうえで実際の運用成績はどうなのか、といった点を総合的にチェックして、良いアクティブファンドかどうかを判断できるのかというと、これはなかなかハードルが高いと言わざるを得ないでしょう。

だからこそ、個人が投資信託をベースにしてポートフォリオを組むに際しては、たとえばリスク資産のうち70%をインデックスファンドで、残り30%をアクティブファンドで運用して超過リターンを目指す、といった使い方が推奨されるのです。

ちなみに、良いアクティブファンドを厳密に選ぶのはかなり難しいことですが、それでもアクティブファンドに投資したいという場合は、運用方針に共感できるかどうかという点を重視するのが良いでしょう。多くのアクティブファンドは、そこをしっかり打ち出しています。

そのうえで毎年、運用成績をチェックし、ベンチマークである指数を下回った時には、解約、他ファンドへの乗り換えも含めて検討するのが良いでしょう。

鈴木 雅光/金融ジャーナリスト

有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。

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