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マンガー亡き後のバークシャー・ハサウェイ株主総会で「遺言にどんな言葉を残す?」と聞かれたバフェットの回答は…

Finasee / 2024年6月4日 18時0分

マンガー亡き後のバークシャー・ハサウェイ株主総会で「遺言にどんな言葉を残す?」と聞かれたバフェットの回答は…

Finasee(フィナシー)

今年も、ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイ株主総会に参加するため、米国ネブラスカ州オマハに行ってきました。2014年以来9回目(別に2回はコロナ禍のためオンライン総会)の現地参加です。

バフェットがいうように、オマハの空気を吸い、オマハの水を飲み、世界中から来た株主と語り合うこと、そしてなによりバフェットに会い、バフェットの言葉を直接聞くことは得難い体験です。今回は、長年の盟友だったチャーリー・マンガーが昨年11月に99歳で亡くなった後の総会――93歳のバフェットが何を語るか、大変楽しみにしていました。株主に語り掛ける言葉の数々には、投資のことだけでなく、よい人生を送るにはどうしたらいいかということについて、たくさんの示唆に富む発言がありました。そのいくつかを紹介しましょう。

株主総会会場(筆者撮影)(プロジェクションスクリーンに映る)壇上のバフェット(筆者撮影) 1.「株価を毎日見ている人はもうからない」お金をつくるためのマインドセット

思わずニヤッとしてしまうのですが、バフェットはこう続けます。「株価を忘れている人が長い間にお金をつくっている。マインドセットが重要なのだ」この言葉は大変示唆に富みます。

「株価を買うのではない、会社、ビジネスを買うのだ」と日頃、バフェットが言っていることにつながるのです。

2.個人投資家が株式投資で高いパフォーマンスを上げる方法

バフェットは、100万ドル以下の投資金額であれば、年率50%の利回りを上げる自信があるといっています。我々にとって、投資額は十分にその金額の範囲内ですので、どうしたらその利回りを上げられるかは非常に関心あるところです。

バフェットはこういいます。「私は20,000ページのムーディーズ・マニュアル(現在は廃刊、個別企業情報の紹介)を1ページ、1ページ丹念に読んだ。そしていい銘柄を見つけた」いまでも、バフェットは執務室に閉じこもり、たくさんの会社のアニュアルレポートなどを読んで、銘柄探しに勤しんでいます。その中で見つけたのが、日本の商社株です。ムーディーズ・マニュアルに相当する日本の出版物は「会社四季報」でしょう。いまとなっては、バークシャーの投資資金は2,000億ドルにものぼり、買いもままならない状況ですが、どんな銘柄でも買える我々にとっては、貴重なアドバイスでしょう。

3.消費者行動の見極めも大事な投資尺度

バフェットは、「消費者行動」(コンシューマー・ビヘイビア)を見極めることが非常に大事だと言っています。そしてバフェットは、自分の投資行動の誤りもざっくばらんに語ってくれます。

「1960年代に投資したボルティモアの家具チェーンを買ったときは、消費者行動を見誤った。シーズキャンディを買って大変な成功をおさめたのは、消費者行動を正しく見極めたからだ。そして、こうした観察の積み重ねがつながったのが、アップルへの投資だった。学者がいう『個人が新しい知覚表象や概念を理解するのに用いるこれまでの経験のすべて』を使って、クリスタライズしたのだ。アップルを見て、その中身はよくわからないが、iPhoneのすごさ(筆者注:ユーザー・ロイヤリティの高さなど)を感じたのが、投資につながった」

株式投資では、数値指標も大事ですが、こういったソフト面の見極めも非常に大事なことをバフェットは教えてくれます。

さて、バークシャーの株主総会に来る人達は、なにも株式投資で成功する方法を知るためだけに来ているわけではありません。

実は、もっと深いところで、よい人生を送るためにはどうしたらいいか、人間としてどうしたら世の中の役に立てるか、というような人間の“本源”に関わることを、バフェットから知りたいと思って来ている人の方が多いのです。そのような質問に答えるバフェットの言葉を紹介しましょう。

4.人間がいくつになっても複利効果を発揮し続けるのに必要なこと

バフェットはこういいます。

「幸運が来た時にそれを逃さないことだ。また失敗しても、それを乗り越え、進み続けることだ」

バフェットは30兆円の投資資金を抱え、周りからまだ買わないのかとプレッシャーを感じながらも、じっとチャンスが来るのを待っています。辛抱強く、待ち続けているのです。バフェットは我慢(Patience)が肝心といっています。そして自身がいうように、たくさんの失敗をしていますが、それを引きずらずに、むしろそれを糧にして、進み続けているのです。こういう取り組み方は、大いに私たちの気持ちの持ちよう、人生の生き方につながってくるといえるでしょう。

5.充実した人生を送るためには、よき“ヒーロー”を見つけること

この質問に絡んで、バフェットがいったことはこうです。

「よきヒーローを見つけろ。自分にとってのヒーローは、その人が成し遂げたことを見てのヒーローではない。自身がこうなりたいと願う人物だ。そしてその人をまねればよいスタートを切れる。それはお金のことを言っているのではなく、よい人生を送ることだ。できるだけ早く、自分がやりたいことを見つけ、それを続けること。すぐ見つかることもあれば、見つからないこともある。ただ、見つけ続けよう。そして、誰でもできることで心がけるべきことがある。それは人に親切にすること。そうすれば世界はもっと良くなる」

このような言葉を聞いていると、先が開けてくるようで、すがすがしくなってきます。

6.バフェットならば、遺言にどのような言葉を残すか

「自分の長い人生は、行うべき義務を果たし、よい人生だった。それは、人間としてあるべき正しい姿勢とサービス(社会への奉仕)だった。したがって、私は、皆が資産を優先せず、社会への義務を果たすことを優先するよう、ここに倫理的遺言を残す」

このようにマンガーの遺言が紹介されたのち、バフェットだったら遺言でどのような言葉を残すかと問われ、こう答えました。

「あなたの人生においてあなたが幸運であったならば、他のたくさんの人が幸せになるように努めなさい」

またバフェットは、株主からの質問とは別に、あるエピソードを紹介しました。

7.多額の遺産を大学に寄付した夫人のエピソードを紹介しながら伝えた「幸せな人生の秘訣」

そのエピソードとは…

ニューヨーク、ブロンクス(ニューヨークでもっとも収入が少ない地域)にある医学大学。学生のほぼ半数は卒業時に平均20万ドルもの借金を抱えるこの大学の学費が、今年の夏から完全にフリー(無料)になった。

その資金の出どころは、夫が長く保有し、大幅に上昇したバークシャー株の遺産10億ドル(約1570億円)を残された夫人が寄付したことから。この額ならば、永久に学費はフリーにできるとのこと。アメリカでは、このような寄付をすると、その人の名前を冠することが多いのだが、大学名が「アルバート・アインシュタイン」という名前であることから、夫人は辞退した。

というもの。バフェットは寄付した夫人を総会に招き、会場の株主に紹介しました。そして、こういいました。

「バークシャーの株主は全米に広がり、バークシャーの株価の上昇で、5億ドル、10億ドルと大きな資産を築くが、そのお金を使わずに(Deferred Consumption)、匿名で地域やコミュニティに寄付をする人が非常に多い。そういう人たちは、とても幸せな人生を送っている」

大変心に響く言葉です。

そして来年もバフェットの株主総会に行くのが楽しみです。

尾藤 峰男/びとうファイナンシャルサービス 代表取締役

日興証券にて、21年間証券業務に携わった後、2000年7月 びとうファイナンシャルサービス株式会社設立、現在に至る。金融機関から完全に独立した資産運用アドバイザー(RIA〈公認投資助言者〉)として、お客様から助言料をいただくだけ(フィー・オンリー)で、ライフプランニング、個人の金融資産や退職金の資産運用アドバイスを行っている。CFP認定者、1級FP技能士のほか、グローバル資格のCFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会認定証券アナリストの資格を持つ。米国株投資、グローバルな投資理論や国際分散投資に精通し、またバフェット・ウォッチャーとしても知られる。日本経済新聞、日経ヴェリタス、日経マネー、東洋経済などへ執筆・コメント多数。テレビ東京、日経CNBCなどに数多く出演。著書に「いまこそ始めよう 外国株投資入門」(日経BPマーケティング)、「バフェットの非常識な株主総会」(ビジネス社)。

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