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「この先不安しかない」年金25万円に不労所得30万円…万全の備えで老後を迎えた夫婦を襲った大誤算

Finasee / 2024年6月26日 11時0分

「この先不安しかない」年金25万円に不労所得30万円…万全の備えで老後を迎えた夫婦を襲った大誤算

Finasee(フィナシー)

来年古希を迎える山口誠さん(仮名)。現役時代は輸入食品を扱う専門商社の経理マンでした。仕事でお金を扱うため自身の資産形成への関心も高く、老後資金は時間をかけてしっかり準備してきたそうです。

65歳までは勤務先の継続雇用制度を利用して働き、完全リタイアした時点で退職金を含めた貯蓄は2500万円を超えていました。世帯の年金収入は個人年金保険も合わせて手取り25万円、さらに、実家を立て替えたアパートからの家賃収入も30万円(経費を除く実質収入は15万円)あり、老後の生活は左うちわのはずでした。

しかし、そんな山口さんを古希目前になって予想外のアクシデントが襲います。「悠々自適どころか、今年に入って初めて虎の子の預貯金に手をつけた。アパートのローンもまだ10年以上残っていて、この先不安しかない」と嘆く山口さんに、とんでもない誤算について話を聞きました。

〈山口誠さんプロフィール〉

東京都在住
69歳
男性
年金受給者
妻と次女、孫娘の4人暮らし
金融資産2700万円

***
 

昭和から令和にかけ30余年に渡った会社員生活の大半は経理部でした。そのせいか、「石橋を叩いて壊す」ような慎重かつ堅実な性格と言われます。

少子高齢化による日本の公的年金制度の不安は今に始まった話でなく、何十年も前から指摘されてきたことです。私たち夫婦は現役時代から家計管理を徹底し、当初は専業主婦だった妻も近所にできたドラッグストアで働いて収入を増やすなど、老後に向けてできる限りの準備を進めてきました。私の勤務先は中小企業だったので退職金も人並み以下でしたし、企業年金もありません。

それでも、65歳で完全リタイアした時点で貯蓄は2500万円を超えていました。娘2人を私立大学まで行かせたことを思えば、まずまずの合格点ではないかと自負しています。

大学の都心回帰で状況が一変

今、世帯の年金額は終身の個人年金保険も合わせて手取り25万円ほどです。さらに、わが家には家賃収入もあります。千葉県内の私の実家を、両親亡き後にワンルームのアパートにして賃貸経営を行っているのです。同じ広さの居室が1階と2階合わせて6室あり、満室なら30万円の家賃収入が得られます。

不動産は実物資産でよほどのことがない限り無価値になることはありませんし、株式などと比べると値動きも穏やかですから、堅物の私たちに向いた投資だと思いました。

私も妻も特段金のかかる趣味があるわけでもなく、普段の食事は一汁一菜で十分という性分ですから、地道に暮らしていれば、年に1度くらいは妻を海外旅行に連れていってやれると考えていました。

そうした老後の計画に狂いが生じたのは、私が定年を迎え、継続雇用で働いている頃でした。実家のあるエリアは文教地区として知られ、大学のキャンパスが幾つかありました。そこで学生を対象にしたワンルームの賃貸アパート経営を考えたわけですが、この頃から大学の都心回帰が始まり、複数のキャンパスの移転が相次いだのです。

私が完全リタイアした頃にはキャンパス移転の影響が出始め、アパートに空室がぼちぼち出るようになりました。アパート経営を始めた頃と比べると、周辺にはワンルームマンションも増えています。私のアパートは築15年超ですから、こぎれいで快適なワンルームマンションと比べると、どうしても見劣りがしてしまいます。

管理をお願いしている不動産会社の助言で家賃や礼金を見直したりしましたが、効果は限定的で、今は2室が空室になっています。ローンや固定資産税、管理代などを支払うと、手元には1カ月当たり数万円しか残りません。

正直、これは誤算でした。しかも、移転の流れは止まらず、昨年には有名私大が都心にキャンパスを移転することを発表しました。私のアパートはこのキャンパスから近い地域にあり、現在の入居者のうち2人もここの学生です。このキャンパスが移転してしまうと、アパートの経営状況はさらに悪化すること必至です。一方で、近年の不動産市場の値上がりを受けて固定資産税は毎年着実に上がっています。

不労所得が減ってしまうのに加え、アパートを建てる際に借り入れたローンの返済がまだ10年以上残っていて、将来にわたって返済していけるのかどうか不安しかありません。一時は手放すことも検討したものの、アパートの評価額がローン残高を下回っていて、売却を決断するには至りませんでした。

大学の移転によるアパートの経営状況の悪化も想定外でしたが、わが家の老後計画の誤算はそれだけでは収まりませんでした。2年ほど前からはもう1つ、ある意味、アパート経営よりもインパクトの大きな誤算が生じています。結婚して家を出ていた下の娘が、就学前の幼子を連れて戻ってきたのです。

●山口さん夫婦に、次々と起こる老後のライフプランの誤算。次女が出戻ってきてからの夫婦の生活はどうなるのでしょうか? 後編【「ずっと実家に居座るから」年金で暮らす老夫婦の“安心老後”を狂わせた無職の娘の「衝撃発言」】で詳説します。

※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。

森田 聡子/金融ライター/編集者

日経ホーム出版社、日経BP社にて『日経おとなのOFF』編集長、『日経マネー』副編集長、『日経ビジネス』副編集長などを歴任。2019年に独立後は雑誌やウェブサイトなどで、幅広い年代層のマネー初心者に、投資・税金・保険などの話をやさしく、分かりやすく伝えることをモットーに活動している。

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