山崎製パンの株価が2倍に急伸 原料高でも最高益を達成できた理由
Finasee / 2024年6月6日 11時0分
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Finasee(フィナシー)
山崎製パンの株価は2023年に大きく上昇しています。年間騰落率は100%に達し、1年間で2倍に値上がりしました。これは決算を好感したものだとみられます。第1四半期から利益の進捗がよく、中間と第3四半期では上方修正も行いました。
足元の株価は、2024年2月の高値(4133円)から押される展開となっています。
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原材料やエネルギー価格などの高騰から、パンの製造コストは増加傾向にあります。このような環境で、なぜ山崎製パンは好業績を残せたのでしょうか。2023年度の決算を確認してみましょう。また今期の見通しも紹介します。
製パン国内首位 「ロイヤルブレッド」など人気商品多数まずは山崎製パンの概要を押さえましょう。
山崎製パンはパンの製造と販売を手掛ける企業です。主力製品は食パンの「ロイヤルブレッド」や「ダブルソフト」、菓子パンの「ランチパック」や「薄皮シリーズ」などです。製パン業界で国内首位のシェアを持っており、売り上げは同業他社を圧倒しています。
【主な製パン企業の売上高(2022年度)】
・山崎製パン:1兆0770億円
・フジパングループ本社:2882億円
・敷島製パン:1617億円
・第一屋製パン:244億円
出所:各社の決算短信および会社概要
山崎製パンは食品事業のほか、「デイリーヤマザキ」や「スーパーヤマザキ」などの流通事業も手掛けています。その他の事業として、物流事業や食品製造設備の設計、損害保険代理業なども行っています。ただし、業績の大半は食品事業が占めています。
【セグメント業績(2023年12月期)】
売上高 営業利益 食品事業 1兆0021億円 223億円 流通事業 617億円 -31億円 その他事業 132億円 24億円出所:山崎製パン 決算短信
連結子会社には不二家やサンデリカ、ヤマザキビスケットのほか「キャラメルコーン」の東ハトなどがあります。また持分法適用会社にB-Rサーティワンアイスクリームも持っています。
6期ぶり最高益、値上げが奏功 子会社も押し上げ冒頭の通り、山崎製パン株式は2023年から上昇傾向にあります。きっかけとみられる2023年度の業績を確認しましょう。
山崎製パンの2023年度は大幅な増益でした。営業利益は1.9倍、純利益は2.4倍に増加しています。営業利益、純利益はともに過去最高とみられます。最高益の更新は2017年度以来6期ぶりです。
【前期の業績(2023年12月期)】
・売上高:1兆1756億円(+9.2%)
・営業益:420億円(+90.5%)
・経常益:455億円(+74.2%)
・純利益:302億円(+143.9%)
※()は前期比
出所:山崎製パン 決算短信
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増益は値上げが奏功しているとみられます。
山崎製パンは近年、主力製品の価格を引き上げています。2022年からの値上げの回数は、食パン部門で3回、菓子パン部門で4回に上ります。これらとは別に、2023年1月~2月には「薄皮シリーズ」の内容量の減少(5個→4個)や「ランチパック」の値上げも実施しました。
【山崎製パンの主な価格改定】
食パン 菓子パン 食事パン 2022年1月 9.0% 6.8% ― 2022年7月 8.7% 4.3% ― 2023年7月 7.6% 6.8% ― 2024年7月 ― 7.2% 7.2%※パーセンテージは値上げ対象製品群の平均価格改定率
出所:山崎製パン IRニュース
輸入小麦粉の政府売渡価格の引き上げやエネルギー価格の上昇などから、パンの製造コストは増加傾向にあります。山崎製パンは増加したコストを販売価格へ転嫁することで収益の改善を目指しました。値上げ後も販売は好調で、食品事業の各部門はいずれも売上高を伸ばしています。
【食品事業の各部門の売上高(2023年12月期)】
・食パン:1086億円(+8.2%)
・菓子パン:4334億円(+14.0%)
・和菓子:738億円(+4.2%)
・洋菓子:1519億円(+4.8%)
・調理パン・米飯類:1732億円(+7.5%)
・製菓・米菓・その他商品類:1732億円(+7.5%)
※()は前期比
出所:山崎製パン 決算短信
これらの取り組みから、山崎製パンの売上高は前期比で986億円増加し、売上原価の増加分(631億円)を吸収しています。また2021年度に461億円かかっていた広告宣伝費は173億円に減少しており、大幅な営業増益につながりました。
営業利益の増加はグループ会社も貢献しています。不二家を除き、主要子会社の多くが増益となっています。営業利益の増加額は、山崎製パン単体で155億円、子会社群で44億円です。
今期1~3月も好進捗 上方修正はある?山崎製パンは今期(2024年12月期)も増収増益を見込んでいます。特に営業利益と経常利益は2ケタ増益の計画です。販管費の増加を予想していますが、増収とデイリーヤマザキ事業の赤字縮小で吸収を目指します。また主要子会社も前期と同水準の増益を見込みます。
【今期の業績見通し(2024年12月期)】
・売上高:1兆2230億円(+4.0%)
・営業益:480億円(+14.4%)
・経常益:510億円(+12.0%)
・純利益:315億円(+4.4%)
※()は前期比
※同第1四半期における同社の予想
出所:山崎製パン 決算短信
第1四半期までの決算は公表されています。売上高はほぼ計画通りです。一方、各段階利益の進捗は高水準です。このペースが続くと、2023年度と同じく業績を上方修正する可能性があります。
【第1四半期までの進捗率(2024年12月期)】
通期予想 第1四半期実績 進捗率 売上高 1兆2230億円 3067億円 25.1% 営業益 480億円 165億円 34.4% 経常益 510億円 174億円 34.1% 純利益 315億円 109億円 34.6%出所:山崎製パン 決算短信
上場企業は業績予想に一定以上の変動が認められる場合、予想を修正する義務があります。原則として、売上高は±10%、営業利益から純利益までは±30%の変動がある場合に新しい見通しの開示が必要です(出所:日本取引所グループ 業績予想の修正、予想値と決算値との差異等)。
山崎製パンは、今期第1四半期までのペースが続いた場合、通期では営業利益から純利益のいずれも計画に対し30%以上上振れすることになります。第1四半期決算では、第2四半期について「堅調なスタート」ともコメントしていますが、中間および通期の見通しは据え置きました。
業績予想の修正は期末に近づくほど増加する傾向にあります。山崎製パンの2023年度の上方修正は、第2四半期と第3四半期の決算公表時に行われました。
ただし、上方修正を公表しても市場の期待に届かない場合、株価は下落する可能性があります。コンセンサス情報(アナリストなど市場参加者の業績予想を集計したもの)なども確認しておきたいところです。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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