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「兄弟に隠れてこっそりと…」不公平な遺言書に不満な男性が“掟破りの行動”で支払った「痛すぎる代償」

Finasee / 2024年6月19日 11時0分

「兄弟に隠れてこっそりと…」不公平な遺言書に不満な男性が“掟破りの行動”で支払った「痛すぎる代償」

Finasee(フィナシー)

<前編のあらすじ>

良樹さんは進学を機に上京し、地元には2人の兄弟(直樹さんと正樹さん)と年老いた父親、隆さんがいた。家族仲は良好で長期休みには必ず帰省をしていた。

隆さんが亡くなった年。5月のGWに3人兄弟で集まり実家の掃除をしていた。良樹さんが仏壇の整理をしていたところ、棚の奥から謎の封筒を発見する。

好奇心から封筒を開けて中身を見てしまった良樹さん。封筒に入っていたのはなんと隆さんの遺言書だった。内容を読んで納得できなかった良樹さんは、兄弟に隠れてこっそりと遺言書をゴミ袋に捨てる。しかし、その事件は翌日に発覚してしまった。

●前編:【「今ならバレない」父親の遺した“謎の封筒”を開封…中を見た息子が起こした「あり得ない事件」

良樹さんは相続権を失う

「残念ですが良樹さんには相続権がありません、財産を1円たりとも相続させることはできません」

私は3兄弟に向かって事実を告げる。

良樹さんのように遺言書を捨てる行為は「遺言書の破棄」に当たるからだ。遺言書を破棄する行為は相続欠落の要件となる。相続欠落とは、いわば相続人となる権利を失うことで相続人にはなれないわけだ。つまり、隆さんの相続人は直樹さんと正樹さんの2名になり、良樹さんは財産を相続できないことになる。

ただ、良樹さんも一枚岩ではない。直樹さんと正樹さんがこれまで生前受けた多額の支援と相続の内容とでは公平さに欠けると熱弁する。

だが、それとこれとは話が別だ。直樹さんや正樹さんが受けてきた支援は特別受益に該当する。特別受益とは各相続人が亡くなった方から生前に受けてきた支援などが該当する。まさに良樹さん以外の兄弟が受けてきた支援はこの特別受益に該当するのだ。

特別受益があるからと相続欠落に該当する遺言書の破棄が許されるわけではない。私は遺言執行者として直樹さんと正樹さんを相続人として遺言書の内容を実現させていった。

良樹さんが取るべきだった行動は?

さて、良樹さんは遺言書を見つけた時にどう行動すべきだったのだろうか。良樹さんはどうすれば兄弟たちの特別受益の存在を踏まえ、公平に遺産を相続することができたのだろうか。

答えは簡単である。特別受益の存在と遺留分を主張するのである。たしかに遺産相続は原則として遺言書に記載されている内容で行われる。

しかし、相続分には遺留分という遺言書によっても奪えない最低限の相続分がある。遺留分とは最低限の相続分のことだ。遺留分は亡くなった子が相続人となる場合は子全体で2分の1、そこに各相続人の法定相続分(法律で定められた相続分)をかけて算出される。

今回の事例でいえば良樹さんは最低でも特別受益を含めた額の6分の1が相続できたわけだ。それが遺言書を隠匿したことで0になった。

6分の1というと小さいと思われるかもしれないが、特別受益の額と今ある財産の額によってはそれなりの額になることもある。そもそもだが遺言書を破棄しなければ今ある財産を兄弟で均等に分けることになるため良樹さんも一定の財産を得られた。

なお、相続権とは別問題とはなるが2点補足する。遺言書は私文書だ。それを破棄することは刑法上の罪、「私用文書毀棄罪」に該当する可能性がある。同罪は5年以下の懲役となる罪が科される可能性のある刑法上の犯罪行為だ。また、検認(家庭裁判所にて遺言の確認を受ける作業)を受ける前に遺言書を開封すると、10万円以下の過料を科される可能性もあるため注意されたい。

いずれにせよ良樹さんのとるべき行動は遺言書を隠したり捨てるのではなかったということだ。

遺言書の内容は1人で見るべきではない

良樹さんの行動から我々が知ることができるのは「遺言書の内容は1人で見るべきではない」ということだ。

もし良樹さんが兄弟全員そろった場で内容を確認できていればこうはならなかっただろう。遺言書を隠したり捨てたりせず、その内容を不満に思いながらも受け入れていたら、一定の財産は得られたはずだ。

遺言書は予期しないタイミングで見つけてしまうと、気になって開けたくなることもあるかもしれない。それも1人で見つけたとあればなおさらだ。しかし、そうなった時こそ一呼吸おいて思い出して欲しい。一時の気持ちに身を任せての行動は自身を相続欠落の状態に追い込み、身を滅ぼすことがあるということを。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。
※登場人物はすべて仮名です。

柘植 輝/行政書士・FP

行政書士とFPをメインに企業の経営改善など幅広く活動を行う。得意分野は相続や契約といった民亊法務関連。20歳で行政書士に合格し、若干30代の若さながら10年以上のキャリアがあり、若い感性と十分な経験からくるアドバイスは多方面から支持を集めている。

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